もう寝たよ、とタヌキ寝入りで誤魔化す。
「あの子達、漸く寝たわ」
部屋に戻った君は己の肩を揉む。
旅行でハシャぐ子供を寝かせるのは骨が折れたらしい。
ふと窓から雪景色を見て、君は懐かしむ目で切り出す。
「ね、あの子達に馴れ初め訊かれたんだけど」
思わずビールに咽せた。
「いい加減、忘れてくれよ…」
君は愉しげだがこっちは涙目。
「あら、女の子は恋バナ大好きなのよ? 気になるのも無理ないわ」
面白がってるじゃないか。
「あのプレゼント、何の冗談かと思ったわ。でも雪が溶けて漸く謎も解けたの」
うまい事言おうとしなくて良いから!
面白くないから!
「あんなにしょんぼりしちゃって。ケーキに仕込むのもハラハラするだろうけど、まさかドラマを真似て指輪をあんなものに入れるとか思わないもの」
この羞恥プレイいつまで続けるつもりだ!
ロマンチックだしバッチリだ! とか思った昔の自分の胸倉掴んで、どこがだ?! って問い質したい。
耐えられず布団に潜り込む。
「ね、私が外に捨てちゃったらどうするつもりだったの?」
君は布団越しにつついて来る。しつこいな。
いつあげたか判らない飴の包み紙だって、君は取って置いてたじゃないか。いつか気付いてくれるって信じてた……とか言えるか!
もうライフ空っぽだよ!
「ねえ」
拗ねた様な声。
「私、指輪受け取ったけど、プロポーズの言葉、貰ってないのよ?」
指輪に気付いて貰えなくて、落ち込んでしまった所為だ。指輪に気付いて貰った時は舞い上がってしまった。
「いつプロポーズの言葉貰えるのか、ずっと、ずーっと、待ってるんだよ?」
ねえ、と君は結婚して子供も出来たのに、未だに揶揄う。
今更あんなこっぱずかしいセリフ言えるか!
……勘弁して下さい……。