プロローグ
絶対領域の愛で作った作品。なお勢いだけはある模様。
多分。
絶対領域。
その四文字の中は、途轍もない可能性と、無限大の夢、それと野郎の欲望が混在している。
あのミニスカートとニーソックスの口ゴムの間にある僅かな肌色の部分。
ミニスカートと絶対領域、それにニーソックスの膝上部分が、4:1:2.5の黄金比でなければ完成しない、正に計算されたチラリズムの極致。
何者もの干渉を受け付けないそこは、正に絶対領域の名に相応しい、桃源郷とも聖域とも呼べる場所。
英知の結晶。
神のみぞ成せる御業。
そこに触れてはいけない、触れることは許されない。
視る。
絶対領域が好きな者に課せられる試練はただそれだけ。
触れたい。
撫で回したい。
ペロペロしたい。
モグモグしたい。
飲み込みたい。
そういった欲を必死に押し殺して生きるのが、どれだけ辛いことか。
正に業。
圧倒的、業。
僧は断食を。
絶対領域は断触を。
それは、一般人には到底理解不能な、絶対領域好きな者だけが持つ絶対領域と言っても過言ではない。
もし触れようものならば、背教者として扱われ、一生命を狙われ続ける身となる。
イケメンだから触れるのが許される?
カップルだからOK?
フザケルナ。
どんな理由であろうとも、触れることは許されない。
人類皆平等。
差別反対。
見る者は赦され、触れる者は殺される。
慈悲なんてものは存在しないし、赦しをこわれても赦さない。
それがイケメンなら尚更である。
イケメンなら尚更である。
……大事なことだから2回言った。
俺だって、今までどれだけ触りたいと思ったことか。
この高校生という青春時代真っ只中なのだから、彼女の1人や2人でも作って毎朝絶対領域を拝んで高揚した気分のまま学校生活に臨みたいものだ。
しかし。
現実は非情である。
彼女の1人や触れることはおろか、生まれつき極悪な目つきの所為で、視ることさえ許されないとはどういうことか。
孔明の罠か、神の悪戯か。
父親の目つきも悪い方ではあるが、それはあくまでも、人よりは少し悪いという程度である。
母親は正反対に、観音様のように優しい目をしている。そして外見の年齢が実年齢に比例していない。
なら誰に似たのかと問われれば、俺は必ずこう答える。
じーさんに似たんだ、と。
実家の方は、常識という定規では測れないところが多々あるので、ここでの説明は控えさせてもらうが、間違いなく俺の目つきはじーさんに似た。絶対にそうだ。
その所為で、今まで散々な目にあってきた。
絶対領域を横目で視るどころか、女子と目が合えば、悲鳴を上げて逃げられる。
私服で街に繰り出そうものなら、警察に職質されるのは日常すぎてもう素直に従うようになった。
モーゼの十戒の如く人が避けていくので、友人を作ることも容易ではない。
だが、それでもいい。
そもそも、三次元で絶対領域を探すということは困難なのである。
存在するには存在するが、それにはメイド喫茶まで行かなければならない。
しかし、メイド喫茶の絶対領域はあくまでも営業用に作られた、いわば人工の絶対領域だ。
それでも満足できる同志たちは満足できるのであろうが、俺は若干しこりが残ったような気分になるだろう。
そして、そんな人工の絶対領域とは対照的に天然物、いわゆる街中などで見つかる無意識の内にできている絶対領域というのは、たいへん希少価値がある。
例えるならば、ただの草むらで伝説級のポケモンを発見したり、課金プレイヤーが何万積んでも当たらなかったカードを、無課金プレイヤーが当てたりと、そんな感じだ。
これまでどれだけの同志たちが、二次元で欲を満たして自分を誤魔化したり、三次元を諦めて二次元に逃げる者が出てきただろうか。
天然物の絶対領域を見つけることはおろか俺の場合、見つけたとしても多分だが、すぐ逃げられてしまう。
0.1%の確率が、俺は目つきの所為で0.01%まで落ち込んでしまったのだ。
だが、それがいい。
ハンディキャップという足枷がある方が、人は燃えるというものだ。そして、見つけた時には激しく萌えるというものだ。
足枷上等。
そんな考えを持っていたからだろうか。
俺が彼女と出会った時に、あんな選択をしてしまったのは。
あの選択さえなければ、今頃こんなことにはなってなかったのかもしれない。
しかし、あの選択をしたから、今があるのかもしれない。
今となっては、もうどうなることでもないのだから、とやかく言うのはやめにする。
結局のところ、俺は必ず同じ選択をしていたのだから、どう転んでも結果は同じになるのだ。
だってーーーー
ーーー彼女の絶対領域が、あまりにも素晴らしかったから。