表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

プロローグ(第一巻)

"この世界には、上下2つの大陸が存在する。その間を碧斕海へきらんかいが隔てており、それぞれ魔界、人間界と称されていた。

 まあ、こんないかにもな厨二ネームを誰が考えたのか、今となっては知る由もないが、言い得て妙とはまさにこのことだろう。

 上の大陸では、主にホモ・サピエンス――高い知能を持つヒト種が主流を占めている。繁殖力と適応力に優れた彼らは、世界の半分以上をその版図に収め、自らをオアメニー(人間)と称した。結果、ヒト種以外の生物の多くは、キャメロット海峡かいきょう以南の下の大陸への移住を余儀なくされる。この分断状態が気の遠くなるような歴史を経て、最終的に2つの大陸は完全に異なる世界として形成されたのである。

 ってことは、大昔はみんな仲良く一緒に暮らしてたってこと? 異獣の皮で装丁された分厚い書物をめくりながら、思わず眉をひそめてしまう。

 異種族という脅威を失った人間たちは、上の大陸を統一したものの、やがて4大国と無数の小国に分裂した。一方、魔界は力こそが全ての掟であるがゆえ、魔王による中央集権体制のもと、大陸全体が盤石の支配を維持している。そして今からおよそ3000年前、隙ありと見た当時の魔王が、最初の界を越えた戦――第1次異界大戦を仕掛けたのだった。

 両大陸にまたがる千年戦争の口火を切ったこの大戦。当初の3年間、人間連合は互いへの不信感と長きにわたる平和ボケのせいで、ほとんど抵抗らしい抵抗もできず、一時はフレティ領内まで後退、アミスがわ以南の全土を失うまでに追い詰められた。まさにその時、記録に残る最初の――すなわち初代勇者が現れたのである。

 歴史の観察者として、人間という種族を評価するのは、どうにも難しい。彼らは、利己心や猜疑心から絶体絶命の窮地に陥ることもあれば、勇気と信念によって奇跡を起こすこともあるのだから。人間たちは、甚大すぎる犠牲を払いながらも魔王軍の進軍を遅らせ、それによって初代勇者にチャンスを――魔王に一対一の挑戦を挑む、たった1つの機会を、作り出した。

 その戦いの詳細を今、正確に知ることは難しい。ただ、その結末だけが、吟遊詩人たちによって代々語り継がれる伝説となっている。強者を尊び、何物をも恐れぬはずの魔族たちは、初代勇者の前に初めて恐怖を味わわされた。首魁を失った彼らは、最終的に上の大陸から撤退する。その後、魔王を掣肘する存在として、中央教会ちゅうおうきょうかいが初代勇者の遺志と伝承を受け継ぎ、代々、人類の希望たる存在を育成し続けてきた。

 正義と邪悪、そして両世界の最強戦力同士による激突。これこそが、何千年にわたり、勇者と魔王の宿命、というわけだ。"


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