始まりの魔術
「えー、我ら黎明学園はこの学園の中で優秀な魔術生徒を見出すため…」
壇上に立って眼鏡をかけた校長が少し間を置いて、言った。
「お前たち同士で、競い合ってもらいたい」
皆は唖然とした。
それはなぜか。
黎明学園はこの国の中でもエリート校。
生徒は日頃から劣等の印を押されまいと争っているからだ。
まさにそれは戦場と言っても過言ではないことである。
その事を知っている上で校長がそんなことを言い出したものだから、生徒は当たり前をわざわざ集会を開いてまで言うう必要があるのかと唖然としているのである。
それを察した校長が続ける。
「競い合うと言っても、単なる1位や最下位を決めるのではない。」
そしてさっきよりも真剣な表情で、こう告げた。
「皆には、命懸けで、参加してもらいたいのだ。俗に言う、『殺し合い』と言ったところだろうか。」
辺りがざわめく。
いつもは教師の一声で、水を切ったかのように静まる場が今は一向に収まる様子がない。
「ただし、礼儀やこの学園のルールには従うことが必須条件だ。」
学園のルール…たしか
一。目上のものに無礼をしてはいけない。
二。魔術を使用する以外の、他人に危害を加えることはしない。
三。絶対に禁忌を犯してはならない。
だった気がする。
当たり前すぎて気にはしていなかったが。
そこで1人の男子生徒が壇上に無断で押しかけに行った。
「そんなこと言われても無理に決まってるじゃないですか!!!校長だって突然殺し合えって言われたらどうするんですか!?」
「発言をするときは手を挙げて。と、言いましたよね。」
「今はそんなの気にしてる場合じゃな…」
ぷつり、と男子生徒の持論が、途中で止まった。
いや、正確には話せなくなった、の間違いだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
女子は悲鳴をただひたすらに上げ、男子は言葉をのんだ。
壇上には横に倒れている男子生徒。
さきほどまでとは反対に、混乱している中で、1人だけ静まりかえっている。
そう、男子生徒は殺されたのだ。
校長の魔法の手によって。
「このように、学園のルールを破った奴には、それ相応の処置が施される。覚悟しておくんだな。」
そして壇上から降りようとする校長。
ふと、その足が止まる。
「言い忘れていた。殺し合いは明日からだ。今日のうちに人を殺めた奴は自分に返ってくるから気をつけること。…うーん、殺し合いの名前はどうしようかなぁ。」
3秒間ほどの間を取って、以前から考えていたかのように言葉を放った。
『エリート魔術師育成プロジェクト』