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平穏な高校生活  作者:
4/18

新歓

熱のため、投稿が遅れて申し訳ありませんでした。

『やぁーやぁー新入生の諸君!高校生活は謳歌してるかな!』

『まだ入学してから3日しか経ってないって?だからどうした!』


 体育館の舞台の上で2人の男子生徒がマイクを持ち、物凄い勢いで話を続けている。


『今日は待ちに待った新入生歓迎会!略して新歓!』

『この場の成果で今年の新入部員の数が決まるかも!?……え?委員会もある?しらーん!』


 舞台下から注意されたが、男子2人組みは勢いを止めない。


『新入生の諸君!この学校は部活動が豊かだ!』

『どの部活で青春を謳歌するかは、君達次第!』


 男子生徒2人組みは、さらにヒートアップして行く。


『ちなみに、俺達はバスケ部だ!』

『バスケ部に入れば、モテる事間違いなし!』


 フライングをし、部活の紹介をし始める2人組み。


『バスケは体育にもあるから、成績もUP!』

『よし、みんな!今すぐバスケ部に……分かった分かった。俺達が悪かった』


 舞台下から注意されるも、あまり懲りてない2人組み。

 注意していた生徒は諦めたのか、舞台袖へと走って行った。


『では、始めよ……あ、生徒会長……』

『新歓実行委員だからって……調子に乗るなぁぁあ!!』


 舞台袖から出て来た生徒会長によって、男子生徒2人組みの暴走は終了した。




『…………調子に乗るなぁぁあ!!』

「な、なんだ!?」


 教室で寝ていると、体育館の方から罵声が聞こえて来た。


「体育館の方か……新歓で何があったんだよ……」


 罵声の声に聞き覚えがあったが、気にしない事にする。


「んーっと!よく寝た。新歓が終わるのはまだ先だし……どうするかな」


 今日は新入生が入学してから3日目。

 そして、今日は新入生に向けて部活動と委員会の内容を説明する日である。その事を新入生歓迎会、略して新歓と言う。

 この新歓でどれだけ新入生の心を鷲掴みに出来るか、これはどの部活もが目標にしている。


「帰宅部にとったら、暇な時間だよな……本当」


 家に帰っても寝るだけしかすることが無い俺は、今こうして教室で新歓が終わるのを待っている。


「トイレにでも行くか」


 俺はトイレに行くため、教室を出た。





「スッキリした」


 トイレを出て、手をハンカチで拭いていると切羽詰まった声が聞こえて来た。


「おい手島!早くしろ!」

「分かってるよ!くそっ!」


 男子生徒2人はサッカー部のユニフォームを着ながら、廊下を体育館の方へと全力疾走していた。


「セリフ書いてある紙を教室に忘れるとか、なんだよ!」

「悪かったよ!」


 サッカー部の1人が、忘れ物をしたのか……大変だな。

 俺はその2人の背中を見つめ続けた……その背中が見えなくまでずっと……。


「……」


 まだ、未練でもあるんかな……バカバカしい。

 そのまま俺は、教室へと戻らず目的もなく歩き出した。





「あーもう!どうしよー!」

「ん?」


 4階の廊下を歩いていると、とある教室からわめき声が聞こえてきた。

 ただ、この声……どこかで聞いた記憶が……。


「よし!諦めよう!」

「なにを諦めるって」

「い、いえ!何でもありません!……って、佐伯先輩!」


 わめき声が聞こえた教室に入って見ると、そこには見知った顔がいた。


「よ、久しぶりだな。伊波(いなみ)

「え、本当……久しぶりです!」

「なー本当久しぶっ──」

「佐伯先輩だー本物の佐伯先輩だー」

「ゴホッゴホッ……ちょ!くっ付くな!」


 いきなり飛び付いて来たため、むせてしまった。

 俺はいまだにくっ付いてる後輩──伊波 奈々(なな)を身体から引き剥がす。


「むー久しぶりの再会なのにー」

「姿だけなら、見かけるだろ。同じ学校なんだから」

「そうですけど!」


 俺は呆れながら、伊波が座っていた机を見る。


「何をしてたんだ?」

「はい?……あぁ!そうだ、まだ終わってなかった!」


 伊波は慌てながら、椅子に座り机に向かい出した。


「どうした、慌てて」

「新歓の時に使う原稿を無くしちゃったので、早急に作ってるんです!」

「なるほど……だから副部長の伊波が」

「はい〜……部長は新歓の方で生徒会長としての仕事があるので〜」


 そうか……大変だな。


「……」

「…………」

「それ、スタブロだと分からない奴いるぞ」


 伊波が書いている原稿を横で見ていると、つい口を挟んでしまった。


「あっ、そうですよね!流石、佐伯先輩です!」

「陸部の発表はいつだ」

「えーと……最後らへんです」

「なら、ギリギリ間に合うか……急ぐぞ」

「え?手伝ってくれるんですか?」

「可愛い後輩のためだ」

「そんな……可愛いだなんで」

「ふざけてないで、やるぞ」

「はーい」


 俺はそのまま、原稿が完成するまで伊波に付き添った。






「ふぅー完成です」

「なら、早く体育館へ行け」


 新歓が終わる30分前。

 これなら、まだ最後らへんの陸部の番はまだのはずだ。


「佐伯先輩も一緒に行きましょうよ!」

「お前な……」


 その素直な気持ちは嬉しいが……。


「俺の()じゃ、間に合わないかもしれないだろ」


 俺は伊波の頭に手を置く。


「あ……ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」

「ほーら!さっさと行け!生徒会長に怒られるぞ」

「そ、そうですよね!」


 後輩にまで気を使われるとはな……。


「先輩!」

「ん?」


 伊波は教室を出る直前、こちらを振り向いた。


「卒業する前に……1度でいいので、顔出して下さいね!」

「わ……考えとく」


 分かった、と言えなかった……嘘になってしまいそうで嫌だったから。


「ほら、さっさと行け」

「あ、はい!」


 廊下に出て、足を思いっきり動かし体育館へと向かう後輩を、俺は羨ましそうに見続けた……。

作中に出てきた手島君は、短編『バレンタイン』からの登場です。

本当、チラッとでしたけど(笑)


時間は木曜日の11時頃に投稿します。

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