【続編③】クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……
タイトルの通り「クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊りを要求してきました……」の続編になります。アフターストーリー的なものです。
☆★☆後書きにお知らせがありますので、必ずお読みいただきたく思います。よろしくお願い致します!
頭空っぽにして楽にぼけーっと読んで頂けるとありがたいです。
芹葉先輩行きつけのおでん屋さんで飲み始めて1時間ちょっと。
日本酒で華麗なスタートダッシュを決めた芹葉先輩は……、
「……おいしぃ……えへへ♪」
まだ呂律はギリギリで回っているものの、既に出来上がりつつあった。
空になったお猪口を置いて若干焦点の合っていないボンヤリとした瞳で俺を見つめてから、ニコニコと嬉しそうに微笑んでいた。……何これ可愛すぎかよ。よっぱらい芹葉先輩を酒の肴にして飲むのも充分ありな気がする。
なんて8割本気2割冗談のおふざけ思考を隅に置いて、そのあまりの可愛さに少しイジワルをしたくなってしまった。
言い訳をすると芹葉先輩のオススメで初めから日本酒を飲んでしまい、俺もいくらか酔っているのだ。
「はい。静岡風おでん初めて食べましたけど、すごく美味しいですね。味の染み込んだ黒はんぺんに、ほろほろの大根、それにぶりっぶりの弾力と出汁の旨味をストレートに感じることができるこんにゃく! 今日で虜になりました!」
この場合芹葉先輩が「おいしい」と言ったのは飲み干した日本酒の事だろうが、あえて“おでん”として同意した。
よっぱらい芹葉先輩はもしかしたら気が付かない恐れもあるくらい、非常に分かりにくいイジワルである。
――ちなみに今食べている静岡風おでんというのはつゆが真っ黒なことで有名らしい。
カウンター越しに初めて見た時は、どれだけ煮込んでるんですか女将さん!? と思わずツッコミを入れそうになったほどだ。
色のイメージからしてかなり濃い味付けのように見えるが、タネとしても入っている牛すじなどから出汁をとっており意外とあっさりしている。例えるならば、見た目は盛りに盛った派手系ギャルだが、その中身は大和撫子のようなおしとやかな令嬢という感じだ。……うん。全然上手く例えられてないな。
具材はひとつひとつ竹串に刺さっているので飲みながらでも食べやすく、からしをつけたり、青のりをかけたり、だし粉をかけたりして味を変えて楽しむこともできるとても奥深いおでんだった。……恐るべし静岡風おでん。
「……おでん? うん! おいしぃ~! ももちゃんのおでん……んくっ、んくっ……ぷはぁーっ! おいしっ!」
一瞬疑問に思ったようだが、見ているだけでこちらが幸せな気分になってしまう満開の笑みを浮かべて、またしてもお猪口を空にしていく芹葉先輩。
どうやら俺の些細で分かりにくいイジワルはあと一歩のところで気が付いてもらえなかった……って芹葉先輩、今の飲み干したタイミングから考えても、それおでんじゃなくてやっぱり日本酒の感想ですよね!?
ふむふむ……大体予想通りの展開である。悔しくなんてないんだか……くそぉぉぉぉ! やっぱり悔しい!
勝手に仕掛けておいて反応してもらえないこの惨めさ。
完全に俺の自爆なのだが、やっぱり可愛い仕種をしてくれる芹葉先輩がどうしても見たくなり、再度イジワルを決行した。
その内容は……、
「芹葉さん……はい……あーん」竹串に刺さった玉子を芹葉先輩に差し出す俺
トリオ芸人の地球上で最速の2歩行の鳥倶楽部がやる伝統芸能のひとつ――アツアツおでん――である。
……といっても実際は気持ち冷ましたおでんなのだが。
仮に、もしこんなことで芹葉先輩に火傷でもさせたら俺は罪悪感で死ねると思うので、細心の注意を払って可愛い仕種を引き出そうと考えた苦肉の策だった。
またもこんな中途半端なイジワルで芹葉先輩は反応してくれるのか?
期待に胸を躍らせながら芹葉先輩の出方を窺う。
「……あ、あーんっ!」
よし、芹葉先輩が食いついた! ……や、やるぞ! 覚悟を決めろ俺!
口をまんまるにしてこんな顔→(^O^* )をしながら、気恥ずかしそうにはにかむ芹葉先輩。
この後どんなことが起こるか知る由もないその無邪気な反応に既に罪悪感が芽を出していたが、心を鬼にして不退転の決意で“アツアツおでん”を決行した。
狙いは芹葉先輩の潤いを纏った大人の色香を漂わせる形の良い唇だ。
目標をセンターに入れてスイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ。……脳内ではこんなフレーズが繰り返し流れていた。
そして――、
「……う、うわ、手が滑ったー」(棒読み)
かなり芝居がかった動作で狙い通り芹葉先輩の唇に、つゆがよく染み込んだ玉子をソフトタッチすることに成功した。
……計画通り。
気を抜けば悪人面が出てしまいそうになるほど、我ながらうまく事を運べたと内心でほくそ笑んでいたら、
「――あっついぃぃッ!?」
芹葉先輩が期待通りの可愛い仕種をしてくれた。
驚きと熱さのダブルパンチで涙目になりながら、目を大きく見開いて俺のことを威嚇するように「 」と猫のように小さい声で唸っていた。
……もはや言葉など必要ない。
まず反応が可愛い!
