最終話《モンスター娘達が幸せに暮らせる理想郷を作る! そして俺はモン娘ハーレムで幸せに暮らす!》
「はぁ、はぁ、はぁ、どうだ! やってやったぞ!」
「うわぁ、なんか色んな汁でドロドロじゃん……」
「貴様ぁ! ここにきて貴様が引くとはどういうつもりだぁ!」
ぷんすかする女王かわいい! さておき、実に平和的にハオン星人をやっつけたぞ!
「それで、ハオン星人さんはどうします?」
「ふむ、なんか満足そうに寝てるし、放っておいて問題ないだろう。むしろ起きる前に『方庭』から出たいぞ」
体育座りで観戦していたスライム娘の俺に、キメラ美少女の女王が近付いてくる。いやしかし、本当に、色んな汁でドロドロで、テカテカで、うわぁ、良いわー。近付いてくる間にも、どこからか液体が垂れてるし、ふむふむ、こりゃあこりゃあ、ふふふ……。
「なんだ貴様、じろじろ見るな! おい、何か言え! 怖い!」
「ちょっとだけだから」
「いやホント、怖いから、や、やめて!」
おっと危ない、無意識に女王を襲う所だったぜ!
「すみませんすみません、あまりにも魅力的だったので、ついつい! それじゃあ改めて、襲っても良いですか? ありがとうございます!」
「なるほど分かった! 貴様は我の敵だな! 撃退するぞ!」
冗談か本気か分からないけれど、触手を構える女王! でも残念! 今の女王の姿は戦闘用のキメラじゃありませーん!
「大歓迎ですが!」
両腕を広げて迎え入れる体勢の俺! 睨み合う二人!
「……ははっ、ふざけてる暇はないぞ? さっさと脱出だ」
「俺は本気ですけど?」
「早く荷物をまとめろ!」
ちぇっ! 仕方ない、帰る準備だ。
◆ ◆
「女王! その前にスライム娘から本体へ、俺の意識を戻さないとですね!」
「ああ、触手でぶっ刺せばいいのか?」
触手を構える女王。あ、今度は本気だ。
「待って女王、違う、違うの!」
スライムの粘液を利用してスケートのように滑り、女王から距離をとる俺!
「ん? 戻るんだろう?」
「戻り方! ほら、スライム娘と抱き合って、溶け合って融合するやつ! 前にやったのの逆パターンやりたいの!」
「……貴様は本当に好きなんだな。はぁ、分かった分かった。我はどうすれば良い?」
よっしゃ! 超呆れてるけど、やってくれるなら構わない!
◆ ◆
「それでは、行きます」
「さぁ、来るなら早くしろ」
キメラ状態の女王に抱き着くスライム娘の俺。ケンタウロスの蹄がハイヒールのようになっている分、女王の方が身長が高い。女王の鎖骨の辺りに頬をくっつける俺。
「んっ、冷たいな」
「嫌ですか?」
「ほてった身体には丁度良い」
「ふふっ、良かった」
俺は葉っぱのローブの中に両腕を入れ、女王の背中に手を回す。ゾクゾクと震える女王。
「貴様、いつもこの体勢だぞ?」
「そっ、そうでしたっけ? ほら、身体を密着させたいから、かも?」
そんな事を言われたら、なんだから恥ずかしくなっちゃう!
「次はこうだろう?」
「わっ、はい、そうですねっ」
女王が後ろに倒れ込む。更に女王は、上に乗った俺にスキュラの触手を絡めてきた。
「女王!?」
「貴様も言っていただろう? このキメラの身体は、内側からエネルギーが沸き上がると。せっかくだからな、我も楽しむぞ!」
「はっ、はいぃ!」
女王に絡み付かれながら身体を溶かし始める俺。全身がピリピリと痺れてきた。触手に加え、両腕でも俺を抱きしめる女王。うわっ、顔が近い! 息がかかる! うわっ、うわっ!
「んっ、ふわぁ……!」
「ふふっ、どうした?」
変に意識したせいで、何か変な感じ! うわっ、すごいジンジンする! 身体が熱い! 女王と俺の身体の境目が溶け始め、徐々に沈み始める俺!
