第十五話《他にはですね! スライムとラミアとハーピーとケンタウロスとアルラウネと人魚ですね!》
「んっ、ふぁ、んぅ、ふっ」
「がんばれー」
「がんばる! ふぉ、うぅ」
スライム女王の声援を受け、蜘蛛の糸を出そうと試行錯誤している俺だ! 産卵の時とも違う、絶対に使った事のない筋肉に力を入れ、蜘蛛男の映画をイメージしながら頑張る! 力を入れるのはさっきぶつけた蜘蛛の腹だと思うんだけどなぁ? と、その時だった!
「あっ! あっあっ! なんか来た! 女王! なんか出る!」
「報告しなくていいですー」
「ふぁ、あ、あぁ、あ!」
バシュンと勢い良く飛び出す糸! お腹の辺りにズルルンとした不思議な感覚!
「ふ、ふふふ、出ましたよー、女王ー」
「あーあ、我は知らないぞ?」
「ふぇ?」
女王は何を言ってるんだ? 蜘蛛の巨体を上手い事反転させ、後ろを向く。すると、あちゃー。
「ちょっと地球人くん! 何よこれ!? ベタベタして、もう! とーれーなーいー!」
蜘蛛の糸まみれのハオン星人がジタバタしていた。すげー飛ぶのな、糸。ハオン星人は両腕をブンブン振り回し、うわ、すげー揺れてる! 慌ててハオン星人に近づく俺。近くで見ると、蜘蛛の糸のネバネバが、おぅ、エロい……! あ、そうだ、こういう時の美少女フェイスだ!
「ご、ごめんなさいっ! 私、アラクネって慣れてなくて、その、お怪我はありませんでしたか……?」
上手い具合に角度をつけて上目使いにする。一旦目を逸らし、指を組んでもじもじしながら顔を赤らめ、再び目を合わせる。
「こっ、この程度で怪我なんかするワケないでしょ! 大袈裟に騒いで、わ、悪かったわね! これからは気をつけなさいよねっ!」
ずきゅーん的な効果音が聞こえたと思う。そして、ハオン星人のキャラが分かってきた気がした。
◆ ◆
蜘蛛の糸を取るのに夢中なハオン星人はさておき、俺は蜘蛛の巣を作るぜ!
「どうやれば綺麗な蜘蛛の巣が作れますか!」
「うむ、本能に従え!」
「おおざっぱ!」
おおざっぱな女王の指示だったが、まぁ、スライム化もハーピーで飛ぶのも、人魚で泳ぐのだって本能でやったみたいなモンだしね。糸の出し方さえ分かれば大丈夫だろう、うん。いざ、スパイダーウェブ!
まず俺は蜘蛛パワーで壁に登る。すげぇ! 重力無視か!(虫だけに) そして今度はお尻の角度に気をつけて、蜘蛛の糸を発射する!
「ふぁ、ひゃうん!」
おぉう、お尻じゃないんだけど、お腹でもない、何だこれ、どこから出てるんだ? よく分かんないけどゾクゾクする! 新感覚!
「よっ、ふんっ、んっ、あぅ」
小一時間ほど経過しただろうか、本能のままに糸を噴射し続けた結果、見事巨大な蜘蛛の巣が完成した! 要練習といった感じだが、及第点だろう。ネバネバしない糸を歩き、巣の中心に留まる。
「超高い!」
ハーピーで飛んだ時と同じくらいの高さだろう、地上10mくらいの位置から女王に手を振る俺! あぁ、無視しないで!(虫だけに)
「……さて、降りるか」
巣を作ったはいいけれど、特にやる事もなかったのですぐ降りる。あっ、写真お願いしてくれば良かった!
◆ ◆
糸を垂らしながらゆっくり降りるアラクネの俺。小一時間も糸を出し続ければ、ズルンとした感覚にも大分慣れてくる。俺はスライム女王の前に降り立った。
「ただいまー」
「うむ、中々の蜘蛛の巣だな」
「えへへー」
俺と女王がイチャついていると、蜘蛛の糸を取り終えたハオン星人がやって来た。
「ねぇ地球人くん、アラクネの他には何に変身したの? アタシにも見せてほしいわ」
「他にはですね! スライムとラミアとハーピーとケンタウロスとアルラウネと人魚ですね! それじゃまずはスライム娘からいきますね! 変身!」
「待て待て待て! 食いつきが凄いな貴様! ハオン星人も引いてるぞ!」
「よくこんな奴と融合なんて出来たわね。『女王』も物好きだわぁ」
「あれ!? 我が引かれてる!?」
おや? この二人は仲良しさんなのかな? さておき、落ち着いた方が良いのは確かだね。まずはアラクネだ。
「順番に変身するので、まずハオン星人さんはアラクネの写真撮影をお願いしますね! あ、女王は鏡を出しててください!」
「はいはーい」
「鏡だな、どれどれ……って、貴様! 我を利用する気か!」
「最初からそうですが!」
「なんか違う!」
「アタシはそんな約束してないわ!」
とりあえず皆、ちょっと落ち着いた方が良いね!
◆ ◆
状況を整理しよう。まず俺はモンスター娘に変身したい、それだけだ。そしてハオン星人は俺の変身を見たい。利害の一致! 利害の一致! 利害が一致してるんだから、写真撮影くらいやってくれるよね?
