森の女王
港には、たくさんの子どもたちが、あつまっていました。
この町にくる冬告げ鳥は、いろんな国で見てきたことを、たくさん話して、きかせてくれます。
みんなは、そのおはなしを、毎年たのしみにしているのです。
ラウラがやってくると、ひとりの男の子が近づいてきました。
ユーリです。
みんなが、ラウラからはなれていくなか、ユーリだけは、なぜかいつもラウラのそばに来てくれます。
そのことを、ラウラは不思議に思っていましたが、いやではありませんでした。
今では、ラウラのたったひとりの、お友だちです。
ラウラは、ユーリとならんで、冬告げ鳥のおはなしに、耳をかたむけます。
冬告げ鳥は、いいました。
「この町のはずれに、吹雪の森があるのは、しっているね?」
子どもたちが、こたえます。
「しっているよ。ずっと雪がふっている森でしょう?」
「あそこでねむる森の女王は、十年にいちど、めざめの冬をむかえる。ことしが、その十年目の冬なんだ」
「それも、しっているよ。女王様は、きれいなものが好きなんだ」
「そう。きれいなものが好きな女王は、きれいな子供をつかまえる。だからみんな気をつけて。子どものなみだは、ほうせきだから」
それは、この町に昔からある、いいつたえでした。
きれいな子どもの、ながすなみだは、見たこともない、きれいなほうせきになるらしいと。
「でも、どうやってつかまえるの」
ひとりの女の子が、問いかけます。
冬告げ鳥は、おおきなはねを広げて、こう言いました。
「くもり玉という、雪とおなじ色の、小さな玉を、雪といっしょにながすんだ。雪は、あの森からくるからね。それをさわった子どもは、心がくもってしまって、知らないうちに、森へと行ってしまうんだよ」
冬告げ鳥のおはなしに、子どもたちは、とてもこわくなりました。だって、もしかしたらじぶんが、つれさられるかもしれないからです。
「本当かな?」
「ウソじゃないよ。お父さんも、言っていた」
「森につかまると、もう帰れないんだって」
そんなことを、はなしながら、みんなは、おうちへ帰っていきます。
ユーリとラウラも、とちゅうまでいっしょに帰りました。
「ユーリはきれいだから、気をつけて」
帰り道のとちゅうで、ラウラは、しんぱいそうにユーリに言います。
大きくなった今でもユーリは、とてもきれいな男の子でした。今もみんなの、にんきものです。
ユーリは、ありがとうと笑って、帰っていきました。




