悩みの種
いつぶりの投稿だ……(汗)
「私の家、こっちなので」
「あ、あぁ……じゃあな」
「今日は……ありがとうございました」
喜多村さんは最後にそう言い、駅前の人混みの中に消えて行ってしまった。
「そっか……喜多村さんの家は駅の向こう側だっけか」
一人になった俺はそう呟きながら、駅前を後にした。
「……ただいま」
家に着き、リビングにいる母さんに帰りの挨拶をいれる。
「おかえりなさい」
リビングにいた母さんは、俺の方に顔を向け言葉を返す。
「部屋にいるから、夕飯出来たら呼んで」
「具合いでも悪いの?薬出そうか?」
「いや……今日はなんか、疲れちゃってさ……」
リビングを出て、階段を上り自分の部屋へと向かう。
「はぁ……」
自分のベットに倒れ込み、大きな溜息をつく。
「なんなんだよ……」
頭の中を占めているもの、それは会長のこと。
きっと、泣いていたのは俺のせいだ……でも、理由が分からない……。
「口に出して言ってくれなきゃ、分からねーよ……」
俺はそうぼやきながら、目を閉じた。
「佐伯先輩」
翌朝。
会長の事を考えながら1人、通学路の駅前を歩いていると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「うん?……あぁ、喜多村さんか」
「おはようございます、先輩」
「おはよう。偶然だな」
まぁ、家は駅向こうって聞いてたし、会ってもおかしくはないか。
「あ、違うんです。待ってました」
「待ってた?何を?」
「先輩をですけど?」
「うん?」
「え?」
駅前で、制服を着た男女2人が見つめ合ってる光景はさぞ面白かっただろう。
見つめ合ってる当人である俺は、頭をフル回転していて大変だけどな。
「えーと……なぜ?」
「先輩と一緒に登校するつもりで……あっ。す、すみません!ご迷惑ですよね……」
「……」
喜多村 幸さんか……謝る為に俺が通う高校に入学し、入学4日目でその目的を果たす……行動力のある子なんだと思う。
それは良い所なんだけど……なんだろう。喜多村さんからは、伊波と同じ匂いがする。
「えっと……何時からここにいたの?」
「7時半です」
携帯を取り出し、時刻を確認する。
液晶画面には8時10分とかかれていた。
「40分……待ってたの?」
「先輩がいつ来るのか分からなかったので、なるべく早くここに来ました」
「そう……」
あれかな。
深く考えたら負けとか、そーゆのなんだろうな。
「とりあえず……学校行こっか」
「はい!」
「ん?佐伯、どうした?」
「……仁か」
昇降口で喜多村さんと別れ、気力を使い切った俺は、自分の机で突っ伏していた。
「なんと言うか……疲れた」
「夜中までゲームでもしてたんだろ」
仁は呆れた感じでため息をつく。
「違うんだけどな……」
仁に続くかのように、俺も大きなため息をつく。
「うん?……おい、お前を呼んでる子がいるぞ」
「……誰」
首を動かす気力すら湧かず、俺は仁に聞く。
「名前は知らないが……女子で元気な子だな。あと、3年じゃないな」
「……」
あぁ……喜多村さんかなぁ……俺から、まだ気力を吸うのかな……。
「はぁ……」
俺は重くなった腰を上げ、俺を呼んでいる子が待つ廊下に出た。
「あっ!先輩!」
「……」
……伊波か。
「なんで、出会い頭にそんな嫌そうな顔をするんですか!」
「もう……許して下さい……」
もう、俺の気力を吸わないで下さい……。
「会長が?」
「はい……昨日の部活終わりから、何だか元気が無くて……」
それ、俺のせいなんだよな……理由は分からないけど。
「なんでそれを俺に?」
「仲良いですよね?」
「あー……うん、まぁ」
「それでですね。何かして上げたいなと思って……」
うーん。
元気がない友達を元気付ける……なら分かるんだけど、元気がない部活の先輩を元気付けるって、普通やるか?
「それ、伊波がやることか?」
「……先輩、部長と会いましたか?」
「いや、今日はまだ会ってないけど」
気まずいから、出来れば会いたくないけど。
「一度、見てみて下さい」
「そんなにヤバイのか?」
「去年の佐伯先輩の時ぐらいです」
「あー」
そんなにか……。
「そうだな……昼休み辺りにでも、一回見てくるわ」
「お願いします」
「今日は……確か部活、休みだよな?」
「はい。火曜日は休みです」
「なら、今日はどっかによるか」
「先輩とですか?」
「元気付けるんだろ」
まぁ……俺のせいでもあるし。
「先輩と……放課後デート……」
「デートじゃなくて、作戦会議な」
伊波って、元気っ子って感じだけど、頭の中は結構ピンクなんだよな。
去年なんかは、伊波と2人で買い出しした時なんかもデートとか言ってたし。
「んじゃ、そろそろチャイムが鳴るから」
「……あっはい!」
「放課後な」
「よ、よろしくお願いします!」
伊波はそう言うと、走って行ってしまった。
「まだ……3年になってから、5日目だよだ……」
充実してると言うか……忙しいと言うか……。
「疲れたな……はぁ」
俺は、チャイムの音を聞きながら教室に戻った。
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