無意味
「おい、洗、馬!聞いてるかー?
ここ、ここ、答えは?」
口角をこれでもかと引き上げた
胸糞の悪い笑み。数学教師は
俺によく問題を投げつける。
これも僅かながら、真央を擁護する
俺への嫌がらせなのだろう。ただ......
「x=3、Y=2です。でも先生、因数分解はまだ習っていないはずですよ」
「ぐ……予習とは……関心だ」
そう言った嫌がらせがあると分かっていて
隙を見せるほど俺は馬鹿ではない。
まだ中2の半ばとはいえ、
数年先までの予習は終わらせてある。
人一倍の勉強をした自覚がある。
特に俺を目の敵にするこの城太郎が
受け持つ数学に関しては相当な自信がある。
木刀の憂さ晴らしはずっと続けていた。
不思議と、いつからか剣術や柔術の映像を
見ると、その動きの多くが簡単に再現できる
様になってからは特にのめり込んだ。
ただ、実戦の経験だけはどうにもならない。
とはいえ、補う手がない訳ではない。
最近ではこうして目を閉じれば見える……
「想定は真剣での死合い……利き腕は左......」
いつからか、脳でイメージした敵の姿が
目前に像を結ぶ様になった。
ボディメカニクスの応用に長けた近代剣術から
多くの実績や伝説を残す古流剣術、
完全なる実戦向けである極真空手。
流派も問わず、武術の資料を読み漁り、
記憶し、それを敵に想定した訓練を積んだ
いつもの様に鍛錬を終えて大きく息を吐く。
日に日に強くなる実感はあった。
ただ、所詮これは俺の憂さ晴らしでしかない。