絶望
ずっと部屋に閉じこもって……
私、何してるんだろう……
いつも、そんなことを考えて、
でも、何も変わらない日々
変わらない部屋を過ごしていました。
「これじゃ……
本当に人間じゃないみたいね……」
自嘲気味に口にした言葉が、妙に胸に痛みます。
「未だ目立った動きを見せない魔王ですが、
その被害と思われる異常気象、
体の一部が変化してしまう魔物化の被害は
世界各地に見られ.....関係性が懸念される
テロ行為が……」
「なんで?私は……
ここから出ても無いのに!?」
私が外にいても、閉じこもっても、
そんなことはみんなにとって
何の関係もないことだったのです。
【ガチャン】
玄関のドアの音に時計を見ました。
カーテンで光を遮っていたから
気づくのが遅れたけど、
それはお父さんの定時での帰宅時間でした。
私にとって数少ない味方、
その1人がお父さんなのです。
私は急いで玄関に向かいます。
話したい。助けてほしい。
さっきのニュースの事件の相談もしたい。
「父さん!?今日は早いね!
あのね、今テレビで……?」
そこまで言いかけて、私は言葉を切りました。
玄関に立つお父さんの顔色が
あまりに暗かったから。
「父さん?何かあったの?」
先に、そんな言葉が口をついていました。
「真央、すまん……父さんな、
会社をクビになった」
そう言ったお父さんは、私の目を
見てくれませんでした。だから、私は
一番嫌な予感を聞いてしまいました。
「……お父さん、それって……私のせい?」
「…………少し、母さんと話してくる……」
小さく丸まったお父さんの背中を見送り、
私はそこに、何の声もかけることが
出来ませんでした。
「なんで!?どうしろって言うのよ!!
......あぁああああああああ!!」
一切口を開かなかった父さんと、
声をあげて泣き噦るお母さん。
それはどちらも私の知らない両親の姿で……
(まるで悪い夢の様。
あの日から全て変わってしまったみたい……)
優しく声をかけてくれた近所の人たちは
私の目を見ずひそひそと何かを話し、
いつも遊びに来てくれた友達の
誰もが連絡を避ける様になりました。
初めて見た背を丸めたお父さんの姿も、
大声で涙を流すお母さんも、
全部、全部、全部私が知らないもの。
友達でなく、近所の人たちじゃない……
全くの別ものにしか思えません。
ただ、彼だけは変わりませんでした。
「真央、ここにいちゃダメだ!!」
彼は、セバスちゃんだけはこんな私を
本気で心配してくれました。
(嬉しかった……
本当は今すぐにでも手を取りたかった……)
でも、それは彼を巻き込む事で、
私には外へ出る覚悟も、彼を巻き込む覚悟も
まるで足りませんでした。
「ごめん……セバスちゃん……
私、外が怖いの……」
ドア越しにそう応えた私に、
セバスちゃんは言いました。
「俺がいるよ」
嬉しかった......はずなのに、
それを拒絶する為に、私は、
言ってはいけない事を口にしてしまいました。
「……セバスちゃんは人間だから……
私の気持ちは……分からないよ」
セバスちゃんはそれから
私の家には来ていません。
「なんで、あんな事言っちゃったんだろう……」
彼に酷いことなんて言いたくなかったのに、
なぜ、そんな事を言ってしまったのでしょう。
ただ、思うのです。
この羽が生えて、みんなが
変わってしまった様に、多分、きっと.....
(私も……変わっちゃたんだ……)
「どこから間違えたんだ……
子どもを産んだことか?それとも伴侶か……」
「なんて事言うのよ!
隣に真央がいるのよ!?」
お父さん達の喧嘩は
毎日の様に聞こえるようになりました。
「っ…………」
私はただ布団を被って音を殺すのです。
音を殺して、息を殺して、
何も聞こえないフリをして過ごします。
(もう、来てくれないよね……
セバスちゃんごめんね。ごめんなさい……)
いつか、そう遠くないいつか私はお父さん達にも捨てられると思います。
捨てられて、ただの買い物さえ人の目を
引いてしまう私は生きる術もなくなるでしょう。
そう分かっていても、
出来ることは分からなくて、
死ぬ勇気も湧かなくて、
ただ涙が頬を伝うだけでした。
「セバスちゃん……元気かなぁ」
ただ、いつも夢に見るのです。彼の出てくる夢を
「会いたいな……すっごく」
会って、謝りたい。そして、その手を握りたい......