再会
「ねぇ、佐伯。ちょっといい」
「なんだよ……勉強会なんてしねーぞ」
新歓が終わり、週を跨いだ月曜日。
帰りのHRも終わり帰りの支度をしていると、教室に生徒会長が入って来た。
「違うわよ。ちょっと、佐伯に会いたいって言ってる人がいるのよ」
「会いたい……だと?」
これは……あれか。
女子生徒からの愛の告白とかか!
「あ、先に言っとくけど告白とかじゃなわよ」
「……そうか」
俺が希望を持つ前に言って欲しかったな……。
「はぁ……で、その俺に会いたい奴って誰」
「1年生よ」
「1年?俺の知らない奴か?」
俺の知り合いに1年の奴なんていたかな……。
「そうね……会った事はあるわよ」
「そりゃ、この学校の生徒なら会った事はあるだろうよ。そうじゃなくて、話しとかした事あるかって意味だよ」
「会えば分かるわよ」
「誰か教えてくれたって、いいじゃんかよ」
「会えば分かるって言ってるでしょ」
なんだよ……何か今日の生徒会長はご機嫌斜めだぞ。
「はぁ……何で機嫌悪いんだよ」
「別に……いつも通りよ」
「生徒会長は機嫌が悪いと、ブレザーが着崩れするんだよな」
「なっ!?」
生徒会長は慌てて自分の姿を見直す。
「どこが、着崩れて……」
「まぁ、そりゃ嘘だからな」
その反応のおかけで、機嫌が悪いのがよーく分かったな。
でも、その振り上げた拳を下げて欲しい。
「はぁ……とりあえず行くわよ」
「どこに」
「生徒会室」
「なんで生徒会室」
「人がいない場所が希望だったから」
まぁ……用事がない生徒が生徒会室に来る訳ないし、そもそも生徒会メンバー以外で生徒会室に行く奴なんてそうそういないだろうな。
「分かったよ……おーい、仁」
同じ教室で帰り支度をしていた仁を呼ぶ。
「悪いんだけど、今日は先に帰ってくれ」
「りょーかい。勉強会頑張れよ」
「ちげーよ」
どんだけ俺に勉強させたいんだよ。
「じゃーな、亨」
「おう、明日な」
仁との挨拶も終わり、俺は生徒会長の後ろを付いて行った。
「生徒会長はその1年と面識あるのか?」
生徒会室へと向かう途中、ふと思った事を聞いてみた。
「えっと……あの子が入学する前に1度姿を見た。入学してからは、今日初めて直接話した」
「そうか」
そんな特に面識もない相手に何をそんなに怒っているのか。
その1年の話を振った瞬間に苦虫を噛み潰した様な顔をしたし。
「何をそんなに怒ってるのか知らないけどさ」
「だから、私は怒ってな──」
「どう見ても怒ってるだろ」
生徒会長の言葉を遮り、俺は続ける。
「生徒会長の仕事に、陸部の部長。先生からの頼みだの……お前は色々と抱え過ぎなんだよ。だから彼氏が心配するんだろ。メールで色々と聞いてきたぞ、生徒会長の事」
「会長が……」
遠距離ってのは大変だよな。
だからって、事あることにメールをしないで欲しい。
「そっか……会長にも佐伯にも心配させてたんだ」
「そうそう」
流石にこれで、この怒りも落ち着くだ──。
「でも、この事は別」
「……」
どんだけ怒ってるんだよ……。
確かに怒ってる理由は知らないけどさ。よっぽど気に触る事でも言われたのか?
「ったく、何を言われたんだよ」
「別に……何も」
「はぁ……」
こりゃ、あの人が心配するのも分かるな。
人の事には首を突っ込む癖に、自分の事になるとすぐ黙りだ。
「1年の女子なんだよな?」
「うん」
1年の女子か……思い付く人がいな……いや、1人いるな。
喜多村だったかな?妙に引っかかる苗字だし、入学式の後からやけに俺の周りでうろちょろしてる気がするな。
「喜多村って苗字か?」
「なんで知って……知ってても変じゃないか」
ビンゴか。
でも、その子が俺に何の用か全く見当がつかないな。
「俺に会いたい理由も知ってるのか?」
「誰か分かってるなら、佐伯も予想がつくでしょ」
いや、全然予想がつきませんよ。
通り過ぎた時に名前を聞いて、最近俺の周りでよく見るな……ぐらいの情報しかないし。
愛の告白以外に何があるんだよ。
「会えば分かるわよ」
「そりゃ、そうなんだが……」
どんな話なのか事前に知る事が出来るなら、それに越した事はないじゃないか。
「ほら、着いたわよ」
「お、おう」
生徒会長と話してたら、いつの間にか生徒会室に着いていたようだ。
「じゃ、私は行くから」
「部活か?」
「うん」
「頑張れよ。夏の全国大会予選」
「ッ!!……」
「お、おい!」
生徒会長は突然、走り去ってしまった。手を真っ白になるまで握り締めながら。
「生徒会長……あんまし、根を詰めるなよ……」
俺は生徒会長の後ろ姿を見守った。
「ふぅーっと。よし」
俺はドアに手をかけ、そのままドアを開いた。
「喜多村さん……だよね」
生徒会室で1人、こちらに背を向けて外を見ている女子生徒に話しかけた。
「お久しぶりです……で、会ってるんですかね」
女子生徒──喜多村さんは、こちらを振り向きそう言った。
「久しぶりって……俺は君と会うのは……」
久しぶり……この言葉を使うほど前に、俺は喜多村さんとどこかで会っているって言うのか?
「覚えていませんか?」
「俺は……もしかして……」
思い出した……まだ、確証はないけどもしかしたらこの子は……。
「あの時の中学生……なのか?」
「はい」
思い出した……いや、今でも昨日の事かのように覚えている。
去年の8月。夏休みの真っ只中、例年より暑く、セミがうっとおしい程鳴いていたあの日を…………。
次回は明後日、土曜日に更新します。
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