入学式
入学の日。
この学園は全寮制で一人一部屋を与えられる。どんな身分の人にも平等に。
学園に身分は関係ないというのが校長の主張だそうだ。
僕は自室に荷物を置き、ため息を吐いた。
後は、メリーに接触するだけ。
僕はベッドに座り目をつむる。
緊張するな。大丈夫、きっとうまくいく。
キーンコーンカーンコーン
鐘が鳴った。
時間か。
入学式が行われる体育館に向かわないと。
僕は廊下に出る。
改めて廊下ひっろいな。
人の流れに身を任せて体育館まで向かっていった。
広い広い体育館では無数の生徒がうごめいていた。
えっと……僕のクラスは一年A組だったな。
どこだ?
体育館を見渡し、案内の看板を探す。
……あった。あそこか、ステージの前の最前列。
一年A組の空いてる席に座る僕。
周囲にはすでに仲の良さそうに喋っている人間が何人かいた。
「よぉ。下級貴族」
そのとき、僕に声をかけながら隣に一人の男が座った。
そして、男は足と腕を組む。
身長が高いうえガタイも良く、金髪で青目。座り方からも態度のデカさが表れていて、どことなく偉そうな雰囲気が漂ってくる。
だが……初手から態度悪すぎる。なんだこいつ。
「えぇ、こんにちは」
一応丁寧に返した。
僕は男の胸のバッチを見る。
なんか、見覚えはあるな。どこの家だっけ。
「俺はフェトム・ラリエル。よろしく」
男、フェトムが言った。
ラリエル……あー、王族だ。
……王族だ!?!?
そういえばゲーム内でも名前聞いたことあるわ。王族じゃん。
通りで態度がデカいわけだ……。
「貴様、新入生全体の中でもかなり弱い。気に入った」
フェトムはそう言い、前を向く。
そっか、ここは王立魔法学園……王族も通うよな。
っていうか、弱い僕をなんで気に入ったんだよ。
そんなことを考えていた時、 壇上から何か圧を感じた。
ピタッと喧騒が止む。
僕が壇上を見上げると、そこには一人の老けた男が居た。
「新入生の皆さん、おはようございます」
学園長先生か。
僕は時計をちらっと見る。
入学式が始まる時間だ。
「今から入学式を始めます」
そして、入学式が始まった。
いろんな人が出てきたり、学校理念の話だったり、どうでもいい話が続く。
だが、僕は入学式で一つ気になるイベントがあった。
それは、主席の挨拶。
「では、主席の挨拶を始めます」
教頭の一言で、壇上の袖からコツコツと革靴を鳴らしながら一人の少女が歩いてくる。
美しい金髪を揺らしながら。
赤い目、白い肌、ふわふわな金髪。
そして、品行方正な歩き方。
全新入生のトップ。
その人物は……
「皆さまおはようございます。わたくしが主席のメリー・トゥメルトですわ。どうぞお見知りおきを」
主席、メリー・トゥメルト。
流石。やっぱりメリーが主席か。
頑張ったけど、届かなかったな……。
いやいやいや。届くかどうかはどうでもいいんだ。結果として僕は特待生になり、メリーの隣に立てるかもしれない権利は手に入れたのだから。
とりあえず、改めてメリーがこの学園に居ることは確定した。
あとは接触をするだけである。
接触の方法は単純だ。成績順でクラス分けされるこの学園なら僕とメリーは同じクラス。
同じクラスで、次席という結果ならば喋りかける資格としては十分。教室で気さくにメリーに喋りかけるだけだ。
「ふん。強者か」
隣で足と腕を組んだままのフェトムが小声言う。気に入らなそうな声だ。
強者が嫌いで弱者が好き……?かなり性格が歪んでいそうではある。
まぁいい。僕の次の目標はメリーの側近のようなポジションになること。
彼女の悪評が広まる前にそれを止める役になり、彼女が嫌われるのを防ぐ。
そうすれば彼女は孤立しない。破滅を遠ざける確実な手段の一人なはずである。
「以上を持って、入学式を終わりにします」
学園長先生が締めの言葉を言う。そして、入学式は終わった。
各々体育館から出ていく生徒たち。
「下級貴族よ。貴様の名前を教えてくれ」
入学式が終わり、立ち上がったフェトムが僕に聞く。
「ヒューマ・スノーベルです」
「スノーベル……やはり下級貴族だな。覚えておこう」
フェトムはその場を去っていった。
僕も体育館を出るか。
長い通路を抜け、一旦寮の部屋に戻って荷物のカバンを取ってから一年A組の教室へ向かう。
これまた長い通路をしばらく歩いて、教室の前に着いた。
最初の目標はメリーの隣の席に座ること。
なにも凝らなくていい。最初は挨拶をするだけ、挨拶をするだけ。
やばい、緊張するな。
こっからは試験とは違ってなにをすれば正解とかがない。
それに、メリーと話すのなんて何年ぶりだ?その時点でなんか緊張するし。
ギィィ
大きなドアをゆっくりと開ける。
席の最前列の中央。そこに、すでにメリーは居た。
他にも生徒は何人かいて、席はたくさんある。が、メリーの周りだけ不思議と席が空いているように思える。
模範のようなきれいな姿勢。
メリーは机に教科書を開き、それを読みこんでいる。
僕はそんなメリーの隣に座った。
大丈夫。計画通りやるだけ。
「お、おはよう」
僕はメリーに声をかける。
「おはようございます」
メリーは僕の顔すら見ずに返事をした。
臆すな。続けろ。
「覚えてる?昔仲良くしてた……」
「静かにしてくださる?わたくしが何をしているかお見えになられていないの?」
冷たくメリーが言い放つ。
……まだ大丈夫。メリーはそういうキャラだっていうのは漫画で履修済みだ。
僕だって最初から仲良く話せるなんて……
「あと、敬語を使いましょうね。初対面ですし。学園なので身分は関係ないとは言っても、最低限のマナーは必要かと思いますの」
正論で突き刺してくるメリー。
まずい、想像以上に言葉が強くてさらに緊張してきた。
けど……
「初対面じゃないですよ。ほら、社交界でお会いしたヒューマ・スノーベルです」
僕が言う。
「ヒューマ……!?」
メリーは教科書を読むのをやめ、バッと僕の顔を見る。
あの頃より大人になった、少し可愛さの残る美しい顔で。
数舜、目が合った。
「……そんな知り合い、わたくしにはおりませんわ」
メリーがそっぽを向く。
この反応……覚えてる、はずだ。
しかし、なぜ覚えてないふりをする?本当に覚えていないのか?
いや、大丈夫。名前は呼ばせた。
ここからだ。
ここから、仲良くなって破滅を防ぐ。
メリーを救うために。
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