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消失  作者: かわし
4/5

変化

目が覚めると光が部屋に差し込んでいた。


外では鳥が鳴いていた。


なんて穏やかな気持ちなんだろう。


こんな気持ちはいつぶりだろうか?


ベットに横になった状態で伸びをする。



はぁー。



気持ちを整えて一階へと向かう。



母親は起きていて朝食の準備をしていた。



「早くしなさい。学校に遅れるわよ。予言が外れたらただのズル休みになっちゃうんだからね。」



こいつは、、、



こんな時まで家族を気にしているのか?



もっと自分の事でも考えろよ。



しかもなんだ。


朝食の用意?



一日の流れに乗らないと生きていけないのか?



セオリー通りの人間なのか?



ありえない。



しかも予言が外れる期待までしている。



本物のバカだな。



そんな事を考えていると階段を父親が駆け下りてきた。



いつものように出勤用のスーツを着ていた。



あーぁこいつもか。



俺はとりつくろった笑顔を振りまき、朝食を食べ、着替えをすまし、学校へと向かった。



通学は自転車で15分だ。



いつもなら通学途中に同じ学校の生徒に会ったり他校の生徒に会うはずだ。



しかし。



今日は誰もいない。



出勤途中のサラリーマンも、OLも、朝の散歩のおじいちゃんおばあちゃん、ゴミ出しの主婦、いつも走り回ってる子供。


どれもいないのだ。



まぁいたって普通な状況。



むしろ現状を把握していてなお学校に行っている俺の方が充分いかれている。


そのまま誰ともすれ違わず学校到着する。


しかし意外な事に門は開かれていた。


先生達は学校に来ているみたいだ。



呆れた顔を浮かべながら自分の教師へと向かう。



教室に上がるとクラスメイトが一人ぽつんっと座っていた。



教室に座っている彼はとても頭が良い、天才とか神童とか呼ばれている優等生であった。

しかし神童や天才の類には変な奴が多い。



現に彼は変人だ。



とりあえず彼は顔を人と合わす事を極力避けて生きている。



いつもならばもちろん敬遠する相手だ。



だが、今はこいつしか話し相手がいない。



しかも変人通しお似合いかもしれないな。





「よう。」




フランクな感じで話しかけると読んでいた小説に顔を隠しながら本の向こうでおはようと挨拶を返してくる。



「なぁなんで、今日学校に来たんだ?もし、予言が本当だったらもうすぐ、死ぬんだぞ?

なのになぜ?」



次の瞬間俺は純粋に疑問を投げかけていた。



「読み途中の本があったんだ。

これだよ。

しってる?

テルモイ著書の破滅だよ。」



彼は本に顔を隠したまま、本だけを揺すってアピールをしてきた。



「これってさ、地球に類似する惑星がちょうどその惑星の太陽に類似する惑星からのエネルギー光線が途絶えて、その星に住む生物がどんどん死んでいくっていう話なんだよ。

どう?読みたい?」



すごく饒舌に語る彼。



やっぱり変人だな。



顔を遮っている本を見ながら俺は彼にもう一つ質問をした。



「その本の結末ってどんな終わりなの?」



すると、彼はやっと本から顔を離してこっちを向いてくれた。


丸めがねが特徴的でいかにも勉強出来そうなオーラ全開なのだ。


「この話から今後を考えようとしてるならあてにしないほうがいいと思う。

簡潔に話すと二足歩行型哺乳類動物、つまりその星でいう人間に当たる生物は自我を失い皆傷つけ合い殺しあう。

人間がほぼいなくなり、手の指で数えられるほどの人間しかいなくなった時に、太陽の類似惑星からのエネルギー光線が再び降り注ぐようになる。

しかし狂気は止まらず、殺しあう。

最後の一人になった主人公は全身に光を受け、正気を取り戻す。

そして、自分の犯した罪を償うため、今まで手に握っていた刃物を喉元に当てる。

みたいな終わりかたらしい。

ネットのあらすじを軽く読んだだけだからね。

まぁもう読み終えるよ。」


なるほど、あてにならないな。


俺はありがとう、と言葉を残して教室を後にした。


なんだろう、すごくさみしい。


昨日までの高揚感はどこに行ったんだろう?


なんで?


俺はサプライズを望んでいただろう?


わからない。


俺は自分の感情がわからなくなって走り出していた。



自転車の駐輪場まで行き自転車に乗る。



そして急いで帰路につく。


、、、、、ベチャ、、、、、、。



何かか地面に落ちる音と鉄の匂い。


鮮血と本が一冊。


足元には割れた丸めがねが落ちていた。



きっと読み終えたんだろう。



たんぱく質の塊になった彼の横を自転車で通り過ぎた。


不思議と始めて死体を見たはずなのに平気だった。


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