真央とセバスチャン
彼女はいつも俺の家にやってくる。
振り向くと舞うように浮かぶ黒髪と、
まるで雪みたいな白い肌。
誰かと話すときに必ず微笑む。
そんな優しい仕草とか、
泥まみれになって子供達と遊ぶ気さくな.....
そんな、そんな彼女の事が大好きだ。
いつからか。そんな事は覚えていない。
幼馴染としていつの間にか隣にいた。
彼女の名前を覚えるより前から、
彼女を異性と認識するよりも遥かに前からの恋。
あるいは、彼女を見たことで、
俺は恋を理解したのかもしれない。
彼女は今日も俺の家にいる。
12畳のリビングと言えば広く感じるが
キッチンがあり、大型のテレビ、
親父が一目惚れして買った
背の深い椅子や食卓に囲まれる
そこはそれほどの広いとは感じない。
別に、居心地が悪い訳じゃない。
ただ、自分の部屋がなくて
彼女と2人並んで座るにはお互いの距離が近くて、
俺はいつもドギマギしていた。
「セバスちゃん?どうしたの?」
彼女は、俺のあだ名を呼びながら
小首を傾げながら小首を傾げた。
俺が緊張していることを察したのかもしれない。
(そういうの、ずるいなぁ)
本当に、ずるいと思う。年上のくせに、
彼女は異性の俺と2人きりでいるこの状況に
あんまりにも自然だ。
とは言え、これはいつものこと。
共働きで両親のいない俺の家に
彼女はいつも遊びに来る。
だから、変なのは俺なのだろうか?
いや、そんなわけない。
だって初恋の人が隣にいるのに、
平気な奴なんているわけがない。
彼女の名前は
月影真央
物心ついた時には毎日のように遊ぶ様に
なっていた幼馴染であり、3つ歳上の
お姉さんの様な立ち位置にある。
歳の差が原因か、俺の態度のせいなのかは......
さておき、今はまだ片想いの相手でしかない。
「セバスちゃん?どうしたの?」
彼女のその問いは俺にとって
とんでもない難問だ。見惚れていたなんて
言えるはずもなくて、咄嗟に言う言葉なんて、
ありふれたもの。
「え?あ、なんでもないよ!!
それより今日は何して遊ぼう?」
俺は上擦った声で誤魔化す。
気づいて欲しい気持ちで、でも、
気づかれるのが怖い気持ちで、
また、誤魔化して、先延ばしにする。
真央は、人をよく見ている、と、思う。
ちょっとした隙を見せるとすぐ、
考えを読まれてしまったり、
落ち込んでいるのが伝わってしまう。
(俺のこの気持ちには気づかないのになぁ)
そういう事にだけ鈍感なところも
含めて、俺は真央が好きだ。
多分遅いほうだと思う。小学2年生になって
やってきた初恋。
よく遊ぶのに、彼女の手を握ることも出来ない
我ながら最高にかっこうの悪い恋。
「ふふ、何がいいかな?
セバスちゃんが決めていいよ」
真央が俺に微笑む。それだけで、
ただそれだけで俺の心臓は高鳴るのだけど、
「真央、その呼び方……」
それがいつも気になる。真央は、
俺をセバスちゃんと呼ぶ。
洗馬杉雄でセバスちゃん。
少し情けない呼び名だと思う。
少なくてもかっこう良くはない。
本人が格好いいかとか、そういうのは
別にしてだ。
なぜなら俺は自分が嫌いだ。
この色の抜けたみたいなこの白髪も、
治らないくせ毛も、真央より低い身長も嫌だ。
告白、その勇気もないこの性格も大嫌いだ。
「どうしたの?セバスちゃん?」
「うぅん、なんでもない」
再び小首を傾げる真央にぎこちない笑みを返す。
「じゃあ……ババ抜き……は
昨日したし、ジジ抜き?」
「んー、それもいいけど、
こんないい天気なのに家の中じゃ勿体ないわね。
鬼ごっこはどうかな?」
そうしていつもの会話が繰り返される。
真央からの遊びの提案は外での遊びが多い。
「えー......」
が、それはあまり嬉しくない。
俺は彼女が家に来てくれる事が嬉しいから。
と、言うのもあるけどなにより
「真央は足が速いから捕まえられないもん……」
運動はいつもそうだ。
多分年の差のせい......だと思いたいのだが、
単純な鬼ごっこや駆けっこはいつもそう。
動きにくそうなスカートで駆け回る彼女を
俺が捕まえた事はない。
それが情けないから、一緒に運動はしたくない。
あぁ、そういえばそれも俺の自分が嫌いな所の
一つだった。
「ふふ、セバスちゃんは男の子なんだから
すぐ速くなるよ。きっとすぐに私より
ずーっと速くなる」
あやすような笑みで俺の頭に
手を置くのは彼女の癖で……
少し悔しくて、恥ずかしいけれど、
それでも嬉しいのは
近くで見る彼女の笑顔が
とても落ち着くからで.......
それでも、
それを差し引いても、
あだ名も仕草も、彼女にとって俺が年下で、
弟あつかいのままだからなんだと思うと
......悔しかったりもする。
「そうかな?そうだよね。
早く大きくなりたいなぁ。
大きくなったら俺が真央を守るんだ」
いつか、対等に
......そう、いつか。
「うん、楽しみにしてる。
セバスちゃんは大きくなったら
私の王子様になってくれるんだね」
いつか、俺は彼女を守れるくらい強くなりたい。
それは、子供の頃の恥かしげもない会話。
そう言ってしまえばそれまでかも
知れないけど、俺は本気だった。
ただそれは
それは思いもよらない形で、
思っていたよりずっと早くに、
......現実になるんだ。
告白する前に好きなのバレるのが
ダメって無理ゲじゃね?(๑╹ω╹๑ )
好きなのバレるとさ
あ、ぴーあーるにデート
こじつけてきたとか思われるだろ?
でも、異性とみられてなきゃ告った時
ガチビックリされるべ?てか、
想像もしてなかったのに
付き合う返答とかねぇじゃん?
どっちも微妙?ていうか、考えるほど打算で乙!?
......(๑╹ω╹๑ )うん。
そういうのはかんがえちゃいかんのよ(๑╹ω╹๑ )
(๑╹ω╹๑ )次回予告(๑╹ω╹๑ )
セバスちゃん!!からまわる(´༎ຶོρ༎ຶོ`)