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【結ばれたイト~・小話】 写真~久龍視点~

どうでもいい小話。


『王のヒミツ ファンイベント』にて黒兎の写真が登場した時の会場はものすごかった。

黒兎が登場した時以上の悲鳴が会場を響かせていた。


『キャストのヒミツ教えます!?』というコーナーはファンが知らないであろうキャストの情報を事務所からNGが出ない程度で公表するという事は主催者側から聞かされていた。

事前にどういうものを公表するのかチェックしていた。

その中にあの写真が紛れていたのは俺も知っていた。


「次のキャストのヒミツは……」

写真がスクリーンに映し出されると会場中のあちこちから悲鳴が響いた。

舞台上では黒兎が驚きすぎて椅子から立ち上がっていた。

「ち……ちょっと待って!だれ!?この写真提出したの誰!?」

キャスト陣を見渡す黒兎に聖女役の声優・白百合桃子が勢いよく手が挙げた。

「はーい!私です」

「桃先輩!?」

「ヒナ君がサプライズで出演するってわかった時に社長から渡されました!」

「俺の許可を取ってください!」

「社長とマネージャーさんの許可は取ったわよ!」

ドヤ顔で言い放つ白百合に黒兎は客席にいる俺の方を睨みつけていた。

確かに許可は出した。

というか俺のその権限はない。

社長がOKといえばOKなんだよ。

DVD化しないし、社長がノリノリで送ってきたデータの中にあった1枚だからな。

スタッフからかっこいいから使っていいかと聞かれた時は社長が許可済みだからと了承したが……

まさか本当に使われるとは思わなかった。というのが正直な気持ちだ。

他のキャスト陣の写真の方がインパクト強かったからな。

「イケメンのヒナ君の執事姿!今日イベントに参加できた人はラッキーよ♪」

「確かに……今日のイベントDVD化しないからな」

「クロ君、すっごく似合ってるね」

「執事喫茶に紛れ込んでもばれないんじゃない?」

他のキャスト陣からも次々と感想(?)の声が上がった。

客席からも『似合う~』とか『ご主人様って呼ばれたい~』とかいろいろ声が上がっていた。

「それ以前に、どこから入手したんですか!これプライベート写真ですよ!」

「え~それは教えない」

舞台上で言い争いを始めた黒兎と白百合を抑えたのは司会進行役の草壁衛。

「ちょい待ちクロ。今、プライベート写真と言ったか?」

「え、あ、はい。仕事ではないです」

「どっからどう見てもプロの写真家が取った写真だと思うんだが……プライベートでなぜ執事!?」

話すまでは次に進めないと宣言し、草壁は黒兎を問い詰める。

「あー、先日母校の文化祭に遊びに行ったんです。その日たまたまオフになったから」

「ふむふむ、で?」

「一緒に遊びに行った友人の妹さんの部活がコスプレ写真館をやっていて友人に連れられて……」

「で、ノリノリで写真を撮ったと?」

草壁と黒兎の会話に会場中が耳をダンボにして聞き入っている。

「久しぶりのオフで羽目を外しちゃったんです。友人が『ご主人様』で俺が『執事』のコスプレしました」

「あ、その友人と妹ちゃんとの写真も入手してありますよ」

白百合がにっこり笑顔で懐から数枚写真を取り出し草壁に渡した。

草壁の周りに集まるキャスト陣。

客席からは『見せて~』という声が上がる。

「お?どれどれ?……わお~!クロの友人君もイケメンだな」

「おっ!?妹ちゃんは可憐な美少女じゃないか!」

「日向君、今度紹介してくれない?」

肉食系と言われている女性声優の一人が瞳をキラキラさせるが

「そいつ、恋人居るけどいいの?」

「あ、じゃあいいわ。いい男は売約済みか……」

あっさりと引き下がり、そのやり取りはお客さんの笑いを誘っていた。


キンコン・カンコン・キンコン・カンコーン


タイミングよく(?)コーナー終了の合図が流れた。

「ありゃ、時間切れか。さあ、キャストは席に戻った戻った」

草壁がその場を仕切る。