「さぁ、おいで?」
「はいぃ、女王様ぁ」
包み込まれるように融合していく俺。心地良い暖かさに、だんだんと意識が薄れていく。二度寝する時のような、すんなりと眠りに落ちる感覚。こうして俺は、女王の中に溶けていったのだった−−。
◆ ◆
「もう一回いいですか!」
「駄目です! ハオン星人が起きたら面倒だと言っただろう! 早く起き上がれ!」
気がつくと天井を見ていた俺。無事に本体に意識が戻ったようだ。
「とりあえず、キメラから戻りますね」
起き上がった俺は、モン娘のパーツをスライムに変えて体内に引っ込める。慣れたモンだぜ!
自分の服を全て着る俺だったが、ふむ、やっぱりぶかぶかだ。男物だし、せっかくの美少女が勿体ない。
「あ、そうだ」
俺は、ハオン星人を拘束していた糸を手に取る。その糸を上手い具合に操り、さっき天井に刺さっているのを見つけた、ハオン星人の剣を引っ張り落とす。
「それをどうする気だ?」
「えーと、こうやって、んー」
色々いじっていると、よし、出来た!
「マントか」
「これを巻き付ければ、良い感じじゃないですか?」
「うん、まぁ、うん」
微妙っぽい! とにかく、ハオン星人のマントを羽織って鞄を持ったなら、いざ外の世界へ!
◆ ◆
真っ白な広い部屋を出る俺with女王。薄暗い長い廊下を出口に向かい歩く。
「いよいよ、ですね」
「ああ、待ち侘びた」
「大洪水以来ですか?」
「うむ、ノアの方舟に乗り損ねた時はどうなるかと思ったぞ」
「俺は、一日ぶりくらいですかね?」
「ずいぶん長く一緒だった気がするな」
「ですねー。あー、でも俺、帰った所で顔違うんですよねー。結局分離って出来ないんですか?」
「分離しなくてもスライム化したら全身作り替えられるぞ?」
「マジか!」
そんなこんな話している内に、ついに出口だ。
「それじゃ、女王」
「ああ、頼む」
こうして『百獣の女王』は『ハオンの方庭』から自由になったのでした。
◆ ◆
「なっ、なんじゃこりゃー!?」
「どうした貴様、いきなり大声上げて!?」
「いや、だって、え? 俺が『方庭』にいたのって、一日くらいですよね!? 楽しい時間は早く過ぎるにしても、三日も経ってないですよね!?」
『方庭』から出た俺が見たのは、鬱蒼と生い茂るジャングルであった。確か俺は、ちょっとした雑木林の奥で『方庭』を見つけたはずだよね!?
「んー、我は人間とは時間の感覚が違うから分からないが、もしかしたら『方庭』の中は時間の流れが違うのかもしれんな」
「浦島太郎か!」
「うら、しま? 良く分からないが、どうするんだ?」
と、その時だ。背後の『方庭』が回転しながら宙に浮かんだのだ。フォンフォンみたいなUFOっぽい音を立てながら、あっという間に彼方へ飛び去る『方庭』! というか、マジでUFOだったのかよ!
「ハオン星に帰ったのかな」
「それより女王、大変です! ケータイをハオン星人さんに預けたままでした! 通信手段がありません!」
せっかく撮った写真が!
「このジャングルを抜ければ町とかあるんじゃないのか?」
「あれば良いですけど……あ!」
「今度は何だ?」
「人魚の時に産んだ魚卵を『方庭』に忘れてきました!」
「……そうか」
「いやこれは一大事ですよ! 孵化したらどうするんです!? 俺の娘(仮)が!」
「無精卵だと思うけど……」
「マジか!」
とにかく、俺の家へ向かうしかなさそうな状況であるようだ。
「滅びてなければ良いなぁ、人類」
「その時はアレだ、我と貴様でモンスター娘の文明を築こう!」
「あ、良いですね、それ! 俺達がアダムとイヴになるんですね!」
「それは、まぁ、ははっ」
すごく嫌そう! でも断らない! 気を遣う良い子!
そんな壮大で他愛もない話をしながら、俺と女王は青々と茂った草むらを歩き、ジャングルの出口を目指すのであった−−。
◆ ◆
こうして俺と『百獣の女王』は新たな世界へと歩みだす。世界が滅んでようが滅んでまいが、やる事は変わらない。モンスター娘達が幸せに暮らせる理想郷を作る! そして俺はモン娘ハーレムで幸せに暮らす! うん、割と未来は明るいぞ!
最終話:おわり




