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【望んだ者は… 小話】 ~じい様が生きていた頃(今後本編に入らないであろう昔話)~

『望んだ者は……』の小話になります。

『望んだ者は……』のベルナール編を読まれていることを前提に書いてありますのでご注意ください。

「おじいちゃま!おにいちゃま!」

屋敷内の訓練場でじい様に剣の稽古をつけてもらっていた時、外から聞こえてくるのは可愛い妹の声。

重たい扉を体全体を使って開けて入ってくる妹にじい様は苦笑している。

「レティーには術は通用しないな」

「は?」

「お前の訓練が終わるまで誰もここに入れないように扉に術を掛けておいたんだが……レティーは無意識に何だろうが術を無効にしてしまったようだ」

苦笑しながらもどこか誇らしげなじい様。

「レティーはきっとこの国一番の魔術師になるだろうな。ユーリ様のような」

レティーがパタパタと駆け寄ってくるとじい様はしゃがみ込んでレティーを迎えた。

「どうしたんだい?レティー」

「おきゃくちゃまがおみえになったそうです」

「客?」

「ウィルおじちゃま!」

「ウィリアムが?」

首を傾げるじい様にレティーも一緒になって首を傾げている。

その姿がかわいらしくて……ここに魔写具があれば写しているのに~!!

「おじいちゃまとおやくそくしているって」

「約束……?」

うーんと唸るじい様だがすぐに思い出したのか、ぽんと手を叩いた。

「あー!忘れとった!」

「……だと思った」

じい様の言葉に被さるように扉から入ってきた人が呆れたように呟いた。

「あ、ウィルおじちゃま!」

じい様から離れて入ってきた人……ウィリアム様に抱き着くレティー。

「やあ、小さなレディ。今日もかわいいね」

レティーの頭を優しくなでるその人はこの国の宰相閣下。

じい様の親友だという。


俺の剣の稽古はその時をもって終了。

その後、俺とレティーはじい様とウィリアム様とお茶会をすることに……

あれ?

ウィリアム様はじい様と約束があったんじゃないのだろうか?