ちゃっかり写真を懐に隠そうとして黒兎に奪われていた。

「あ、真壁君。あとでその写真以外にもあるから見せてあげるわよ」

「よし!じゃあ、ちゃっちゃか先に進めるか」

「ちょっと待って!本当にどこから入手したの!?」

「それは、ヒ・ミ・ツ♪」

茶化す白百合とほかのキャスト。

黒兎はステージの上でさらにいじられることとなった。



多少(?)のハプニングはあったが、イベントは無事に盛況のうちに終了となった。


イベント終演後、近くのホテルでプチ打ち上げが行われた。

本格的な打ち上げはまた後日に企画しているらしい。


プチ打ち上げ会場にて黒兎は時間を気にしながら話に交じっているようだ。


俺も主催者や他のキャストのマネージャーたちとそれなりに交流を深めていた。


今日の打ち上げはもっぱら黒兎のあの『写真』で盛り上がっている。


「だ~か~ら~、写真は今朝社長から渡されたの!イベントを盛り上げるために使っていいわよって」

先程から黒兎が尋問しているのは例の写真を提出した白百合。

「社長が!?」

驚きを隠しきれていない黒兎。

「久龍さんも社長に確認したんでしょ!?」

白百合が助けを求めるように俺に話を振ってきた。

「写真を見せられた時にすぐに確認を取った。今回はイベント自体DVD化しないから黒兎単体なら問題ないだろうってことだった」

「でも、元データは大地が持っているはずだ。どこから入手したんだ!?」

「甘い!あの社長夫婦が自社タレントを撮影した元データを渡すと思うか!?大地君に了承を得て複製してあったに決まっているだろうが」

何年あの人たちの元でやってきているんだ。

あの人たちがおいそれとお宝を手放すわけないだろうが。

それに、あの人たちの息子は翼ちゃんと仲がいいらしい。

最悪、翼ちゃん経由で大地君からデータを受け取ることも可能だ。


「それよりも、黒兎」

「はい?」

「時間は大丈夫か?七海ちゃんとの約束」

時計を指さすと予定の時間よりも早いが黒兎は慌てて挨拶をして会場を後にした。


「ねえねえ、久龍さん」

黒兎が会場から消えるとなぜか視線が俺に集中している。

「な、なんでしょうか。草壁さん」

なんとなく嫌な予感しかしない。

「クロと一緒に写っていたすっごくかわいい女の子。あれって例の子?」

全員の視線が俺に集中している。

うん、間違いなく集中している。

「例の子とは?」

なんとかとぼけようとしたが、役者相手にウソは通じない。

「クロの片思いの相手。……って久龍さんなら当然知っているよね」

じりじりと周囲を囲まれて逃げ道を塞がれた。

「久龍ちゃん♪」

有無を言わさぬ声で俺の名を呼ぶのは『王のヒミツ』のプロデューサー。

さあ、吐け!と言わんばかりに圧力をかけてくる。


「そ、そうです。皆さんが見た写真の女の子が黒兎が長年片思いをしている子です」

俺は負けた。

すまん、黒兎。

もうしばらく、皆様のオモチャとなることが決まったよ。




翌日。

七海ちゃんからメールが俺の携帯に届いた。

『久龍さん!黒兎が!黒兎がついにやったよ!』

ハイテンションで始まったメールを要約するとついに黒兎が翼ちゃんに告白し、付き合うことになったと事だった。


黒兎の恋愛事情は年明け早々にあっという間に各所に広まり、あちらこちらでガッツポーズをして高笑いをしている者、悔しそうに拳を叩きつけている者が見かけられたとか……



イベント内容は私の想像でお送りしております。

実際はどのように写真使用の許可を得ているのかわかりません。


用意周到な社長様は写真の元データを大地に渡す時に『もしかしたらどこかで出るかもしれないけどいい?』と大地には許可をちゃんと取っています。

大地も『翼の写真を出さないのなら』と文書にして契約を交わしていたりします。

黒兎にもちゃんと(本編で)アルバムを渡した時に話していたのだが、写真に気を取られてスルーしていたという裏話があったりする。


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