【1】プロローグ
この国、エリンフォス王国は魔力に魅入られている
それは遥か昔に神を怒らせた際にかけられた呪いだともいわれている
……だが現在は詳細を知る者はおらず、御伽噺として語り伝えられている
エリンフォス王国は魔力の強さにより身分が決まり、魔力が強い者が王となっている
魔力は髪色に反映され、数百年にわたり白の一族――聖魔法が使えるものが国を統べている
王の一族は国の中央に住んでおり、その周りを囲むように魔力がある者たちが住んでいる
つまりは、魔力が無いものは国から見捨てられ、魔力がある者たちに近づく事さえできないという事だ
◇
薄紫色の髪が太陽の光にあたりキラキラと光っている
金色の瞳がエレナを捉えると笑顔で優しく微笑む
病気がちであまり話はできないが、いつも優しい母がエレナは大好きだった
「おかあさま!」
エレナは母の元へ走りぎゅっと抱き着く
すると母は優しく受け入れ、エレナの頭をなでる。白銀の髪の毛がサラサラと揺れる
「おかあさま、なんでエレナのかみは、むらさきいろではないの?」
『あら?毛先はお揃いよ。それにこの白銀の髪もエレナの一部だから私は大好きよ』
「おそろい! エレナもおかあさまだいすき!」
ぎゅっと抱きしめると母が目線を合わせて真剣な顔をして向き合う
『エレナ、私と約束してくれる?魔法を使わず、魔法に頼らず生きていくことを。魔法は必ず呪いを生んでしまうから』
「のろい……? エレナはまほうつかわない! やくそくする!!」
『ありがとう。私はあなたたちの幸せを願っているわ……本当にごめんなさい』
「だいじょうぶ! ちゃんと――」
目が覚めると朝日で部屋が明るくなっていた。
(朝か……久しぶりにお母さまの夢を見たわ。亡くなってから初めてかしら)
首にかかったペンダントを開き、幸せそうな母の写真に声をかける
「お母さま、おはよう。今日も見守っていてね」
母から貰ったピアスと指輪を身に着け、身支度を整えてから部屋をでた