お出掛け
「先輩!おはようございます!」
「……おはよう」
昨日、喜多村さんと一緒に登校すると約束した事を思い出しながら、喜多村さんと学校へと向かった。
「そーいえば、昨日。伊波先輩から『土曜日は空けといてねっ!』ってメールが来たんですけど」
喜多村さんは、俺にそのメールを見せてくれた。
文字でしかないのに、伊波の元気が伝わってくるのは、ある種の天賦の才なのだろうか。
「土曜日……まぁ、明日なんだけど。俺と光……今の生徒会長な。それと伊波と喜多村さんとで出掛けようって話しになってな」
まぁ、喜多村さんに関しては伊波のせいなんだが。
「先輩と……ですか?」
「喜多村さんの件は伊波が勝手に決めたことだから、予定とかあったら無理にとは言わないけど」
「だ、大丈夫です!全然暇してます!」
「そ、そう……」
ほんと、喜多村さんは元気だな……それと、伊波とこーゆ反応が似てるんだよな。
「先輩とお出掛け……」
「光と伊波もいるけどな」
そこからは珍しく喜多村さんも静かになり、そのまま昇降口で別れた。
翌日。
学校の最寄り駅から2つ隣の駅。そこに、10時集合となった。
伊波1人だけ住んでいる場所が違く、それを考慮して現地集合となった。
「10分前行動という言葉を知らないのか、あいつらは」
只今の時刻は10時12分。
100歩譲って、伊波は離れてるからまだ許すとしても、喜多村さんと光は俺と同じ最寄り駅のはずなんだけどな。
「……」
暇だ。
かと言って、いつ来るか分からないから何処かの店に入る訳にもいかないし。
「あ、いたいた!おーい、センパーイ!」
誰かが来るまでどうしようかと考えていると、駅前に元気な声が響いた。
「……この声は」
声のした方を見ると、手を振りながらこちらに走ってくる見知った顔があった。
「おはようございます!佐伯先輩!」
やっぱりか。
「伊波……お願いだから、大声で人を呼ぶのをやめてくれないか……」
校内ならまだしも、外でこのボリュームで呼ばれると恥ずかしくてたまらない。
「そんなことより!」
「そんなことって……俺の中では、結構重要なことなんだけど」
「どうです!私の服!」
「服?」
伊波に言われ、視線を頭から足下へとゆっくり動かす。
今日は比較的暖かく日差しもあるためか、伊波は薄着だった。下はジーパンタイプのショートパンツ。上は薄いシャツとその上にパーカー。
これをどうか、と聞かれても……。
「うん……まぁ、似合ってると思うぞ」
としか、言えないよな。
「やった!佐伯先輩に褒められた!」
本人が満足なら、それで十分だしな。
「あれ……部長とさっちゃんはまだなんですか?私が最後だと思ってたのに」
「あぁ、そうそう。悪いんだけど、喜多村さんに連絡してくれないか?どーせ、光は年がら年中マナーモードだから、気付かないと思うし」
「了解です!」
これで、何とかなるだろう。
しっかし、本当何をしてるんだか。
「あっ、さっちゃん?今どこー。あ、うん。あー、それは大変だね〜……分かった。佐伯先輩にはそう言っとく」
「喜多村さん、なんだって?」
「それがですね、人身事故で電車が止まってるみたいなんですよ」
「それでか……」
人身事故か……それなら、しょうがないか……ん?ちょっと待て。
「伊波……お前、電車で来たんじゃないのか?」
「え?私は自転車ですよー」
「そ、そうか……」
ま、まぁ……伊波の最寄り駅からなら1時間ちょっとあれば着くしな……不可能じゃないよな。
「……お疲れ様」
「休みの日はどーしても運動量が減っちゃうので、丁度良い運動になりました!」
スポーツ少女の鑑だな。
「それで、先輩。どうします?」
「どうするって何が」
「さっちゃんが言うには、もう少し動くのに時間がかかるみたいって言ってました」
「あー……そうだな」
昼にはまだ早いし、かと言ってここでずっと待ってるのも退屈だし……しょうがない。
「先に、色々回ってくるか」
「え?」
「だいたい買う物の目星ぐらい付けといた方が楽だしな」
そうと決まれば、行くか。
「ほらー、置いてくぞ」
「あ、待って下さい……先輩とデート」
「……はぁ」
出た。伊波がたまになるピンク状態。
そんなにデートしたいなら、早く彼氏でも作ればいいのに。結構、人気あるはずなんだけどな。
「ま、いっか。ほら、行くぞ」
「あっ、はい!」
俺は伊波を連れて、駅前を後にした。
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