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【最後の召喚・小話】 神子様本を発行したのは誰?

『最後の召喚』と『何と言われようとも…』を読まれていることが前提の小話です。

活動報告にアップしていたモノに加筆修正しました。

西国から異世界の少女が消えて1カ月後。


「あ、あった!」

北国の魔導士協会所有の屋敷から響いた声が事の始まりだった……らしい。


『そんなに知りたければ北国に残したノートを探しなさい。そのノートには私の研究したモノがすべて載っているから』


彼女の言葉を信じ、彼女が使用していた部屋を協会長の許可の元、隅々まで探して見つけたのは数冊のノート。

封印の術が掛けられている物と掛けられていない物。

術が掛けられていない方の中身は見たこともない文字。

研究者たちはそれを暗号文だと判断した。


封印の術は簡単には解けないので後回しにされ、暗号文の解読に好奇心旺盛な者たちが我先にと群がった。

しかし、誰一人としてその暗号文を解くことが出来ずに時間だけが過ぎ去っていった。


そんなある日、王であるチェルソが幼馴染である協会の長ルカジオの元をひっそりと訪れた。

ルカジオの机の上に置かれている暗号文の写しを見てチェルソは目を見開き、ルカジオに問い詰めた。


「それは彼女が遺したモノ。しかし、どの暗号パターンにも当てはまらなくて苦戦中」


ルカジオの言葉にチェルソはにやりと表面には出さずに微笑んだ。

「神子なら読めるかもしれないから数冊借りていくぞ」

ルカジオの返事を待たずにチェルソは早々に自室に戻っていった。



数日後

チェルソはルカジオの元を再び訪れた。

「解読できたぞ」

チェルソの言葉にルカジオは驚きを隠せなかった。

国の暗号解読班(王直属の諜報グループの一員)ですら解読不可能と返事をもらったばかりだったので半ば諦めていたのである。

「これは彼女の世界の言葉だ」

「彼女の世界の!?」

瞳をキラキラと輝かせるルカジオ。

「では、『神子』に頼……って無理か。彼女が遺した物を『神子』が解読するとは思えない」

「……私が解読できるぞ」

「は?」

「『神子』は自分の周りに侍る者たちに『ヒミツの文通ができるように』と『神子』の世界の言葉を一人一人個別にだが同じ文字を教えていたからな。私もその一人だ」

「で、では……」

「預かっていった物はすべて解読してある。……残りもやろうか?仕事(政)はほとんど優秀な議員たちに移行しているから、王様業は正直暇なんだ」

「い、いいのですか!?」

「……といってもお前の欲しがるようなものじゃなかったぞ」

「へ?」

「『神子』の記録みたいなものだ。いや、記録というのも違うな。物語といったほうが当てはまるような気がしないでもない」

翻訳した物をルカジオに読むように促すチェルソ。



読み終えたルカジオは盛大なため息をついた。

「うう、彼女の魔術研究じゃないなんて……」

「だけど、面白いと思わないか?」

「面白い?僕にとってはなんの面白味もない、尻軽女の話としか言えませんよ」

「そう、いろんな男との恋愛物だ。これを物語にして発表したらどうなると思う?」

にやりと笑うチェルソにルカジオは呆れたような表情を浮かべた。

「王妃の浮気話をですか?国としてはどうなんです?」

「別に?今更だろ?『神子』の男好きは全国民が知っている」

「まあ、そうですが……」

「まだ一部しか翻訳していないけど、このノートに書かれている事柄はすべて真実だった。しっかり裏も取ったから間違いない」

「……彼女はまたすごい爆弾を遺していったんですね」

「庶民の娯楽としては最高じゃないか?」

「ええ、本当に。コレを発表した後の王妃の態度が見ものですね」

「ああ、どう言いつくろうのか。それとも開き直るのか……楽しみだな」

にっこりと笑うあう二人。

心底嬉しそうに笑いあう二人は口の堅い協力者(執筆者)を捜し出した。




「あ、あの……本当にこれをネタに書いてもいいのでしょうか」

ぶるぶる震える協力者にルカジオは満面の笑みを浮かべる。

「ええ、陛下からの許可もいただいております。この国一の物語の書き手であるあなたのその手腕を思う存分発揮してください。素敵なモノが出来上がると僕も陛下も期待しております」

翻訳された数冊のノートを受け取った協力者は中身を読むにつれて頬を赤くしていった。

「陛下やルカジオ様のご期待に沿えるよう頑張ります」

「ええ、お願いいたします。ああ、そうそう。印税の一部は孤児院への寄付とさせて頂きますことだけはご了承ください」

「もちろんです!私はこれが書けるだけで十分です」

「は?」

「ああ、今から腕が鳴ります!ところで、陛下と王妃様の恋愛はフィクションですよね?」

「え、ええ。陛下には王妃以外に想う方がいらっしゃいますから……巷で噂されているようなロマンスは一切ありません」

「あら、陛下が王子時代に熱烈に神子様にアピールして婚姻されたと聞き及んでおりましたのに……」

「……神子を国に縛り付けるためですよ。あと、陛下の想い人を守るためでもありますね」

「あら、陛下にはそのような方が?」

「ええ、とても心のきれいな方でした。ただ、神子とその取り巻き達から陰湿ないじめを受けておられたようで……陛下はそんな彼女を守るために自ら神子の取り巻きの一人になったんです。陛下が神子の取り巻きになったことで彼女へのいじめは鳴りを潜めておりましたが、小さないじめは続いていたようです。彼女の心が壊れる寸前まで追いやられていると気づいた陛下は神子を王妃することを決めたそうです」

