第十一話《だいすきー! じょーおーあいしてるー!》
あれ、俺、どうしたんだっけ? 確か女王と、次はアルラウネに変身するって話して、それで……?
「まったく、貴様って奴は……いや違うな、元は我が悪いんだ、すまん」
声がする方を見ると、白銀の長髪をなびかせる幼女が立っていた。両腕はハーピーのような翼、両脚は魚の鱗で覆われていて、お尻からはトカゲの尻尾が生えている。頭には猫か何かの獣耳だ。キメラ幼女、それは俺が始めに見た『百獣の女王』その姿であった。
って、何で? どうして幼女王が? 分離しちゃったの!?
「肉体的なコントロールはまだ難しいからな、精神的な接触が上手くいって良かったぞ」
なるほど、ここは精神世界だったのか。
それで女王、俺、どうしたんですか? アルラウネになるの、失敗しちゃったんですか?
「いや、『モードアルラウネ』は完璧だったんだが、やはり植物化に慣れていないせいか、ちょっと暴走しててな」
獣耳を伏せ、真っ赤な目を逸らす女王。翼をもじもじと擦り合わせている。可愛い。キメラようじょかわいい。
「なっ、こんな時に何を言ってる貴様! もうっ!」
あれ? 心の声がだだ漏れだ! 精神世界やべぇ!
「はぁ、ともかくだぞ、我が外側をどうにかしてみせるから、貴様は内側で頑張れ!」
わ、分かりました。外側はお願いしますね、女王!
女王の姿が消える。どう頑張れば良いか分からないが、内側で女王の無事を祈る俺!
◆ ◆
「あはははは! あははははははは!」
俺が変身したアルラウネは俺の意志を無視して、あるいは、俺の欲望や本能のままに振る舞っていた。両腕を広げ、踊るようにクルクル回る俺ラウネ。甘い香りが白い部屋に充満していく。床を濡らした花の蜜に足を取られ、俺ラウネは転んでしまう。それに構わず、むしろ喜んで、俺ラウネは蜜でドロドロになりながら床を転げ回る。
「どろどろー、あまーい、おいしー、きもちー」
頭の花から蜜が溢れ出る。むせるような香りに反応して、更に蜜を垂れ流す俺ラウネ。
「うふふ、きもちー、あまーい、うふふ、おいしー、だいすきー」
俺ラウネの気づかない内に、蜜がズルズルと集まっていた。集まった蜜は人型になり、青緑色へと変わっていく。
「はぁ、はぁ、上手く、いった、ぞ」
それは女王であった。俺ラウネの蜜を利用し、スライム娘の身体を作り出したのだ。
「これでどうにか、貴様の身体を、スライム状態に、戻す!」
背後から俺ラウネに近づくスライム女王。しかし俺ラウネがスライム女王に気づく!
「あー! スライムむすめー! じょーおーだー! かわいー!」
「なっ、何をする、貴様、やめっ」
俺ラウネがスライム女王に抱き着き押し倒す。形が崩れ身動きが取れなくなるスライム女王を、俺ラウネが舐める。
「スライムむすめー! じょーおーあまーい! おいしー!」
「くぅ、やめ、どこ舐めて、やめてぇ、貴様……やめろぉ!」
何とか俺ラウネを引き剥がし、距離を取るスライム女王。しかし俺ラウネは怯む事なく近づいていく。
「じょーおーなめるー! おいしーのー!」
「くっ、貴様……いや、そうか、逃げられるよりは良いのか」
ポン、と手を打つスライム女王。スライム女王は両腕を広げ、俺ラウネを迎え入れる。
「さぁ、スライム娘と融合したいのだろう? 遠慮せずに来ると良いぞ! さぁさぁ!」
「ゆーごーするー! スライムむすめだいすきー! じょーおーあいしてるー!」
スライム女王に抱き着く俺ラウネ。今度はスライム女王が俺ラウネを押し倒す。押し倒されながらもスライム女王を舐める俺ラウネ。
「んっ、はぅ、じょーおー、じょーおー、じょーおー」
「ぬぅ、今、元に戻してやる、からなぁ!」
俺ラウネとスライム女王の境目が無くなり、融合が始まる。それにつれて、アルラウネが徐々にスライムに変わっていく。
「きもちー、じょーおー、だいすきー、うふふ、うふふ、うふふふふふふ」
そして、俺ラウネとスライム女王は完全に融合し、アルラウネ娘も完全にスライム娘へと変わったのであった。
◆ ◆
アルラウネの蜜の海の中、正気に戻ったスライム娘の俺は、大の字になって天井を見ていた。
「はぁ、はぁ、女王、ありがとう」
「なに、お互い様だぞ」
「……女王、大好きです」
「我も、嫌いじゃないぞ、貴様のこと」
こうして俺と女王の距離が少し縮まり、そして、俺はスライム化の制御を覚えたのだった。
第十一話:おわり