第三話《説明回なんて誰も求めてない! 早く俺をラミアにしてくれーッ!》
「何故この世界には貴様の言う『モンスター娘』が存在しないのか、貴様は知っているか?」
「え? 存在するけど?」
「貴様の頭の中にはな!」
自分の欲望に素直になりすぎた俺だったが、ようやく『百獣の幼女王』の話を聞けるくらいには落ち着いてきたよ! 目的とか何かよく分かんないけど、これを乗り越えれば更なるモン娘への変身を実現できるのだ! 今は堪えろ俺、我慢だ俺! 目指すはラミア娘だ!
現在俺with『百獣の女王』は、相変わらずin白い部屋である。とりあえず上着を着直して、壁に寄り掛かって座っている。白い髪の美少女(仮)が、スライムの粘液でドロドロになりながら独り言を呟いている図である。
「……まず、貴様の住むこの世界には『モン娘』は実在しない、いいか、モン娘はいないんだぞ? オーケー? それを前提に話すんだからな?」
「……ああ、知ってたさ、モン娘が現実じゃないなんて。だから今の状況も、最初は夢なんじゃないかって思った。でも夢じゃなかった……俺、女王に会えて、本当に良かった……!」
「ふふっ、まさか人間に感謝されるとは思ってもみなかったぞ」
「女王……! それじゃ、ラミアへの変身のやり話は終わってないだろうが!」
今度は女王が俺の台詞を遮る! 舌噛むかと思った!
◆ ◆
「ノアの方舟の伝説は知っているだろう? 大洪水に備えて、あらゆる生物のつがいを舟に乗せた……とか、そういうヤツだぞ。しかしな、実は方舟に乗れなかった生物もいたんだ。方舟に乗れなかった生物はどうなると思う? ……死ぬしかない、滅ぶしかない。嫌だ、死にたくなんてない。だから我は、方舟に乗れなかったあらゆる生物のチカラをひとつに集めて生き延びた。今のこの世界が『方舟に乗った生物達の結果』だとすれば、我は『方舟に乗れなかった生物達の結果』なのだ。大洪水を乗り越えたこの世界には存在しない生物達。あるいは、あくまで空想上の存在として伝えられている生物達。そんな生物達の無念を晴らす為、我はこの世界をひっくり返さなくてはならないんだぞ……!」
「……つまり、昔はモン娘が実在した、と?」
「そうだけど……そうだけど! そこじゃない!」
せっかく融合しているのだから、テレパシー的な以心伝心があれば良かったのにね。同じ話をもう一回聞いて、だいたいの流れは理解した俺。
「つまり、魔物だとか人外として伝わってる、大昔の生き物達のために復讐しよう、みたいな話?」
「うむ、貴様には我の代わりに、ほら、何かしてもらうぞ!」
「具体的には?」
「えと、ほら、も、モン娘は凄いんだぞ! みたいな?」
「ノープランか! というか今更ながら、この『箱』って何? 女王はここで何してたの? 何で女王なの? ねぇ」
「急に食いつくな! 何か焦るわ!」
「だって早く片付けないとラミアに変身出来ないから! こんな中二病な説明回なんて誰も求めてない! 早く俺をラミアにしてくれーッ!」
「我の存在全否定か!」
「女王の存在理由なんて俺をモン娘にする事が全てだろうが! 女王愛してる!」
「おふぅ」
生産性皆無の会話が一区切りというか強制終了みたいになった。
◆ ◆
「分かった、分かったから。とりあえず貴様には、説明回ついでに『モードラミア』への変身方法を教えてやるから」
諦めたのか『百獣の女王』は、先にラミア化の方法を教えてくれるって! 女王愛してる! 今回はラミア化なので、上着はもちろんズボンとパンツも脱いだ! 全裸仁王立ちで準備完了だぜ! それはともかく!
「ネーミングがいちいち中二病です女王様!」
「病なのは貴様だッ! まずは変身待機モードへチェンジするんだぞ!」
現在の俺は白髪の年頃で全裸な美少女(仮)だが、透けてたり青緑色だったりしない、ぱっと見は普通の人間である。ここから、気の持ちようでスライム娘になれるのだ!
「待機モードって言うと、半端なスライム娘、半スラですね女王!」
「勝手に名前を付けるな! 早く変身待機モードへチェンジ!」
呼吸を整え、精神を集中させる俺。スーッと、体温が下がるような感覚。身体を見ると、うっすら透けていた。
「できました!」
「よろしい! 他のモン娘への変身は、半スラ状態から行うんだぞ!」
「半スラ状態からですか!」
「うむ、スライムの粘液を利用して変身するのだ!」
「半スラ状態の粘液を利用するのですね!」
「そうだぞ!」
次回、いよいよ第二の変身『モードラミア』登場ッ! 続くッ!
第三話:おわり