第九話《最終的に『異形のモノに変身する女の子』みたいな所に辿り着いたんですよ》
「うぁ、ふぁ……凄い、いい匂い」
走り回り汗をかいたケンタウロス娘の俺。その汗の匂いだとか、獣の匂い、女の子の匂いが混ざり合い、何とも言えないメスの匂いが完成していた。
「……」
女王は無言だったが、こりゃ例に漏れずドン引きしているね!
「改めて、この馬の身体が自分の一部ってのが、不思議な感じ」
馬の背中を撫でると、確かに触られている感覚がある。
「ふふふ……」
美少女じゃなかったらアウトな笑みを浮かべる俺に、女王が質問する。
「……貴様、何故そんなに『モン娘』が好きなんだ? 何か理由でもあるのか?」
「モン娘が、好きな理由……話して、良いんですか?」
「……は、はい……お願い、するぞ……!」
聞かなきゃ良かった感が凄まじかったが、良い機会なので話す事にしよう。
◆ ◆
「別に大層な理由がある訳じゃないんですよ。たまたま小学生の頃に読んだ漫画なんですけど、変身ヒーロー物で、主人公の身体がヒーローに変わっていくシーンがあったんです。割とリアルな感じで、主人公自身も、変化していく身体に驚いてて。それを見て、俺もゾクゾクというか、変な気持ちになって。まずは、それが最初」
俺は幼い日の自分を思い出しながら語る。
「次は中学生の時。好きで見てたアニメがあって、それが主人公達がモンスターに変身して戦う話で。その中に、ハーピーに変身して戦う女の子がいたんですよ。そして敵の方にはスキュラ系の女の子もいて。それが可愛かった、というか、中学生だったから、凄くエロく見えて。まぁ今もだけど」
懐かしいあの頃。今に繋がっている日々。
「高校生くらいになると、話すの恥ずかしいんですけど、触手ってエロいなーって、そういうのに目覚めたんですよね。異形のモノに襲われる女の子、とか、そういうのに」
あ、こりゃ女王ドン引きしてるぞー! いやしかし、ここまで来たら最後まで話すぞ!
「そういう積み重ねがあって、最終的に『異形のモノに変身する女の子』みたいな所に辿り着いたんですよ。だからきっと、正確には『モンスター娘』じゃなくて『モンスター娘への変身』が好きなんでしょうね、俺」
自分語りを終えた俺。さて、女王の反応は?
「な、なるほど、いやー、人間って、不思議だな! うん、不思議!」
「ですねっ!」
無理矢理感想を捻り出してくれた! 女王良い子!
◆ ◆
「でも女王! 今の話、美少女ケンタウロスが語ってるのって、逆にアリじゃないですか!」
「ナシです! というかその話まだ続ける気か貴様!」
うむ、あまり自分語りし過ぎるモンじゃないか。
「それじゃ女王、次の変身ですが!」
「……そうか、そうだよな、あとはそんな話しかないよな。次は何にするんだ?」
女王の問いに、俺はずっと考えていた事を言葉にする。
「ラミア、ハーピー、ケンタウロス、そんでスライムと来たら、某モン娘漫画的には次は人魚なのですが!」
「はい」
「人魚は大好きですが! あまり被るのもどうかと思うのであります!」
「はい」
「アラクネやスキュラも大好きですが! ちょっと、いやかなり気になっているモン娘がいます!」
「はい」
「アルラウネって変身できる?」
「はい」
「マジで!」
植物系もイケるのか! よっしゃあぁぁぁああ!!!!!!
◆ ◆
「その前にケンタウロス化を解かないとな。貴様、ラミアの時みたいなヘマするなよ?」
「でも変身解除に失敗したら、また女王、スライム娘になれるでしょ?」
次は写真撮るんだからねっ!
「分からんぞ? 出来なかったら、貴様どうなっても知らんぞ?」
「なんと」
脅しなのかマジなのか分からないが、まぁ万が一の事があってはアルラウネに変身できなくなってしまう。今回はおとなしく慎重にいこう。
俺は馬の身体ごと横になり、下半身をスライム化させる。
「んっ、ふぁぅ」
大分慣れてきたが、しかしこの感覚に慣れてしまうのは勿体ない気がする。ジンジンする下半身をゆっくりと縮めていき、人間の脚を作る。
「これで、よし」
トランクスをはき、眼鏡をかければ『モード俺』の完成だ!
「元に戻るのも上手くなったな、貴様。この分なら『モードアルラウネ』も大丈夫だろう」
「はい?」
女王が何かフラグを立てた気がしたが、スルーしよっと。さぁ次は、いざフラワーガールだぜッ!
第九話:おわり