「まあ!では陛下は愛する者を守るために?」

「ええ、『私にとっては神子との結婚は政略結婚のようなものだ。私一人が犠牲になることで彼女を救えるのならこの身を捧げよう』とご自分の心を殺してまで彼女を守っておりました」

「……それで、その陛下の想い人は今どちらに……?」

「陛下が王位を継承したその日に故郷に帰られました。心身ともにボロボロでしたので故郷で静養した方がいいだろうと。しかし、もう二度とこの国には来られないでしょう。彼女にとってこの国はつらい思い出が多すぎますから……」

「まあ、ではいつか陛下とその方のお話も書かせていただきたいですわ」

「陛下からの許可が下りれば……いえ、ぜひそちらもお願いしましょう。しかし、その前に『神子の恋物語』を書き上げてください」

「了解です。では、陛下とのお話は盛大にこちらの妄想をブチ込むとして、そのほかの方のお話はこのノートに書かれている出来事をすべてそのまま盛り込んでも大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です」

「では、さっそく取り掛かるので失礼いたします」

興奮したようにノートを鞄に収めた協力者は一目散に自分の仕事場に駆けていった。


「陛下とジュリの物語か……物語の中だけでもチェルソが幸せになってもいいよな」

誰もいない執務室にルカジオの言葉が消えていった。




数か月後。

平民の間である書物が人気を集めている。

神子をモデルとした恋愛小説である。


献上された本を読んだチェルソは黒い笑みを浮かべていたという。


その後、神子の取り巻きと神子との恋愛小説が次々と発行された。

そして、『この小説は事実を元に書いているらしい』という噂が流れるのに時間はかからなかった。


『神子』や取り巻き達はそのことを知らず、今日も王宮の一室で愛の囁き合戦を繰り広げているのであった(国王は除く)。



「さて、そろそろ貴族の間でもはやり始めているだろうから、始めるか」

「お好きにどうぞ」

にやりと笑い『神子』の元に向かうチェルソをルカジオは満面の笑みで送り出した。


本を片手にチェルソは『神子』を問い詰める。


「これに書かれているのは本当の事か?(事実だろうとねつ造だろうとどっちでもいいけど)」

「し、真実ではありません」

「へえ、でも君の胸元に輝いているダイヤの首飾りは彼からの贈り物だろ?ほら、この本にも書いてある(入手経路もばっちり押さえてあるから言い逃れはできないよ)」

「ぐ、偶然です」

「偶然ね~(そんなわけないだろうが、こっちはちゃんと調べてあるんだから)」

「そうです!ダイヤの首飾りなら陛下からもいただいております」

「私はあげてないよ?(あげるわけないじゃないか)」

「え?」

「私は水晶のネックレス(本物じゃなくてガラスだけどいまだに気づいてないらしいな)を贈ったことはあったけどダイヤはないよ。誰に貰ったの?」

にっこりと笑みを浮かべながらも徐々に『神子』を追い詰めていくチェルソ。

「ああ、あと君、あの時期……私も国中を駆け巡っていた時にこんなことしていたんだ(彼女が必死に”聖域作り”に駆けずり回っていた間、のほほんと男侍らせ遊んでいただけなんて許せないな)」

「…………」


その様子を傍で見ていた侍女たちから徐々にあの本に書かれていることは真実だという話が流れ出たのだった。



さらに数年後。

政治の権力が王家から国民に……選ばれた議員が行う議会に正式に移行した年。

『隠された愛』という物語が発行された。

言わずもがなチェルソとジュリの話だが、それを知っているのはごく僅か。

この物語もまた平民を中心に人気を博し、舞台化もされた。

その舞台は北国のみならず中央国でも上演され人気を博したという。




***


~雑談~

協力者:もっと面白いネタありませんか~!?ありきたりでツマラナイ

ルカジオ:ディーター・ベルツのネタは?

協力者:すでにいくつか執筆済み・発行済みで現在増刷中です

ルカジオ:一応聞くけど……悲恋だよね?

協力者:基本、悲恋。一番人気は振られた想い人そっくりの幼女を見つけて自分好みに育てて最終的に自分のモノにする話です

ルカジオ:(たしかあの話はジュリが『若紫計画』とか言っていた話の内容に近かったような)

協力者:ちなみにそのネタはジュリさんから頂きました

ルカジオ:はぁ!?君、ジュリと知り合いなの?

協力者:てっきりご存知かと……だから私に白羽の矢が当たったと思ったのですが。違ったのですか?

ルカジオ:偶然だよ。まったくの偶然!

協力者:ジュリエッタからの紹介で知り合ったんですが……それもご存じない?

ルカジオ:え!?ジュリエッタ!?え?え?

協力者:あ、そうか!ジュリエッタからネタ貰えばいいんだ!彼女ならジュリのネタたくさん持ってそう♪


εεεεεヾ(*´ー`)ノ デハ、シツレイシマス



ルカジオ:ジュリの交友範囲ってどんだけ広いんだ!?




前書きにも書きましたが以前活動報告にアップしたおふさけ企画その1を転載しました。

一部加筆修正してあります。


執筆協力者の名前……考えてなかった(ーー;)


その後、ジュリエッタからジュリに関するネタを貰い、それを元に彼女(執筆者)はいろいろと暴走した物語を書き綴っては国王に献上したとかしないとか……(笑)

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