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【隠したばかりに……小話】『過ぎ去り日の思い出』

『隠したばかりに……』の小話になります。

以前活動報告にアップしていたモノに加筆しました。


「ローザはおおきくなったらお父様のおよめさんになるの!」

ピンク色のかわいらしミニドレスを身に纏ったまるで妖精のように可愛らしい娘にマルセルは目じりを極限まで下げた。


数日後に開かれるローザの身内へのお披露目の為に作らせたドレスを真っ先に見せに来たローザを膝の上に乗せて一生懸命に言葉を紡ぐ娘にデレデレのマルセル。

そんなマルセルをアメリアは微笑ましそうに眺め、フィリップはふてくされていた。

「どうして、父さんなの?僕じゃないの?ローザ」

「だって、お父様はお兄様よりもつよいんだもん。この間も新しく来た護衛の人たちをビシバシ剣で叩きのめしていたの!その姿が絵本の騎士様みたいでかっこよかったの!」

「~~~~!僕は絶対に父さんを超えてみせる!そしたら僕のお嫁さんになってくれる?ローザ」

「お父様より強くなるの?」

こてんと首を傾げるローザにフィリップは思いっきり頷いた。

「エル兄様に一度も勝ててないのに?」

「ぐっ!?」

隣の領地である公爵家の次男エルヴィンに一度も勝てたことがないフィリップ。

剣はおろか、勉強でもダンスでもマナーでもエルヴィンに勝てていない。

王の甥であるエルヴィンは副宰相であるマルセルから様々な指導を受けている(=扱かれている)が10回に1回の割合でマルセルに剣で勝てるほどの技を身につけている。

一度も勝てたことがないフィリップへのローザの言葉は抉るように鋭くフィリップの心を傷つけていたがタダでは倒れないのがフィリップであった。


涙目になりながらも

「絶対エルヴィンを負かしてやる~!」

と叫びながら鍛錬場に駆けていく姿を見た召使たちから生暖かい視線を送られるのだった。


「ローザはお父様が本当に好きなのね」

「はい!ローザはお父様が大好きです!お母様もお兄様も大好きです」

満面の笑みを浮かべ、抱き着いてくるローザ。

「でもその『大好き』もすぐに『彼』だけのものになるんだろうな」

と苦笑するマルセルの姿をアメリアは不思議そうに見つめるのだった。



翌日。

「エルヴィン!今日こそはお前から1本取る!」

鍛錬場で剣を向けるフィリップにエルヴィンは苦笑する。

アメリアから事情を聴いたエルヴィンは小さくため息をつくと剣を構えた。

「僕はいつでもいいよ」

「むっか~!その余裕がムカつく!」

我武者羅にエルヴィンに突っ込んでいくフィリップをマルセルは呆れた表情で見守っていた。

「やれやれ、フィリップには基礎から教え直さないとな」

何やら手帳に書き込むマルセルの隣りにはちょこんとローザが座っていた。

「お父様、お兄様はエル兄様に勝てるの?」

「……無理だろうね」

剣を交わしている子供たちを見てマルセルの脳内では今後のフィリップの教育方法を組み立て直していた。

「武器を扱う時は冷静にならなきゃいけないのにフィリップはエルヴィンに勝つことに拘りすぎている。あれではいつか自分を傷つけてしまうだろう」

「じゃあ、エル兄様は?」

「そうだな、あの年齢にしては冷静すぎるのは面白くないが、騎士を目指すのであれば評価は高いな。ただ、時々剣に迷いが生じているな」

「まよい?」

「剣は人を傷つける道具という先入観がそうさせているんだろうな。なにかきっかけがあればエルヴィンの剣に迷いはなくなると思うがこればかりは本人が克服しない限りはな……」

難しい顔をするマルセルにローザはにっこりと笑みを浮かべる。

「大丈夫よ、お兄様もエル兄様もきっと素敵な騎士様になるわ」

「おや、どうしてそう思うんだ?」

「だって、絵本の中の騎士様が言っていたもの『大切な姫を守るために強くなった』って。だからそのうちお兄様やエル兄様のお姫様が現れたら強くなるわよ」

ローザの言葉にマルセルは苦笑する。

女の子の方が精神的に成長するのは早いと聞いていたが、ここまでとは思っていなかったからだ。

「それにね、お母様が仰っていたわ。ローザがいる限りお兄様もエル兄様もどんどん強くなるわよって」

「そうだな……あの二人にとっての姫はローザだもんな」

隣に座ってニコニコしているローザの頭を優しくなでた後、マルセルは鍛錬場に降り立った。

その手には刃をつぶしてある剣が握られている。

ローザはワクワクしながらマルセルの背中を見つめていた。



***


「僕は大きくなったら母様をお嫁さんにするの!」

突然の息子の発言にお茶を飲んでいたエルヴィンは思わず吹き出しそうになった。

「レオン?母様は父様のお嫁さんなんだけど?」

「えー、母様は僕が父様より強くなったらいいわよって」

「ローザ!?」

慌てて隣に座っている妻を見るエルヴィン。

「あら、だってエリナが貴方のお嫁さんになるなら、レオンが私のお婿さんでもいいんじゃない?」

にっこり微笑みながらもどこか拗ねた表情を浮かべるローザ。

「あ、あれは……エリナはまだ小さいじゃないか。成長したら忘れるだろ」

「あら、私は覚えておりますわよ。小さい頃『お父様のお嫁さんになる』って言った日のことを」

「え?それは初耳なんだけど……」

「ふふ、言ったことありませんもの」



というどこかで見たことのある風景を穏やかな表情でマルセルとアメリアは微笑みながら見つめていた。



定番ネタです(笑)

ラストに出てくる『エリナ』は本編終了後に生まれるレオン君の妹です。

本編には出てきていないけどね(出す余裕がなかった)


いつかフィリップのお話も書きたいな~

あと存在感が全くないエルヴィンのお兄さんの話も。

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