きえたユーリ
その日の夕ぐれ、町に雪がやってきました。冬のはじまりです。
雪は、どの家にも、どの道にも、しずかにふりつもっていきました。
つぎの日の朝、町はどこを見ても、まっ白です。
前の日とは、ぜんぜんちがう町の色に、子どもたちはドキドキしましたが、ことしのドキドキは、いつものドキドキとはちがいます。
だって、雪にさわってはいけないのですから。
そして、この日からユーリが、町からいなくなりました。
ラウラとわかれたあとの、帰り道のことでした。
ことしはじめて流れてきた、雪にまぎれたくもり玉が、しらない間に、ユーリの手にふれてしまったのです。
とたんに、ユーリの目はうつろになり、頭はぼんやりしていきます。
そのまま、さそわれるように、森へ行ってしまいました。
ユーリが、いなくなってからというもの、子どもたちはみんな、悲しみにしずんでいます。
きれいなユーリのことは、みんな大好きだったからです。
それは、ラウラも同じでした。ユーリは、ラウラのたったひとりの友だちです。
さいごに見た、ユーリのすがたを、わすれられません。
「たすけにいこうよ」
ラウラは、みんなに言います。
けれど、みんなは首を横にふります。なぜなら、吹雪の森へ行って、ぶじにもどってこれた子どもなんて、今までいなかったからです。
「雪だらけの森だよ」
「たすけることなんて、出来ないよ」
けれど、ラウラはあきらめることが、出来ません。
ラウラは、たったひとりで森へと出かけていきました。
ユーリを、つれもどすために。




