5月31日 先頭
サッカー部は、後20日と迫った"聖淮戦"に向けて、必死に走り込んでいた。今年の"聖淮戦"は、サッカー部と男子バスケットボール部がポイントと言われていた。当然、どの部活動も負けないにこしたことはないけど、その中でサッカー部にはかなりの期待が押し寄せられていた。今年の聖徳高校は、エースの沢田を筆頭に、宝来や工藤などタレント揃いのチームで簡単に勝てる相手ではないと春助が言っていた。それだけ警戒しているということは、負けたくないという証拠でもある。
玉波「南坂さん、後何周?」
私 「後、5週だね」
玉波「長いな」
先頭を走る春助は、2番目を走る林と大きく差をつけていた。相変わらず、速いな。毎回のことだから、そんなに驚きもしなかった。毎日、春助はできる人。全てのことにおいて、できなければ春助ではなかった。上手くいかない時、彼は、どんな反応をするのだろうか?私が病気であることも、まだ告げてない。もし、告げた時、少しは悲しんでくれるのかな?
私 「私、向こうのボールとってくるから、ストップウォッチ持ってて」
玉波「おっけー」
春助は、さらにスピードを上げているようだ。凄いな。私も、この学校ではそこそこ知名度もあるし、できる人認定だった。しかし、そこから自分を偽るようになり、素の自分が出せなくなった。春助には、そこそこ出せるようになったけど、それでもダメだった。ボールをとって、私は、玉波のところに戻った。
私 「ありがとう」
玉波「おう」
ストップウォッチを再び、受け取り、先頭の春助を見る。
私 「玉波くん、"聖淮戦"勝てそう?」
玉波「どうだろう?春は、勝つための準備をしてるけどね」
そうなんだ。準備をしてるんだ。
私 「玉波くんは、どう思うの?」
玉波「俺は、勝てるイメージがしないかな。ハハハハ」
笑顔で笑ってるけど、凄いこと言うな。
私 「勝てないの?」
玉波「だって、沢田と宝来と工藤だよ?アイツら県選抜の人だよ?」
さっきより目が開いていた。
私 「そんなになの?」
玉波「ああ」
私 「じゃあ、そいつら抑えて勝ってよね」
玉波「それができたらいいんだけどね」
最後の学年。絶対に"聖淮戦"では、勝ってほしいて願っていた。




