昼食
「はーい。というわけで、これで授業は終わりでーす。昼休みは各々好きに過ごしてください」
入学初日。四限の授業が終わった。
知ってる内容だったが、授業のスピードが恐ろしく速い。これじゃすぐに置いて行かれるな。ちゃんと勉強しないと。
最初二限はホームルームで学園の説明とかをされたが、その後は普通に七限まで授業。
初日からかなりカロリーが高そうだ。
週に六日ちゃんと授業があるし、ある程度の知識は知ってて当然と言わんばかりの授業内容。父や母に聞いた普通の学園とはレベルが違う。
「っしゃ!飯だぁ!!」
昼休みが始まり、デリヴェが爆速で教室を出ていく。
昼食。
この学園では学園食堂で食事をとるか購買で何か食事を買うかの二択だ。
二択とはいえ、学食にしろ購買にしろ食べ物の種類がめちゃくちゃ多いらしい。定期的にメニューも変わるらしいし、食に飽きることは多分無いだろうな。
で、そんな昼食の時間。僕は当然……
「メリーさん、一緒にご飯食べませんか?」
僕はメリーを昼食に誘う。
ヒューと、どっかから口笛が聞こえた。誰だ。
「必要がありませんわ」
メリーは立ち上がり、教室を出ようとする。
「一人より二人の方が楽しいですよ」
僕は素早く歩くメリーについていった。
「食事は楽しむものではございません」
「楽しませますよ」
僕が自信満々に言う。
もちろん、虚勢だが。
「…………」
メリーは何も喋らずに教室を出る。
僕はその後を追いかけた。
メリーが向かった先はやはり食堂。
「何を食べるかの予定とかありますか?」
「ないわ」
「僕もないんですよねー。まず、何があるんでしょう」
「…………」
会話が終わる。
会話ってムズイな。
この食堂はかなり広いが、同じように生徒の数も多い。
A組は上位十人だけだからな。他のクラスの生徒数はかなり多いように見える。
メリーは様々な食堂の看板を一瞬だけ見ると、すぐに歩き出した。
そして、一つの列に並ぶ。
はっや。僕は何を食べたいかどころか何の店があるのかすら理解してないぞ。
僕はメリーの一方後ろをついていき、列に並んだ。
「何にします?」
店員が聞く。
「オムライスで」
メリーが答えた。
オムライス……米を使った他国の料理だな。でも、ちょっと前から公の場で出たりするほどこの国に浸透している。
「何にします?」
僕は目の前に置かれたメニュー表を見る。
うーん、どうしようか……いや、悩んでる暇はない。メリーに置いてかれてしまう。
「じゃあ、僕もオムライスで」
「はいよ」
しばらくして、お盆の上に乗ったオムライスが運ばれてきた。
美味しそうなオムライスだ。特に何を食べたい気分とかじゃなかったしちょうどいい。
僕とメリーは周囲を見渡し、席を探す。
授業が少し長引いたせいで席はほとんど埋まっていた。
どこかに席は……あ。
空いてる。向かい合った二席が。
でもメリーは多分座りに行かないだろうなぁ。僕がうっとうしいからどうにかして一人席に行きそうだ。
なんていう僕の考えとは裏腹に、メリーは僕の見ている席に歩きだした。
え?まじ?
いいの?
そしてメリーはその席に座る。
僕も恐る恐るメリーの正面に座った。
「……いいんですか?」
僕が聞くと、
「何がですの?」
と返すメリー。
……そっか、メリーからしたら空いてる席に座っただけだもんな。僕はおまけでついてきたようなもんだろう。
メリーがオムライスを一口食べた。
そういえば、社交界で初めて見た時もオムライス食べてたな。
「好きなんですか?」
「そうです」
メリーは黙々とオムライスを食べる。
そうなんだ。
食の好みは昔と変わっていないか。
なんか、嬉しくなった。
「覚えてます?初めて出会った時もメリーさんはオムライス食べてましたよ」
「食事中ですわ。喋らないでください」
メリーがまたスプーンを口に運ぶ。
僕もオムライスを一口食べた。
うん、美味しい。
「様々な場でも、食事は楽しむものです。味の感想でも言い合いましょうよ」
メリーは口にあるものを咀嚼し終わり、
「美味しいですわ」
と言った。
……え?
感想、それだけ?
いや、十分だ!自発的に喋ってくれた!これはデカいぞ!
ギリギリなんとか会話ができている気がする。
「美味しいですよね、卵ふわふわで」
「そうですわね」
会話が速攻で途切れる。
え、えーっと。会話ってどうやってやるんだっけ。
思い出せ。昔メリーとどんな会話をしたか。
えーっと…………。
「食べ終わったら風でも当たりに行きません……?」
こんなことを喋った。って言うか、喋ってくれた。
社交界の途中、”夜風でも当たりに行こうよ”ってメリーが誘ってくれたんだ。
僕が言うと、メリーの手が止まる。
「ヒューマ・スノーベル……社交界で何度かお会いしたことがあるお方ですわよね?」
メリーがオムライスの方を見たまま聞いた。
「!」
「はい!やっぱり覚えて……」
「貴方、自身の身分はご存じで?」
僕の手が止まる。
「子爵……です」
「そういうことです。もう、わたくしに関わらないでくださいね」
メリーの手が再びオムライスに動いた。
……そっか。
次席って言うだけで、勝手にメリーに並んだ気になってた。
僕はオムライスを食べながら考える。
子爵と公爵じゃ、身分が違う。
そりゃそうだ。あの社交界は確か同じ地方の人間を集めたもの。本来だったら僕ごときがメリーと喋れるはずがなかったんだ。
漫画内でもメリーはかなり家のことを気にしていたはず。そりゃ、僕なんかのことは知らないふりをするよな。
…………。
それでも、僕は……。
「メリーさんは、僕のことをどれくらい覚えてますか?」
「…………」
メリーは何も答えない。
「僕は鮮明に覚えていますよ。年齢が近いってだけで話しかけてくれて、面白い話をいっぱいしてくれて、可愛くて、緊張してる僕を笑って……そして、笑わせてくれて」
「社交界という大事な場。あなたといると心が安らいだんです」
メリーが最後の一口を食べ終わった。
そして、立ち上がる。
「”学園なので身分は関係ない”この学園の理念の一つで、メリーさんも最初、そう言いましたよね?」
僕は教室で出会った時のメリーの言葉を返す。
「学園内だけだったら……身分とか関係なく、仲良くしてもいいんじゃないんですか?」
メリーはその場から動かない。
「……貴方が何をしようと、私には関係ありませんわ」
そう言い、歩き出した。
……ダメか。
「だから、好きにしなさい」
「!!」
僕は急いでオムライスを平らげる。味なんてもう分かんない。
そして、メリーの後を追いかけた。
「風でも当たりに中庭に行きません?」
「次の授業の予習をします」
「食事の余韻に浸るのは気持ちがいいですよ」
僕たちは食器を返却口に返す。
僕はメリーの隣に立ち、話を続けた。
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次話もお楽しみに!




