零ー幻夜1
全てが幻想的
ひとつは、愛
ふたつは、始まり
みっつめは、狩り
外は秋雨、ただ緩やかに深夜零時の針を進めていく中では、時がとまり、彼女と二人でいるこの部屋が孤独である事を実感させていた。
ランプだけ付けている為、部屋は薄暗かった。
グラスに、テキーラを注ぎ一気にあおった。
今日は、非常に良かった。面倒な仕事も無かったし、ボスからのむちゃな注文も無かった。
だから、こんな早い時間に彼女と会える。
ギターのスタッカートのように、雨は強く大地を叩きつけて行る。
窓辺から見る外の世界は柔らかい、闇夜に浮かぶ外灯はこの街を輝かせていた。
なじみのBERは、客が少ないのか寂しそうに店長はグラスを拭いているのが肉眼でも解る。
珍しく、この街が、優しさに包まれている事を確認すると、後ろから、優しく彼女を決めていた抱きしめキスをした。
「 エリザ.....。」こんな夜に言葉はいらない。
そして、物理的な時間の存在も意味は無い。ただ、愛するものに示すだけでいい。
それが終わると、二人は深い眠りについた。
そんな、幸福な時間も鳴り止まないケータイの着信音によって壊された。
時計の針を見ると深夜3時、こんな時間にお呼びとは厄介ごとでしかない。
足元がふらつきながらも、なんとかケータイを握り締め応答にでた。
「ダンナ夜遅くに申し訳ありません‼チョイと行きませんか」
情報人チャシャ猫事ディヤーブ。
彼の情報の確かさは一目をおかれている。
この街で起きた様々な取り引きから、記事からカットされた事件・事故を的確に知らせがくれるからだ。
しかし、彼はチャシャ猫だ。ようするに、気まぐれである。
彼の手もとに真実があっても、買った商品は真実とは限ら無い。
だから、入念に品定めをする必要がある。
「面倒だな?寝てたとこだし、さっさと今話してくれないか?」
「したらー、明日はついて無いですな。
お宅のでかい屋敷に火を放つバカ垂れがいるみたいですけど。」
「ハッキリ言ってくれると助かる。明日お前の店をぶっぱなして BOSSに怒鳴られるよりはいいんだが?」
いつの間にか、禁煙を決めていたタバコが口元にあった。
紫色の煙が、揺らめき立ち頬を撫でていく。
「わたしゃー、猫なので二股してますよ。
だから、ここで話せませんし、例え私を殺しても死神は仕事が増えたって笑うだけですよ。
やったねー、shi.ha.ha.ha、自分で全てをぶっぱなしたってアメリカンのようなでかい図体が体を抱えて笑うだけですよ。
なんのためかって?そんな他人のトイレを覗くようなマネはよしなさい。
ここじゃ、中から銃が出てくる。
解りますか?こっちは、どっちの懐がでかいかを聞きたいんですよ。
ゆっくり話しましょーよ。夜はまだ深いですから。」
なるほど、要件がのめた。
基本的に、仕事の話しは何かに例えるのようにしている。
死神とは、イカレタ奴の事を指している。
死神と名付けられる程の厄介ごとだ。
しかし、奥歯が引っかかる。何故、アメリカンが関係するんだ?
「あーったよ、早口でその独特のなまりを止めるには明日を焼き払うか、
品物をゆっくり見させて貰うしかないよーだ。clubシチリアーナに来てくれ。」
高くてハスキーな声だ。
確か、彼の名前の本当の意味は違ったはず。
闇から覚めたばかりの頭では難しい話しでしかない。
「さすが、ダンナはもの解りが良い。向かわせていただきます。
窓をごらんになられて下さい、タクシーがあるでしょう、手配しておきました。」
確かに、今夜は長くなりそうだ。
いやはや、二時間書きこんでも.....。
まだ、ここまでか....。
とはいえ、まだ物語りは始まっていません。
幻夜は続きます。