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平穏な高校生活  作者:
3/18

責任

「ほらー、お前ら荷物片付けろー」

「先生はえーよー」


 入学式の翌日。

 高校に入学してから、毎回長期休みの終わった後に来る地獄の休み明けテスト。


「成績に入るから、気合い入れろよー」


 そんな事を分かってるんだよ……俺は気合いを入れ、テストに向かった。





「お、終わった……」


 国数英の3教科のテストが終わった。


「その終わったはどっちの意味なんだ?」

「仁か……そりゃお前……見事に惨敗だったぜ……」

「お気の毒に」


 五十嵐(いがらし) (じん)

 高校で出来た中で1番の親友。ただ、俺と違って頭の出来が違う。


「はぁ……ま!終わった事をうじうじ言っててもしょうがないよな!」

「あ、そうだ。生徒会長から伝言だ」

「いきなりだな……つか、何でお前の口から」

「昨日メアドを交換してな」


 さいですか。


「『私の友人として、赤点を取るような事はさせない。安心しろ』だそうだ」

「うん、ごめん。なんだって?」

「今度から、放課後は勉強会だな」


 なんなんだよ……あの、お節介な生徒会長は……。


「い、いや……別に、赤点とか取ってないし」

「生徒会長は人望が厚いからな。生徒1人ぐらいの点数なら先生に聞けるだろうな」


 プライバシーの侵害だろそれ……。


「ま、享。頑張れ」

「くそぅ……」


 本当……なんなんだよ……。





「あーそうだ」

「なんだよ……」


 教室を出て昇降口へと向かう途中、仁が何かを思い出したのか急に立ち止まった。


「俺、明日の新歓での仕事あるから話し合いがあるんだった」

「あぁ、新歓」


 新歓。新入生歓迎会の略。

 2.3年生が新入生に対し、部活や委員会などを紹介する場。


「つまり、1人で帰れと?」

「すまん!」


 昨日も帰りは1人だったんだよな……。


「どんぐらいで終わるん?」

「そんなに時間はかからないと思うけど」

「そうか……」


 なら、校内をぶらぶらでもするかな……。


「終わったら携帯に連絡してくれ」

「ん?どうするんだ?」

「校内をさまよってる」


 俺は仁にそう告げ、校内をぶらつく事にした。


「生徒会長に宜しくなー」

「会わねえよっ!」


 そうだ……校内で生徒会長とばったりなんて事が無いようにしないとな。

 勉強会なんてごめんだからな。





 どこに行くかな……とりあえず静かな場所にでも。

 ん?あのトイレから出て来たの……。


「ん、奇遇ね」

「生徒会長……」


 捕まった……。


「流石に、出会い頭にそんな顔をされると私でも傷付くんだけど……」

「嫌だからな」


 ふむ、顔に出るほどだったか。


「はぁ……まぁいいや。それより、休み明けテストはどうだった?」


 やっぱり聞いて来たか。


「ま、まぁ……手応えはあったかな……」

「それは良かった。悪かったら勉強会でも開こうと考えていたんだけど、いらない心配だったかな」


 やめて……その、嬉しそうな笑顔辞めて……。


「私がちゃんと……面倒見るから。分からない所があったら言ってね」

「お前……生徒会の仕事に加えて、陸部もあるだろ。そろそろ夏の全国に向けての予選があったはずだし」

「大丈夫。なるべく佐伯の事を優先するから安心して」


 全然大丈夫じゃないし……安心してって意味が分からないし。


「私のせいだもんね。だから、佐伯のサポートぐらいさせてね」


 こいつ……まだ、あの時の事を……。


「はぁ……」


 俺は昨日と同じく、生徒会長の頭をど突いてやった。


「なっ!?」

「別に、アレはお前が責任を感じる事じゃないだろ」


 去年の8月。

 今でも鮮明に覚えている。


「アレは生徒会長が悪いわけじゃない……だから、気にしないでくれ」

「あ、あれはっ──」

「気にしないでくれ」


 生徒会長の言葉を遮り、俺は言う。


「で、でも!走れなくなった(・・・・・・・)のは、私にも原因があるんだし!」


 俺は生徒会長の頭に手を置く。


「ありがとな」


 心から素直に出た言葉。


「勉強……付いて行けなくなったら、頼らせてもらうな」

「……うん」


 生徒会長は頭に手を置くと、大人しくなり素直になる。

 生徒会長の彼氏情報。


「ごめんな」


 きっと、ずっと責任を感じていたんだろうな。

 この短い会話の中で気にするなと言っても、意味は無いだろうけど本当に生徒会長は何も悪くないんだから。


「いつでも頼ってね……」


 生徒会長はそう残し、俺から離れて行ってしまった。


「本当……いい奴だよな」


 生徒会長の背中を見送りながら、俺はそう呟いた。


「…………っと、メールが」


 ポケットの中に入れといた携帯にメールが届いた。


「仁か……想像以上に早かったな」


 いくらなんでも、もう少しかかると思っていた。

 まぁ、早い事に文句はないんだが。


「昇降口で待ってる、ね……りょーかい」


 携帯をしまい、1階にある昇降口へと向かった。


「ん?」


 階段の踊り場へ来た時、何か視線を感じた。

 その方へ顔を向けると、走り去る女子生徒の後ろ姿が。


「あの子確か……」


 はっきりと覚えている訳ではないか、あの後ろ姿は昨日……体育館へと向かう途中ですれ違った1年生に似ている気がした。


「まぁ……同じ学校なんだから……たまたまだろ」


 俺は特に気にすることもなく、仁の待つ昇降口へと向かった。

生徒会長が感じてる責任。今後、何の事かはハッキリして行きます。

分かっちゃう人もいるでしょうけど(笑)


次回は明後日、土曜日に更新します。

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