「……で、お前のことだ。俺に相談っていうのはレティーの事だろ?」

「それ以外に何がある」

「……愚問だったな」

はぁとため息をつくウィリアム様だけどどこか楽しそうだ。

「あの~俺とレティーはここにいてもいいのでしょうか」

恐る恐る声を掛けると二人して

「何を言っている。当たり前じゃないか。ベルナールとレティオーヌは俺らの癒しなんだからな」

隣に座っているレティーの頭を優しくなでるウィリアム様。

レティーは嫌がるそぶりを見せないどころか猫のように気持ちよさそうにしている。

「そういえば、レティオーヌにプレゼントをもってきていたことを忘れていた」

「プレゼント?なんのじゃ?」

「なんのって……来月はレティオーヌの3歳の誕生日だろうが」

呆れたように懐から小さな箱を取り出すウィリアム様。

「来月、俺は隣国で会議だからな。先に渡しておこうと思ったんだよ」

レティオーヌを自分の膝に乗せるウィリアム様はレティーの手のひらに小さな箱を乗せた。

「開けてごらん」

首を傾げながら見上げてくるレティーにウィリアム様は優しい笑みを浮かべた。

箱をテーブルの上に置いて、リボンをほどき、箱を開けるとかわいらしい花の形をしたペンダントが入っていた。

「かわいい~」

箱からペンダントを取り出し、満面の笑みを浮かべるレティー。

「レティー、ウィルにお礼は?」

「ウィルおじちゃま、ありがとう」

「どういたしまして。ほらつけてあげるよ」

レティーからペンダントを受け取り、首の後ろで金具をはめるウィリアム様。

レティーの胸元で揺れているペンダントは光の加減で色が変わるようだ。

「お前は……また、貴重な石を使いよって」

呆れたような声を出すじい様。

「くず石の寄せ集めだから価値はないよ。高価な装飾品はレティオーヌが成人した時にちゃんと贈るよ」

「お前……自分の子供や孫にはやらんのにレティーにはあげるのか?」

「うちのは男ばかりだからな。実用品さえ与えれば十分だ」

ムスッとしながら答えるウィリアム様。

そういえば、ウィリアム様のところは見事に男ばかりだったな。

娘はおろか、孫娘もいないという見事な男系。

そんなところにじい様の孫娘(レティー)自慢。

そりゃ、レティーを可愛がるわけだ。


「ウィルおじちゃま」

くいくいとウィリアム様の腕を引っ張るレティー。

「ん?どうした?」

「おみみかして?」

レティーに耳を傾けるウィリアム様。

次の瞬間、その場が凍り付いた。

「きれいなおくりもの、ありがとうございます」

そういったレティーはウィリアム様の頬にキスをしたのだった。

ウィリアム様は一瞬驚いたような表情を浮かべたがすぐに目じりを極限まで下げた。

逆にじい様の目は極限まで吊り上がっている。

「じい様、顔が鬼のようです」

こっそりと告げるとすぐに表情を変えたじい様。

あの顔をレティーが見たら泣いてしまうことはすでに経験済み。

しかも、しばらく近寄ってくれなくてじい様、かなり凹んでいたし、俺に八つ当たりするからたまったもんじゃない。

「レティー、じい様がレティーが欲しいモノを誕生日にくれるって」

「ほんと?おじいちゃま!」

ぱあーっと明るい笑顔でじい様を見るレティーにじい様はデレデレだ。

「ああ、なんでもいいぞ」

「じゃあ、レティー、おうまさんがいい!」

「馬!?」

ビックリするじい様とウィリアム様と俺。

「おじいちゃまとおにいちゃまがおうまさんにのっているのかっこいいな~っていつもおもっていたの。だからレティーもおうまさんにのってみたいの!」

キラキラと瞳を輝かせるレティーにじい様はすぐに頷いた。

「わかった。じゃが、今年は無理だな。来年必ず用意しよう」

「ええ~」

「お馬さん選びは大変だよ。レティーと仲良くなってくれる子をじい様が選びに選び抜いてくれるから、来年まで我慢しようね。そのかわり、可愛い髪飾りをおねだりしてみたら?この間、壊れちゃったって泣いていたでしょ?」

不服そうに頬を膨らませたレティーにじい様は困り顔をしていたが俺のフォローでなんとか機嫌も直った。


だが、じい様がレティーに馬を贈ることは叶わなかった。

レティーの誕生日前にじい様は命を奪われ、レティーからはじい様の記憶が消えた。


レティーがじい様のことを思い出すことが出来るかはわからない。

いつか、じい様のことをレティーが思い出したら話せるかもしれない。


他愛もない日常の他愛もない思い出話を……



余談

じい様の代わりに父上がレティーの5歳の誕生日に牝馬をプレゼントした。

その牝馬は漆黒の毛をもち、琥珀色の瞳を持つこの国では珍しい色の馬だった。

この国の馬は栗毛色が一般的で、それ以外の色は人気がない。

しかし、レティーはその馬をとても気に入り『マリア』と名付けて可愛がった。

馬をプレゼントされた時は父上に抱き着いて大喜びだったそうだ。

その時の父上のデレデレ顔を見た使用人たちは夢を見ているのかと思ったと後日語っていた。

マリエル相手でもデレ顔を見せない父上が唯一見せたデレ顔。

その場にいられたなかったことを後悔したのは言うまでもない。




こんな日もあったんだろうなとなんとなく浮かんだので……


ウィリアムはレティーたちの祖父よりも年下(10歳くらい下)設定です。

今後本編にも登場予定。

ウィリアムの孫の設定もある程度はあるが、本編に登場するかは未定。

もしかしたら小話に出るかもしれないけど(笑)


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