ラックの正体
道具屋の仕事を終えた私は呪いの館へと帰宅します。
リズはエビちゃんとデートです。朝の事もあり、気を利かせて二人は帰りを遅らせてくれている様ですが、リズはウッキウキでした。好意をはっきりと伝えられる事は良い事なのかもですねぇ・・・。
うーん、私も見習うべきなのでしょうか?
エビちゃんは相変わらずの美しさで、
「あなたなら大丈夫でしょうが、あまり気負わないで良いですよ?
帰りは少し遅れさせますが夕飯はいつも通り皆で食べましょう♪」
と言っていました。私としてはこっちを見習いたいです。
ラックは別に空気を読んだ訳ではなく、
「あの、今日も仕事終わりにパンの作り方を教えてくれませんか?」
レモがラックにお願いする形で、少し帰りが遅くなるそうです。
レモが空気を読んだ気がします。良い子ですねぇ。
アオイもそれに付き添っている。
つまり、家にはラトと私だけです。
「ただいま」
「おかえりニャ。みんな空気読んでいないんだニャぁ。やれやれニャ」
ラトは嫌そうに、そして猫みたいに気怠そうにしている。猫だけど。
「話、聞かせて貰いますよ?」
「拒否権なさそうだニャぁ。お前は、自分の怖さを自覚した方がいいのニャ」
してますよ?だから、こうして教えてくれる事を疑わずにラトと対峙しています。
全くもって酷い話です。それでも私は、ラトに問いかけます。
「ラックは何者なんです?」
有無を言わさず、端的に・・・。
唯我独尊もいい所ですね。取り繕う事すらしません。
知りたいのです。とても重要な事なのですよ・・・。
「その事だろうと思ったのニャ。まぁいい、隠す理由もないしニャ。でも、
私もトリネコほど詳しく知っている訳ではないから、ある程度は予測も含むのニャ」
ラトは当事者ではなさそうでした。だから、あくまで情報として知っただけ。
でも、それで十分です。出来る限りの事をして、私は彼を知る。
直接に聞かないのは・・・聞けないのは・・・都合よく事を運ぶ為。
私はずるいですね。
本人も知らない情報を、事前に知り優位に事を運ぶ。
決して褒められた事ではありません。でも、それも受け入れて私は進みます。
私は私の判断で、答えを出します。
本当は相談するべきなんでしょうね・・・。
でも・・・。
「構いません。知ってる限りで教えて下さい」
私は至って冷静です。
そしてラトはゆっくりと話し始めました。
「ラックは・・・ごくごく普通の人ニャ。誰よりも普通のこの世界の人間ニャ」
はい?
私はこの言葉の意味を、すぐには正しく理解できませんでした。
私にとって、彼は特別だったから・・・。
神パンを生み出す、食神様に愛された、常識を全然しらない、食神の祠に出入りする、フェリに見守られて、一人孤独に森で育った男性。
出会ったのは、つい最近。ギルドの前で土下座をしていたんでしたね。
それから、たった数日で色々な事がありました、本当に色々・・・。
「トリネコさんの息子さんですよね?」
普通な訳ないのでは?
「ん?ラックは養子ニャ」
え・・・ええぇぇぇ?
「じゃぁ、私とラックは血が繋がってないんですか!?」
よく考えたらラックはどうみても獣人には見えません。人族です。
獣人と妖精族から人族は生まれません。
私はてっきり、トリネコさんが不貞を働いたのかと・・・冤罪ですね。
「あぁ〜、そんニャ事を気にしてたのニャ?妖精族の血が混じるお前がそんな事を気にする必要はないけどニャ」
一般的には知られてませんが、妖精族は近い血統による婚姻や子を授かる事にデメリットがありません。
「普通の子供をトリネコさんが養子にしたんですか?」
なにか事情がありそうですが・・・
「普通だけど普通じゃないのニャ」
「どう言う事ですか?」
「ラックは・・・この世界にはもういないと思われる、唯一のこの世界の普通ニャ」
・・・そういう事ですか。
「ラックは、神の干渉を受けていない『純粋なこの世界の人間』の生き残りニャ」




