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第十三話《美少女がスライム娘を襲っている光景である。滅多に見られないぜ?》

 ハーピーの時と同じく、人魚の産卵も下腹部の使った事の無い筋肉を動かして行った。

「ん、ふぁ、んぅ」

 魚卵は柔らかい為、ハーピーの卵ほどの痛みはない。むしろ、むずかゆいと言うか、ぶっちゃけ気持ちいい。

「あっ、ん、んぁ」

 スライムの粘液でヌルヌルになった自分の身体を抱きしめ、不思議な感覚に堪える俺。いや駄目だ、目をつむったら見れないぞ! しっかりと眼に焼き付けるのだ!

「ふぅ、ふぁ……はぁ、はぁ、産まれた」

 スライムプールの上で悶えながら、ついに産卵を終える俺人魚。産まれたのは、宝石と見まがう程のキラキラ輝く赤い卵であった。ちなみに数は一個で、野球ボールくらいのサイズだ。

「ふふっ、綺麗……」

 水かきのある両手で卵をすくい上げ、恍惚の表情で眺める俺。

「でもなんか、これは食べられないな……」

「食べるの前提だったんだな、やっぱり」

 とりあえず卵は、スライムで作った小さい水槽に入れておく事にしました!


◆   ◆


「それでだ。このスライムの塊をどうするか、だぞ」

「待って女王、『尾びれが人間の脚に変わる瞬間の人魚姫』ごっこするから待って」

「なんだそれ」

「しまった! 声を出せないから普通に脚を戻すだけになる!」

「知るか!」

 結局普通に元に戻った俺。Tシャツとトランクスを着て、スライムプールの前に立つ。このプールをどうするかって話だったっけ。

「女王、俺にナイスアイデアがあります!」

「ほう、やってみろ」

「やってみます!」

 俺はスライムプールに両腕を突っ込む。余分な粘液を吸収しつつ、形をコントロールしていく。スライムは徐々に小さくなり、やがて人の形になった。

「む、身長はもう少し高くして、うーむ、腰のくびれと、胸のサイズと、バランスが難しい……完成しました! どうぞ!」

「いや、どうぞ! じゃないぞ」

「いや、どうぞ! じゃないぞ、じゃないぞ」

 せっかく完璧なスライム娘のボディを作ったのに! 女王様のために!

「貴様のスライムを操る技術の進歩具合には驚かされっぱなしだが、しかしなぁ」

「え? それはさ、動かせないの? 動かしたくないの? なんなの?」

「怖いわ貴様! 分かったよ、やるぞ、やればいいんだろ!」

 よっしゃ! 時間制限無しで! 俺が暴走状態じゃない時に! スライム女王の召喚に成功したぜ!


◆   ◆


「もう一度言っておくが、分離した訳じゃないぞ! 貴様の中の我の意識を眠らせて、こっちの身体を遠隔操作してるんだぞ!」

「スライムむすめー! じょーおーかわいー!」

「聞け!」

 わーい! 女王がスライム娘になってくれたよ! 動くと可愛さ&エロさ増し増しだ! 恥ずかしがる仕草やべぇ!

「じょ、女王様、いかがでしょう、ワタクシの作ったお体の具合は……!」

「ん、流石こだわっただけの事はあるぞ。不具合が一切無い」

 クルクル回って自分の身体を確認するスライム女王。今の女王の身体は、俺と同じくらいの年齢設定だ。美しいスライム少女の透けた肉体が……あ、駄目だ我慢できない。

「ちょ、貴様! 本当にアルラウネの暴走と同じじゃないか! やめ、舐めるなぁ!」

「大丈夫、大丈夫だから、ね? 大丈夫」

「何がだぁ!」

 美少女がスライム娘を襲っている光景である。滅多に見られないぜ? 是非とも客観的に見たかった!

「楽しそうねぇ、『百獣の女王』様。アタシも混ぜてもらおうかしら?」

「!?」

 しかしながら、実際に客観的に見られると、思いの外恥ずかしかったのであった。


◆   ◆


「賑やかだなぁと思ったら、スライム娘なんて作ってヨロシクやってたのね」

 背後から女性の声。その声の主は、まるで宇宙人のような姿をしていた。2mはある高身長に、アンバランスな細い十頭身の身体。人間に似たその身体は全身タイツのような銀色の服で包まれており、女性的なラインが強調されている(巨乳だ)。胸の谷間の辺りにはエネルギーランプ的な青いライトが付いている。戦隊モノのヒーローみたいなマスクには、ハート型のピンク色の目が光る。赤いマントをなびかせて、彼女は俺とスライム女王に近付いて来た。俺はスライム女王に覆いかぶさったまま、耳元で小声で尋ねる。

「女王、この人は……?」

「……ハオン星人、この『方庭』と、我の管理者だ」

 マジで宇宙人だった! というか管理者? え? どんな設定? ヒソヒソ話する俺と女王に、ハオン星人が話し掛けてくる。

「いつまでイチャコラやってるのよ! アタシの話聞いてる!?」

「そ、そうだぞ貴様! いつまで押し倒してるつもりだ!」

 スライム女王が俺を押し返し立ち上がる。俺も続いて立ち上がり、二人はハオン星人と向かい合う。マジで宇宙人か。なるほど。

「……良いなぁ、この全身タイツ感」

「……え? ちょっと何言ってるの『女王』!? なんでそんなジロジロ見るの!?」

 異様に長い腕を使い、マントで自分の身体を隠すハオン星人。照れている様子もまた良いね!

「貴様、宇宙人もイケるのか……」

「女性型宇宙人、戦隊モノの女性戦士、女性型怪人、全てイケます!」

 ジト目のスライム娘も可愛いぜ! いや違う、一旦落ち着こう。まずは誤解を解かねば。

「あのー、ハオン星人さん? 俺は『百獣の女王』様ではなくてですね、こちらにおわすスライム娘様こそが、『百獣の女王』陛下にあらせられますのでありますけれども」

「我が『百獣の女王』だ。こんな変態と間違うなんて心外だぞ!」

 腰に手を当てて胸を張るスライム女王! お、おっぱいが凄い!

「え? それって、どういう状況なのかしら?」

 宝石のようなハート型の目で、俺とスライム女王を交互に見るハオン星人。

「女王、俺も状況が分からないですよ。ハオン星人って何者なんですか?」

 二人の視線がスライム女王に集まる。お、おっぱいが凄い!

「……順番に話すぞ」

 まさか、三度目の説明回なのか……!? 続く!


第十三話:おわり

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