ジェームズの予言
ノストラダムスの大予言やマヤ文明の予言などことごとく外れてきた。
しかし人間はその予言の度に自分の命に向き合ってきた気がする。
だから悪い事ではない気がするんだ。
そしてまた今日新しい予言が発表された。
ジェームズの予言。
ジェームズは宇宙との交流、大地との疎通ができると言われており、全世界注目されている人物だ。
ジェームズの予言は過去4つ出されている。
大規模な地震が2つ。ハリケーン、水害。
しかもかなり細かい予言が特徴的で、日付はもちろん。場所。時間。規模まですべてをいい当てる。
そんなジェームズの予言だ。
かなりの信憑性があると話題の人である。
そして新たな予言。
だか、それはジェームズの口からは発表されなかった。
ジェームズは一通の手紙を残して自分の部屋で亡くなっていたらしい。
その手紙の内容は全世界に衛生放送ですぐに流された。
「親愛なる全世界の兄弟達に私からささやかなるプレゼントをしたくてこの手紙を書いている。
おそらくこの手紙が読まれている頃には私はこの世にはいないだろう。
まぁよく聞いて欲しい。
国によっては時差があるが多くても兄弟達に残された時間は一週間しかない。
一週間後に地球の半径程の隕石が地球に衝突する。
かなりのものそこで即死するだろう。
しかし中には逃げたり、シェルターを作ったりして少しの間生き延びるものもいると思う。
だか、地球は巻き上げられチリにおおわれて太陽の光が届かなくなり、生命という生命が根絶やしにされていく。
チリは三年間以上も地球を覆うだろう。
そして地球はリセットされる。
この運命に抗うことはできない。
私は先に行かせてもらうよ。
さあ後を追ってきなさい兄弟達。
また会おう。」
そして手紙を読み上げたアナウンサーは涙した。
この時おそらく何千人、何万人、いや何億人もがTVの前で肩をおとしただろう。
うなだれた者や、膝まづいて自分の信仰してるものに祈りを捧げるものもいただろう。
それ程にジェームズは影響力があり、世界に絶望を与えた。
家族でTVを見ていた俺たちは皆、口をあんぐり開けていた。
「ふっ、ふっふざけるなー。」
父さんが叫ぶ。
そしてそれまで飲んでいたビールのグラスをTVに投げつけた。
弾けるグラスに顔をしかめる母とウルウルしだす妹。
常人であるならば取り乱すのは当たり前だろう。
しかし今は落ち着いて考えるんだ。
あ、、そうだ。
「すぐにお金下ろしといた方がいいよ。きっと銀行に人が殺到するはずだ。そして銀行は実質、機能しなくなるはずだよ。」
父さんはこっちを見て少し頷く。
「そうだな、感情にまかせるのは間違いだ。」
そうして、父さんは家を出た。
泣き出した妹をなだめるため母は懸命に笑顔をたもっていた。
「ごめん。ショック過ぎる。
自分の部屋に行っててもいいかな?」
母に言うと母はニコッとしてくれた。
部屋は2階なので、一段一段、階段を踏みしてめていた。
そして、部屋に入る。
そして部屋の椅子に座り顔を手で覆い隠す。
もう耐えられない、、
、、
、、
、、
笑うのを。
「わっはっははー。ひーっ。
あはははは。はー。」
ありったけの力で声を最大限に小さくする。
二階に上がったのは他でもない。
笑うのをこれ以上我慢出来ないと思ったからだ。
家族の前で笑ったらきっと頭がおかしくなったと思われる。
それで危険とみなされ自由を奪われたらどうする?
せっかくの一週間が無駄になってしまう。
それだけは避けたい。
俺は、俺はこの世界に飽き飽きしていたんだ。
つまらない高校、とりつくろった友人関係、自分を騙しながら押し付ける恋愛感情、そしてよく見せないとというためだけの偽善。
すべてしなくてもいい。
こんなに楽な事はあるか?
ベッドに飛び込んでまくらに顔をうずめる。
そして顔にまくらを押し付けて喜びを噛みしめる。
こんな時にこんな事を思うのはかなりおかしいと思う。
でも思ってしまうのだ。
生きててよかった。
きっとこれはご褒美だと。
道を外れる事の許されない凡人に向けたご褒美だ。
そして、富豪者への死という名の絶望、貧困者への死と言う名の救済なのだ。
まだ穏やかな世界。
実感がわかないのだろうか?
騒げ、騒げばいいのだ。
共に騒げばいいじゃないか。
抗いたいやつは抗え。
地球の長い歴史の中で人間が誕生してからこれまでほんの少しの時間しかたってない。
わずかなものだ、まさにチリのようだ。
常に地球は、宇宙は、進化を求めてきたのだ。
そして、人間が地球にはびこる時間は残念ながら終わりなのだ。
たったそれだけのこと。
しばらくしていると下でドアの開く音がした。
父さんが帰って来たんだ。
まくらから顔を離し真顔を必死に作る。
それから階段を降りた。
父さんは手に封筒を持っていた。
厚みからして200万くらいはあるんじゃないだろうか、、、
「こ、これでひとまず安心だな。」
妹も少しは落ちつきを取り戻しており、家族にひと時の安堵が訪れた。
「私休ませてもらおうかな?」
母さんがそういうと家族は皆休むことにすると口々に言った。
寝たら現状が変わるかもしてない。
明日になったらきっと何かの間違いだったとTVで流れるはず。
そんな安易な考えなのだろう。
俺は再び自分の部屋に戻った。
きっとこの高揚感が取れない限り寝付く事は難しいだろう。
そう思ってパソコンの電源を入れる。
デスクトップが光を放ち暗闇の一部を明るく染める。
俺の目にはいくつもの情報が飛び込み消えていく。
ネットの住人はとりあえず、ジェームズの予言を叩いていた。
証明出来ないとか、根拠がないとか、子供でも考えられるような事を皆口をそろえている。
そういうやつらは死の恐怖に怯え集まり、現実を直視できない奴らだ。
ネットの住人なんかこの程度だ。
俺は一言書き込みをした。
「どうせ死ぬなら騒いでみろよ。
俺はこの現状を楽しむ。」