次に叫び声が可愛い!
最後に猫とか最高かよ!
圧倒的なまでの可愛さに一瞬昇天しかけたが、何とか魂を呼び戻して即座に冷えたおしぼりを芹葉先輩の唇に当てた。
「抱きしめていいですか?」(大丈夫ですか?)
そして昇天しかけた影響なのか、程よく酔っぱらっているせいなのか、つい本音が零れてしまった。
何言ってんだよ俺ぇぇぇ……。アホかよ!
「――だめっ!」
怒ったように眉をハの字にしてジト目でぷくーっとほっぺたを膨らます芹葉先輩。
怒られているはずなのにむしろ可愛い反応をしてくれるとは……芹葉先輩はもはや天女。ありがとうございます!
なんとことは口が裂けても言えないので即座に謝ったのだが、
「……すみませんでし――」
「――わたしがするの!」
俺の言葉を遮った芹葉先輩が突如俺に抱き着いてきた。
もう一度言おう。
芹葉先輩がほっぺたぷくーっ状態で突如俺に甘えるように抱き着いてきたのである。
「…………」
もうね……このまま死神に命を刈り取られても「我が生涯に一片の悔い無し!」と叫びながら、拳を振り上げて絶命できるレベルで満足だった。
……いや、やっぱり嘘! 今死んだら未練たらたらでおでん屋さんの地縛霊になりかねないまである!
とにかく俺には効果的で致命的で反則的なカウンターが放たれたのである。
「ん? ……ぎゅーっ!」
意識が現世とあの世を行ったり来たりしていたため、終始無言になっていたら更なる追撃が芹葉先輩から放たれた。
俺が黙っていることをどう捉えたのか分からないが、一度ちょこんと首を傾げてから今度は心配したような不安げな表情を湛えて、更に強くぎゅっと抱きしめてきた。
――もうやめて! とっくに俺のライフはゼロよ! このままじゃ来世分のライフまで消費されて異世界転生した瞬間に寿命で死んじゃうよ!
……そんなどうでもいいことに思考を割いて、なされるがままでフリーズした。
「…………」
「……? あきひろくん! あきひろくん!」目を爛々とさせた芹葉先輩
その瞬間、俺は思い出した。
爛々とした瞳の芹葉先輩が巻き起こす恐怖を。
俺にとっては屈辱……でも何でもないご褒美であることを。
――進撃の芹葉――。
脳内でナレーションを当てながらあきらめの境地に達した俺は「……は、はい。すみませんでした」力無く答えた。
ここまで芹葉先輩にイジワルを仕掛けたんだから、最後まで仕掛けた側としての責任を取るべきだ。まさに毒を食らわば皿まで、である。……いや、自業自得か。
「……よしよし。元気…… 」
おかしい。なぜ俺が元気付けられているのか?
芹葉先輩は片手を俺の背中に回したまま、もう一方の手で優しく慈しむように頭を撫でてきた。……しかもそれだけではなく、耳元でそっと囁かれてあまりの気持ち良さにぞくりとしてしまった。
……もうわざとやったと自供しよう。
毒を食らわば皿まで? そんな知るか! こんな天衣無縫な芹葉先輩を見てたら罪悪感が半端ないんだよ! 完璧に俺の自業自得だよ!
「芹葉さん。……さっきのおでんを唇につけたのは……可愛い反応をしてくれる芹葉さんが見たくてわざとやりました。誠に申し訳ありませんでした……どうすればお許しいただけますでしょうか?」
俺にできるのは真摯に、誠心誠意謝罪することだけだった。
未だに抱きしめてくれていた芹葉先輩を一度離してから頭を下げたところで、妙に妖艶な声音の言葉が聞こえてきた。
「――キス」
――そして俺は酔っぱらった先輩にガッチリと顔を掴まれ、唇を塞がれたのだった……。
――END――
~お知らせ~
Q1 ファッ!? ここからやんけ!? ENDってどういうことやねん!?
A1 “短編”はここで一旦完結にします! 毎回投稿するのにあらすじ、タグ、年齢設定などが非常に手間で……。
Q2 一旦ってどういうことやねん!? 激熱おでん顔面にぶちまけんぞ!?
A2 連載形式として書き直しを行い、いちから投稿致しますので許してちょんまげ!
Q3 あ゛ぁ゛ん!? それなら最初から連載で書けばよかったじゃねぇか!? おぉん!?
A3 予想外の反響をいただきましたのと……後は(ニッコリ)
ということで!
連載形式として一先ず10万字程度を目標に書くつもりです。
これから色々練り直しを致しますので、連載スタートがいつかは明言できませんが、のんびりとお待ちいただければと思います。
また皆様にふたりのいちゃラブなほのぼのライフをお送りできるよう頑張ります\(^o^)/
お読みいただいてありがとうございました!
ポイント・ブクマ等頂けると発狂いたします!\(^o^)/