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平穏な高校生活  作者:
5/18

再会

「ねぇ、佐伯。ちょっといい」

「なんだよ……勉強会なんてしねーぞ」


 新歓が終わり、週を跨いだ月曜日。

 帰りのHRも終わり帰りの支度をしていると、教室に生徒会長が入って来た。


「違うわよ。ちょっと、佐伯に会いたいって言ってる人がいるのよ」

「会いたい……だと?」


 これは……あれか。

 女子生徒からの愛の告白とかか!


「あ、先に言っとくけど告白とかじゃなわよ」

「……そうか」


 俺が希望を持つ前に言って欲しかったな……。


「はぁ……で、その俺に会いたい奴って誰」

「1年生よ」

「1年?俺の知らない奴か?」


 俺の知り合いに1年の奴なんていたかな……。


「そうね……会った事はあるわよ」

「そりゃ、この学校の生徒なら会った事はあるだろうよ。そうじゃなくて、話しとかした事あるかって意味だよ」

「会えば分かるわよ」

「誰か教えてくれたって、いいじゃんかよ」

「会えば分かるって言ってるでしょ」


 なんだよ……何か今日の生徒会長はご機嫌斜めだぞ。


「はぁ……何で機嫌悪いんだよ」

「別に……いつも通りよ」

「生徒会長は機嫌が悪いと、ブレザーが着崩れするんだよな」

「なっ!?」


 生徒会長は慌てて自分の姿を見直す。


「どこが、着崩れて……」

「まぁ、そりゃ嘘だからな」


 その反応のおかけで、機嫌が悪いのがよーく分かったな。

 でも、その振り上げた拳を下げて欲しい。


「はぁ……とりあえず行くわよ」

「どこに」

「生徒会室」

「なんで生徒会室」

「人がいない場所が希望だったから」


 まぁ……用事がない生徒が生徒会室に来る訳ないし、そもそも生徒会メンバー以外で生徒会室に行く奴なんてそうそういないだろうな。


「分かったよ……おーい、仁」


 同じ教室で帰り支度をしていた仁を呼ぶ。


「悪いんだけど、今日は先に帰ってくれ」

「りょーかい。勉強会頑張れよ」

「ちげーよ」


 どんだけ俺に勉強させたいんだよ。


「じゃーな、亨」

「おう、明日な」


 仁との挨拶も終わり、俺は生徒会長の後ろを付いて行った。





「生徒会長はその1年と面識あるのか?」


 生徒会室へと向かう途中、ふと思った事を聞いてみた。


「えっと……あの子が入学する前に1度姿を見た。入学してからは、今日初めて直接話した」

「そうか」


 そんな特に面識もない相手に何をそんなに怒っているのか。

 その1年の話を振った瞬間に苦虫を噛み潰した様な顔をしたし。


「何をそんなに怒ってるのか知らないけどさ」

「だから、私は怒ってな──」

「どう見ても怒ってるだろ」


 生徒会長の言葉を遮り、俺は続ける。


「生徒会長の仕事に、陸部の部長。先生からの頼みだの……お前は色々と抱え過ぎなんだよ。だから彼氏が心配するんだろ。メールで色々と聞いてきたぞ、生徒会長の事」

「会長が……」


 遠距離ってのは大変だよな。

 だからって、事あることにメールをしないで欲しい。


「そっか……会長にも佐伯にも心配させてたんだ」

「そうそう」


 流石にこれで、この怒りも落ち着くだ──。


「でも、この事は別」

「……」


 どんだけ怒ってるんだよ……。

 確かに怒ってる理由は知らないけどさ。よっぽど気に触る事でも言われたのか?


「ったく、何を言われたんだよ」

「別に……何も」

「はぁ……」


 こりゃ、あの人が心配するのも分かるな。

 人の事には首を突っ込む癖に、自分の事になるとすぐ(だんま)りだ。


「1年の女子なんだよな?」

「うん」


 1年の女子か……思い付く人がいな……いや、1人いるな。

 喜多村だったかな?妙に引っかかる苗字だし、入学式の後からやけに俺の周りでうろちょろしてる気がするな。


「喜多村って苗字か?」

「なんで知って……知ってても変じゃないか」


 ビンゴか。

 でも、その子が俺に何の用か全く見当がつかないな。


「俺に会いたい理由も知ってるのか?」

「誰か分かってるなら、佐伯も予想がつくでしょ」


 いや、全然予想がつきませんよ。

 通り過ぎた時に名前を聞いて、最近俺の周りでよく見るな……ぐらいの情報しかないし。

 愛の告白以外に何があるんだよ。


「会えば分かるわよ」

「そりゃ、そうなんだが……」


 どんな話なのか事前に知る事が出来るなら、それに越した事はないじゃないか。


「ほら、着いたわよ」

「お、おう」


 生徒会長と話してたら、いつの間にか生徒会室に着いていたようだ。


「じゃ、私は行くから」

「部活か?」

「うん」

「頑張れよ。夏の全国大会予選」

「ッ!!……」

「お、おい!」


 生徒会長は突然、走り去ってしまった。手を真っ白になるまで握り締めながら。


「生徒会長……あんまし、根を詰めるなよ……」


 俺は生徒会長の後ろ姿を見守った。






「ふぅーっと。よし」


 俺はドアに手をかけ、そのままドアを開いた。


「喜多村さん……だよね」


 生徒会室で1人、こちらに背を向けて外を見ている女子生徒に話しかけた。


「お久しぶりです……で、会ってるんですかね」


 女子生徒──喜多村さんは、こちらを振り向きそう言った。


「久しぶりって……俺は君と会うのは……」


 久しぶり……この言葉を使うほど前に、俺は喜多村さんとどこかで会っているって言うのか?


「覚えていませんか?」

「俺は……もしかして……」


 思い出した……まだ、確証はないけどもしかしたらこの子は……。


「あの時の中学生……なのか?」

「はい」


 思い出した……いや、今でも昨日の事かのように覚えている。

 去年の8月。夏休みの真っ只中、例年より暑く、セミがうっとおしい程鳴いていたあの日を…………。


次回は明後日、土曜日に更新します。


感想、批評お待ちしております。


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