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創世のレクイエム  作者: 魔法少女ミクエル
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煉獄の大広間

ふっと目が覚める。

ここ…どこだっけ。

…そうだった。昨日…。

忌々しい校長の言葉が頭の中を過ぎる。

『エリート魔術師育成プロジェクト』だっけ。

それのために用意された建物で暮らすんだったなぁ。

正直言うと、家よりもこっちのほうが居心地はよかったりする。

暴走魔術というもののせいで、幼い頃から化け物扱いされ隔離されてきた。

親の顔を見なくてすむのはこっちのしては助かるんだが…

不意に、

『コンコン』

とドアをノックする音が聞こえてきた。

今は決して、友達を信用していいときではない。

「誰だ」

「メアだけど」

「えっメア?」

メアとは、俺、エレンの恋人に当たる存在。

幼い頃、唯一1人だけ俺に興味を持ってくれた人。

メアなら…とドアを開ける。

「エレン!大丈夫!?怪我とかない、よね?」

「ああ、俺なら大丈夫だ。メアは?」

「わたしもへーきっ」

一気に安堵感が襲ってくる。

ギューッとしてくるメアの腕に、ふと目が行った。

これは…切り傷?

「メア、この傷どうしたの?」

「あ、ああ、これね!ちょっと………擦りむいちゃって。」

この時期にそれを言われても説得力はないが…。

「腕、貸して。治してあげる。」

「ありがと。さっすがだわ」

俺の手から青い炎が出る。

そしてその灯火が消えた頃には、メアの傷も跡形もなくなっていた。

俺の得意呪文は回復だ。

回復だけでなく全般行けるのだが…

過去にその魔法回路が暴走しだして体中に蒼い文字が浮かび上がる、という出来事があった。

その日を境に大型攻撃呪文は使わないようにしてきた。

まあ、もうこの状況でそんなことも言ってられないし、ある程度魔法も制御できるからな。

このことはメアにも言っていない、俺だけが知っていること。

「ねえ、この状況、どうするの?」

「部屋にこもってればどうにかなるだろ」

「えっ聞いてないの?」

「…なにが」

「最低でも人を1人殺さなきゃいけないんだよ?」

「な…」

人を…殺さなければいけない…?

そんな馬鹿げたこと、俺に出来るわけが無い!

もう、俺は…誰も殺したくはないんだよ…あの感覚を思い出したくねぇ!!!

「だからこもってるわけにはいかないんだよ…」

そん、な…

二人の間に沈黙ができる。

そしてその沈黙を破るかのように、ドアを叩く音がした。

それは叩き割るのかと思うくらいに大きな音だった。

「…メア。隠れてろ。」

そして俺は叩いている相手へそろそろと向かっていく。

「誰だ…」

ぽつりと呟くと、明るい声でこう帰ってきた。

「俺だよ!ヴィーノ!」

ヴィーノ…!

ヴィーノは俺の親友で、1番理解してくれている。

なにも考えずに俺はドアを開けた。が。

前に立っていたのはヴィーノではなく、学級一問題児扱い晴れているハントだった。

「お、前…」

そしてその手には真っ赤な…紅蓮に染まった炎が燃え盛っていた。

「わりいな」

そういって手を振りかざす。

メアを巻き込む訳にはいかないと廊下に出る。

そして即座にマジックバリアを貼り、魔法で大剣を作成する。

技術は俺の方が上だがメアのことを気付かれないように戦闘するとなると厄介だ。

すると突然後ろからメアの声がした。

「エレン!後ろ!」

後ろを振り向くと、剣をこちらに向けて走ってくる男・キースがいた。

やばい!反応が間に合わない…きゅっと目を瞑る。

しかし、何秒たってもなにも起きなかった。

恐る恐る目を開けると、前方にはハントが。後方にはキースが倒れていた。

そして視線の先には、二人に向けた手を震わせながら涙目になっているメアがいた。

これ…メアが…

「ごっごめんっ!!エレンを助けるため…だったの」

「いや、ありがとう。もう、この場では人を殺すのに理由はいらなくなっている。メアは正当な判断をしただけだ」

「エレン…」

そしてそのまま勢いで二人とも部屋を出る。

大広間にいくと、信じられない光景が広がっていた。

無残に倒れている人たち。

辺りには赤黒い液体がここまでかというくらいに広がっていて、カーペットのようになっている。

中には手や足…そして首がない人もいる。

「ね、ねえ…こ、これ…」

「もう、こんなに醜い争いが起こっていたのか…。」

この状況を例えるならそう。

戦争よりも酷い、アニメの中の世界だった。

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