6月14日 将来
聖淮戦まで残り5日。私たちは、着実に準備を進めていた。この前決まった横断幕もこの5日で完成させないといけない。
結 「そっちできた?」
私 「うん」
端から描き始めた横断幕の下書きが完成したのだった。
結 「やったね。これで、後は色塗るだけね」
私 「だねー」
下書きが完成した横断幕に色を塗ったら、どんな感じになるのだろうか?
結 「萌音は、何か考えてるの?」
私 「何が?」
あまり嬉しそうにしない結を見ると、少し不思議な気持ちが芽生えていた。
結 「これからのこと」
私 「これからのこと?」
思わず聞き返してしまう。
結 「うん。大学とか将来のこととか」
私 「何も考えてないよ」
この手の質問にはのらない。たとえ大事な人からの話であっても。
結 「これからのこととか心配ならないの?」
私 「心配ならないかな」
結 「どうしてよ」
私は、書き終えた横断幕を高く持ち上げてみた。
私 「結は、心配なの?」
結 「そりゃあ、これからどうなるか心配だよ」
私 「真面目だねぇ」
結 「どこがだよ」
これからのことを考えるのはあの日からやめた。全部あの時に置いていく。私は、そう考えた。
私 「そう言えば、今日夏目は?」
結 「なんか用事あるみたいだよ」
私 「そうなんだ」
結 「なんか、最近バタバタしてるみたいだよ」
私 「バタバタ?」
たしかに忙しいけど、なんかすることなんてあったっけな?
結 「夏目って、弓道してるでしょ?」
私 「前言ってたね」
結 「弓道や勉強なんかで大変らしいよ」
私 「そうだったんだ」
たしかに、前そう言ってたな。結が習っている弓道は、ここから1時間くらいあるとこだったような気がする。そりゃあ、毎日忙しくなるな。
結 「大学に受かったら、あんまり学校も来なくなるかもって言ってたよ」
私 「そうなの?」
結 「もう先を見てるんだろうね、夏目は」
私 「そうだったんだ」
先を見据えるかぁ。
結 「だから、私も焦っちゃうのよ」
私 「そんな焦らなくていいよ」
結 「なんでよ?」
私 「人生なんてなるようにしかならないんだから」
結 「まぁ、そうだけど」
あんまり納得しない顔をしている。私は、一生懸命今日を生きるしかなかった。




