作戦会議
「おーい、佐伯。どっか行くのか?」
昼休み。
弁当も食べ終わり、伊波との約束を果たすため教室を出る直前、仁に呼び止められた。
「あー……ちょっと、6組に」
「お、なら丁度いいや。俺も美香に用事あるから一緒に行こうぜ」
「パシられてるのか?」
「あのネタを引っ張るな」
去年の新垣 美香による脅迫事件。
まぁ、蓋を開けらたなんとやら……って感じの事件なんだけど。
「会長に用か?」
「他に、6組の知り合いとかいないし」
俺と仁のいる1組とは、廊下の端と端の距離。
昼休みの騒がしい廊下を2人で歩きながら、俺達は6組へと向かった。
「なぁ……佐伯」
「想像以上だな……」
6組へと着いた俺達は、教室の入り口で立ち止まり顔を見合わせていた。
「会長……どんよりしてないか?」
「してるな」
どんよりし過ぎて、会長の周りに人がいないし。
「な、なぁ。美香」
「あ、仁。どうしたの?」
新垣さんは、話していたクラスメイトに一言入れ仁の下へとかけて来た。
「会長……どうしたんだ?」
「あーっとね……朝からあんな感じなんだけど、理由までは……」
「そうか……佐伯は会長に用事なんたろ?」
「いや、もういいや」
伊波が心配する理由もよく分かったし。
俺は、放課後の事を考えながら教室へ戻った。
「奢るから、好きな物頼んでいいぞ」
「あっ、えと、ありがとうございます!」
放課後。
昇降口で伊波と合流し、駅近くにある喫茶店に立ち寄った。
「見て来たよ……想像以上だった」
「昨日からあんな感じで……」
伊波は、頼んだケーキを口に運びながら昨日の事を思い出し、悲しそうな顔をしている。
「それで、佐伯先輩なら何とかしてくれるかなって……」
「まー……方法が無い事もないが」
「本当ですかっ!」
今ここで、携帯を開き、会長の想い人に連絡すればすぐにでも駆け付けて、元気付けてくれるとは思うけど。
「まぁ、この方法は最終手段だな」
「なんでですか?早く、部長を元気付けてあげましょうよ」
「あー……その事なんだけどな」
俺は大きく息を吸い、言葉を続ける。
「会長が落ち込んでるの……俺のせいみたいなんだよ」
「……はい?」
俺は伊波に、昨日、会長と部活中に話した事を伝える。
それを聞いた伊波は……大きな溜息をついた。
「なんと言うか……佐伯先輩にはもっと、乙女心……いや、こーゆ場合は友達心って言うのかな?」
「何を言いたいんだ?」
「部長が落ち込んでる理由が分かりました……」
今の話しだけで、分かったのか?
「部長も可哀想です……佐伯先輩が鈍感だから……」
「い、いや。俺が悪いのは分かってたけど、それとどう鈍感と関係するんだよ」
伊波は先程よりも大きな溜息をつき、携帯を取り出す。
「あ、部長。伊波です」
「お、おい。なんで電話なんて──」
「はい、駅近くの喫茶店にいるので……あ、待ってるので大丈夫ですよ。では、また後ほど」
伊波は携帯をしまい、俺を見た。
「先輩。ファイトですよ」
「……」
余計な事を……。
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