八つ当たり
この場所が好きだ。
都市化が進む街でありながら、区内には
大きな山と、そこから連なる森が広がる。
ここには昔、真央と、お互いの家族でキャンプにも来たことがある。
木々をかき分けた先の小高い丘。
そこからの景色を真央と見た事は
今も鮮明に思い出せる。
迫る様な星空の輝きと、
見下ろした都市灯が共に瞬く絶景。
どうして忘れられるものか。
今は閉鎖されたキャンプ場でしかないこの裏山。
それも、今の俺には都合の良い事だった。
ここには人がいない。
真央の悪口が聞こえてくる事もない。
そして、あの日から、
それは俺の日課になっていた。
「セイ!ハッ!ヤッ!!」
修学旅行で買った木刀での鍛錬。
いや、鍛錬なんて上等なものではない。
ただの八つ当たりだ。
「…………こんな木刀で、何が守れるんだ?」
汗が冷える頃になると急に、
木刀が重く感じた。
「ふふ、やっぱりセバスちゃんは
それ買っちゃったんだね」
真央が魔物化する数日前のことだ。
修学旅行から帰った俺が持っている
木刀を見て彼女は苦笑した。
「行く前から決めてたんだ」
「修学旅行の目的はそこなんだ......」
俺は木刀を手に意気揚々としていたが、
真央はその様子に、少し、
困らせていた様に思う。
「これで強くなって、真央を守る」
ただ、俺はその勢いで、
真央に、彼女にそう言った。
(そう、誓ったはずだったのに......)
その誓いは今も忘れていない。
ただ、
「なんだよこれ......敵、デカすぎるだろ」
ただの学生に、ただの木刀に、
いったいどうすれば世界から、
彼女を守る力があるのだろうか......
さぁ問題です。
敵は世界。ただの学生。
どう解決しましょうか?
この作品の当初、
私はこの答えからこの作品を作っていきました。
もし解答や、
他の素晴らしい解釈があれば是非見たい( ^ω^ )
というのは個人的な願望です( ^ω^ )
さて、ようやくではありますが、
この世界の全貌が見えてまいりました。
現代日本に近い世界。
ただここには体が一部獣に成りかわる魔物化
その被害者の魔物化被害者がいます。
頭が魔物化して知性を失った者の事件や
感染の風評、様々な憶測によって彼らは
人ならざる者と扱われるに至っています。
これは、そんな迫害された存在のある中に起きる
様々な物語。
今回はそのメインストーリーに当たる
初めの魔物化被害者月影真央と
彼女を愛する男洗馬杉雄のお話です。
次回予告( ͡° ͜ʖ ͡°)
久々に真央の視点です( ^ω^ )
ちょっとグッタリしてますが(*´Д`*)