謝罪
更新…めちゃくちゃ遅くなってすみません。
しかも、3話分消しちゃいました…計画性0で……m(_ _)m
「君は……あの時の中学生なのか……」
昔を思い出していた頭を振り、過去の記憶を頼りに、目の前にいる女子生徒に尋ねる。
「はい……」
右足が痛む……あり得ないのに。
「そうか……君があの時の」
目が覚めた病院で聞いた。
俺が助けに行った少女は無事だったと。
「まさかこの学校に入学してるとはな」
「意外ですか?」
「いや、偶然は怖いな……とな」
目の前にいる女子生徒──喜多村さんがあの時の少女だと分かった。
それでも、俺を訪ねて来た理由が分からなかった。
「で、生徒会長にわざわざ伝言までして何の用だ」
「……」
喜多村さんは無言のまま俺に近付く。
「だから、何のよ──」
「ごめんなさい」
喜多村さんは俺の言葉を遮り、謝った。頭下げ、泣きながら。
「ごめんなさい……」
「……」
この謝罪の意味は分かる。
分かってても、俺は何も言えなかった……。
「許してもらえるなんて思ってません。それでも、一言……謝りたかった……」
「別に俺は……」
「貴方の事を知りたくて、あの時の事をネットで調べて……貴方の名前を見つけた。あの時の事を称賛する記事と……全国高校陸上出場者の名簿に」
そっか……それまで、見られたのか。
「私のせいで……貴方の人生を潰した……」
少女は顔を上げず、自分の罪を告げる。
床には涙の痕。そして、震えて今にも崩れそうなな身体。
「私は貴方に何をされても、文句は言えない」
「おいおい、女の子がそんな事を言うもんじゃねーよ」
俺はどうにかして、この場を和ましたかった。
「別にあれは、君のせいというか車が悪いんだしな」
「……」
何故だろう……あり得ないのに、右足がさっきより痛みを発してる気がする。
「それにほら。今も結構、楽しく高校生活を送ってるんだぜ」
「……」
「ほ、ほら。部活がないおかげでゴロゴロ出来るし」
「……」
「な?だから、顔を上げ──」
「何で優しくするんですかっ!」
少女は顔を上げ、俺に対し不満をぶつける。
「あの生徒会長さんは私に言いました!『あなたのせいで、あいつは変わった』って!私は何をされても文句は言えない程の事をしたんです!」
あいつ……余計な事を……。
「なのに……何で……何で私を励まそうとするんですか!!」
「俺は……」
「その足だって、結局は私のせいじゃないですか!!」
俺は自分の右足を見つめる。人の温もりを無くした右足を。
「私のせいなんです!全て!……全て私の!」
喜多村さんは大声を上げる。
まるで、自分の罪を自分自身に言い聞かせるかのように。
「君は……謝る為に、この学校に?」
「はい」
「そうか……」
俺の方こそ、少女の人生に関わってしまった気がするけどな。
「俺は……」
少女を見る。
真剣な眼差しだ。覚悟が出来てる様に見えた。
「俺は……別に後悔はしていない」
「え……」
俺は目の前の少女に、あの時の事を話しだす。
「あぁ、悔しかったよ。目の前……いや、そこに立ってたんだもの、俺の夢に。全国っていう夢に」
俺は今、少女を追い込んでると思う。
でも、途中で話を辞めようとは思わなかった。
「目が覚めたら、俺の右足はなくてさ。泣いたよ。泣きまくった。お見舞いに来る部活の奴らがウザかった時もあった」
少女は耳を塞ぎ、聞きたくないとイヤイヤと首を振った。
「それでも……それでも、君の意識が戻ったって聞いた時は嬉しかった。自分がやった事は間違って無かったんだって」
「え……」
気付くと、俺は泣いていた。
「君の親が、今の君と同じ様に謝って来た時もあった。それと同時に……『ありがとう』って言ってくれた」
「お父さんとお母さんが……初めて聞いた……」
多分、生徒会長が言ってた様に俺はずっとあの時の事を引きずってたのかもしれない。
でも今……それが、無くなって来ているのが分かる。
「『ありがとう』。その一言で自分の右足の事なんて、どうでもよくなった。右足がどうした。俺は今、生きてるじゃん……ってさ」
「うっ……あぁ……」
少女はとうとう、堪え切れなかったのか声を洩らしながら泣き始めた。
「あぁ、俺は生きてる。なら、やり直せる」
「あぁぁっ……!」
「だからさ……」
俺は少女に近付く。
「もう、俺の事でそんなに泣かないでくれ」
俺は少女を優しく抱いた。
今にも崩れてしまいそうな、その身体を。
次回更新は2〜3日後に。
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