可愛らしい格好の主従にナムグたちは文字通りメロメロです。
薬を飲み、そして眠そうなアルファーナによしよしと頭を撫でる。
「はい。ファー。お休みしよう」
「だ、大丈夫です……お片付け……」
「しなくていいよ。ほら、フィアも眠たいのか?」
半分以上夢の世界に入っているフィアは、ナーガ・デールが背中にのせて、そっとファーの横に寝かせる。
『フィア、薬は大丈夫か?』
ナーガ・デールの声に力なく首を振る。
ナーガ・デールは、
『ウィリアム、申し訳ないが、この……』
「あぁ、ロード」
『あぁ、父上のバッグですね?じゃぁ、失礼します』
器用にバッグを開けて取り出した薬をウェイトに手渡し、ウェイトはフィアに飲ませて寝かせる。
ファーには二つ下の弟以下、7人の弟妹がいるので解るが、ぐずぐずとぐずるフィアをナーガ・デール達があやしている姿は……、
「あの?フィアは調子が悪いのですか?」
ファーの頭を撫で、思い出したように、ほどけては絡まってしまうであろう柔らかい髪を、三つ編みにしながら、小声で、
「フィアは怖がりなんだ。意識がある時には冷静さを装うけれど、一人ぼっちが怖いんだよ。だから、嫌わないであげてくれるかな?」
「そ、それはありません。フィアはお友達です‼」
「良かった。はい。ファーの髪も綺麗になったよ」
「あ、ありがとうございます」
フィアの横に寝かされ、
「おやすみ。明日は良くなっているよ」
「お、おやすみなさいませ」
そっとファーは手を伸ばし、フィアと手を繋ぐと、目を閉じた。
すると、フィアもいつもならもうしばらく落ち着かないのだが、安心したようにすやすやと寝入る。
「あれ?何時もなら、もう少し……」
『安心したのかも知れない。だが、フィアは、神経質だからな……』
『私が、外で監視していましょうか?』
『いや、大丈夫だろう』
ちなみに、ロードは全く父を恐れることはない。
恋人になったばかりのマリーは、長期間の精神的疲労により、部屋の隅で先に眠っている。
そちらを見て、ナーガ・デールは、
『それよりも、あの娘についていてあげればいい』
『あれ?父上にしては、優しい言葉ですね』
『……よくわからん娘だ。警戒心はあるのに、何故私には怯えないのか?』
首をかしげる父親に、ロード、リアン、アルフがクククっと喉をならす。
『……何だ?』
ジロッと睨むナーガ・デールに、アルフが、
『おじさんが、怖いの嘘。優しい。不器用?んーと、怖がらせてるだけ』
『アルフ、本当のことをはっきり言うと、拗ねるわよ。お父様は』
『あぁ、だいじょぶ。明日、フィアと遊んで貰うの』
『遊んで……』
兄妹は父親を見て、クククっと再び喉をならす。
『お前たちは‼』
ムッとした顔の父親に、
『フィアと姫様が起きちゃう?おじさん』
『うっ……』
アルフの一言に黙りこんだ。
すると、スルッと室内に入ってきたのは、兄たちの猛攻に耐え抜いたルーである。
「……死ぬ……」
「生きているだろう?自分の部屋に行けよ」
「部屋に戻ったら、待ち伏せされたんだよ‼」
ルーの声に、
「うぅぅ?」
フィアが声をあげ、咄嗟にロードが駆け寄り、前足でスパーンとルーを叩く。
『折角、今日はすぐに眠ったのに‼起こすな‼』
「グハァ‼」
吹っ飛ばされるよりも、押さえ込まれて呻く。
「もう、そこで寝てろ。フィアとファーと、マリーには近づくな」
「重いっての‼それと、ま、マリーって誰だ⁉」
「ロードの恋人。ほら」
ふわふわの寝床を作って貰い、幸せそうに眠っている着ぐるみナムグ……。
「ウェディングドレスか?もう、嫁か?お前、その目付きでふられてばかりだったもんな。今回は大丈夫か?親父に似てしまって、うちの兄貴と一緒で心配だったんだが……」
ルーは押し潰してくれるロードを見上げると、その横にはロードの父のナーガ・デールと、腕を組んだ兄と父にげっと青ざめる。
「申し訳ありません。ウィリアム様」
「アホ弟は引き取るので、安心してお休みを」
「グラン伯父上にマディ兄上。敬語はいりませんよ。お二人に敬語で話されると困ります。あ、フィアはちゃんと見ていますね」
「では、ウィリー。フィアをお願いするよ。では、おやすみ」
マディに担がれ連れて行かれるルーを見送り、
「じゃぁ、寝ようか」
と周囲を見回したのだった。