「そう、かしらね。うん、そうね、写真くらいなら良いわよ。この携帯端末を使えば良いのよね?」
「はい! お願いします! あれ? 女王、鏡は?」
何故だろう、女王がムスーっとして、ジト目で俺を睨んでいるぞ?
「……まぁな、我と貴様も利害は一致しているからな。手伝ってやるぞ」
渋々了承する女王かわいい! 女王は、さっき俺が作った巨大蜘蛛の巣をスライムに変え、大きな鏡を作ってくれた!
「さすが女王! ナイスミラー!」
「ふんっ、さっさと撮影すればいいじゃないか」
「ですね!」
大撮影会開幕ッ!
◆ ◆
ショット1『モードアラクネ』!
蜘蛛のボディが全部写る角度で、かつアラクネのセクシーさを損なわないようにした上で、蜘蛛の糸のエロスを加えたベストショットいただき!
「なるほどなるほど、はいはいはい」
ハオン星人の胸元のランプがピンク色に点滅しているぞ! アレは何を示しているんだろうね!
ショット2『モードケンタウロス』!
アラクネの下半身をスライム化させると、やはりゾクゾク感が凄かった。ビリビリする下半身に堪えながら、蜘蛛の身体を馬に変えていく。さっき自撮りしたケンタウロスだが、よし、今度は前脚を上げた勇ましいポージングだ! 鏡に写った美少女ケンタウロス! いななく駿馬! ベストショット!
ショット3『モードラミア』!
白銀の毛並みを持つ馬の下半身を、今度は蛇に変えていく。見られるのにも慣れてきたが、やはりまだジンジンが強い。涙目になりながらもラミアの身体が完成する。背中から腰のくびれ、お尻から尻尾にかけての絶妙な曲線を生み出す俺。改めて鏡で見ると、最っ高にセクシーであります! 腕でアラビアンな感じのポーズを付け、ナイスショット!
ショット4『モードマーメイド』!
ラミアの下半身で円を作り、そのままスライム化させる。余分なスライムを切り離し、そのジェルで小さなプールを作る俺! ヌメヌメしたプール内で、下半身をズルンと魚の尾びれに変える! さっき産んだ魚卵を手に持ち、うつぶせ状態から上半身をエビ反りにして、尾びれをピチピチさせればベリーナイスフォト! セクシー!
ショット5『モードハーピー』!
一旦下半身を人間の脚に変え、トランクスをはく。ポージングをキメて、両腕両脚をハーピーへ変える。鏡に写った白銀の翼の美しさに酔いしれたなら、いざ空を飛ぶ! 優雅に飛び回る姿をウォッチング! ベリーベリーナイスショット!
ショット6『モードスライム』!
「さぁ、見られながらの全身スライム化は初であります。緊張の瞬間であります」
「ドキドキだわぁ」
ハオン星人のランプの点滅が早くなってるけれど、心拍数的なアレなのかい? まぁいいや。全裸になったなら、全身スライム化! 頭がクラクラする! やっぱりジンジンが強い! 痺れた足をおもいっきり叩いたようなビリビリが全身を襲う! 意識が飛びそうになるのを堪え、なんとか持ちこたえる俺! 一息つき、ペタンと女の子座りする。胸を強調するように自分を抱きしめ、軽く脚を溶かし、首を傾げるポーズ! 今だ! レッツ写真!
ショット7『モードアルラウネ』!
ここまで来たら、アルラウネも写真に収めたい。収めたい!
「女王様、もしもの時は! 女王様だけが頼りです! ヨロシクお願いしますねっ!」
「……むぅ、仕方ないな、気をつけるんだぞ」
「はいっ!」
いざアルラウネ! スライム状態から身体を植物に作り変えていく。そういえば最初の変身の時は意識が途切れたので、植物に変わる瞬間は初体験だ! やべぇ!
「あ、うぁ、はぁ、あっ、あぁ、ふぁ」
「ちょっと『女王』大丈夫なの?」
「まだ大丈夫だぞ」
身体の内側をツタで締め付けられるような感覚。バキバキと音を立て、手足が木の枝のように変わっていく。
「あ、あああ、うわ、あ」
一際大きな、バキンという木の折れるような音が響き、アルラウネへの変身が終わる。
「はぁ、はぁ、じょーおー、今回は、上手く、出来たみたい、です?」
「うん、ちょっと危ないかな!」
「あぁ、すっごいドキドキしたわぁ」
ふむ、迅速に撮影を終わらせよう! ハイチーズ! イェイ! アルラウネピース!
◆ ◆
「撮影も終わった事だし、そろそろ『モードキメラ』に挑戦しないか?」
「キメラって、最初に会った時の女王みたいなアレですか!? やりますやります! あ、でもその前に、もうひとつだけ変身したいモン娘があります!」
キメラも楽しみだけど、コイツに変身しなきゃ次へは進めないぜ!
「ちょっと待ちなさいよ! 地球人くんの変身を見たアタシの感想とか聞きたくないの!?」
「ハオン星人よ、話題は次へ移っているのだぞ? おとなしく椅子に座っていてくれ」
おやおや? もしやコイツは、俺を取り合っておいでかな? さすれば、ここで俺が言うべき台詞はコレだッ!
「わっ、私のために争わないでっ!」
「……」
「……」
「……」
間違えたみたいです。続くッ!
第十五話:おわり




