案外、上手く行っていると思ったんですけど・・・
あれから世界の仕組みは少し変わりました。
種族の勢力図が完全に変わったのです。
妖精族が圧倒的に人族より強くなった為、精霊の森を各地で侵害していた人々はもれなく報復にあいました。
妖精は無益な殺生はしませんし、物欲もありませんから侵略もしません。
ただ、相応の報いを受けた、とだけお伝えしておきましょう。
各地では、妖精の報復を恐れて争い事が減りました。妖精は平和主義ですから。
あれ?上手くいったのでは?
実際に、とても上手く世界は回っています。
人族の社会も含めて・・・。
諌める者がいない状況で、好き勝手に振る舞っていたヤバイ国も含めた人々は、妖精にボッコボコにされました。
で、ちょいちょい私にフェリが承認を貰いにきます。
『ザイール地方の水精霊の森への生命力譲渡1000の承認をお願い致します。』
水精霊の森・・・どこやねん?
知りませんよ。有り余ってるんですから好きなだけ持っていけば良いのです。
という事で、めくら判でろくに目も通さず承認ポンッです♪
ダメ社長?しらんですよ。多い日には100を越える承認依頼が来るのです。
いちいち読んでいられません。
『〇〇妖精の子供を産む際に強化補助を・・・』とか、
何だったら『おやつの木を作りたいので・・・』とか。
今すぐ作って完成品を持って来てください!と言ってやりましたよ。
そしたら、生まれた妖精が挨拶に来ましたけど・・・。
そっちじゃありませんよ!おやつの木はどうした!?
失敗したらしいです。笑っておりました。
自由な人達ですねぇ・・・。
まぁ、楽しい日々ですよ。まさか世界の采配が、道具屋の気まぐれで決まっているとは誰も思わない事でしょう。
平和になった世界はというと・・・忙しかったです・・・。
妖精は政治を行いません。良くも悪くも自由です。
ヤバイ国がぐっちゃぐちゃになったのを、第一王女のクルセが取りまとめる事になったのですが色々と苦労をしました。本当に苦労しました・・・。
クルセは意外と優秀だったんですけどね。どうでもいいのですが、クルセがエビちゃんに惚れている気がします。リズの鉄壁ガードで今もわちゃわちゃと楽しそうにやってます。
アオイにも色々と秘密があって、案の定と言ってはあれですが色々あって、
今は呪いの館に住んでます。ちなみにクロエはトール隊長といい感じです。同い年くらいだと思っていたクロエは実は十も年上でトールさんと歳が近かったのです。
一番驚いたかもしれません。
領主アレス様は国王アレス様になりました。
世界の中心に近い街ソボック。街として独立し続けるのは限界でした。人口も増えていましたし。ヤバンの街はヤバイ国から切り離されてソボックと統合、というよりは吸収されましたし、妖精の加護を受けて街はモリモリ発展しています。国になるのは必然でした。
トリネコさんが統治するブラン国との兼ね合いも簡単ではありませんでした。
派閥問題はどこにでもあるものですね。
そこでも英傑アレス様は無双していた様です。
そろそろアレス様が過労死しないか心配です。
領主の娘から王女にランクアップ!したモニカ様はたまに孤児院に遊びに来ています。とてもいい子です。ツクヨミに守護させています。
神竜の加護を持つ少女として伝説と化しています。
その辺りでも一悶着、二悶着・・・色々ありました。
今となっては、ツクヨミはソボック国の象徴として根付きました。
私に対して、どうしても敬語をやめてくれません。周りの目があるのでやめて欲しいです。私はひっそりと暮らしたいのですよ・・・。
トリネコさんとは、なぜか未だに顔を合わせていません。
何故かすれ違います。何やら運命の様なおかしな力の作用を感じます。
これに関しては未だに不明です。ラックの事も色々聞きたいのですが、
どうやってもつかまりません。そろそろ、物理で捕まえてやろうかと思う程です。
レモも呪いの館で過ごしています。
最初は妙にラックがレモによそよそしかったのですが、レモがアオイといい感じになり始めてから随分とお兄さん風を吹かしています。微笑ましいです。
「アオイを振り向かせたい?そうか、なら一緒にパンを焼こう」
パンの焼き方を教えていました。間違ってますよ?それ。たぶん・・・。
でもレモが焼いたパンを食べてアオイは滅多に見せない可愛らしい笑顔を見せていました。あれ?ラック凄い。私、女子力低すぎ!?
相談されたけど何の力にもなれませんでした。
あとモニカ様にレモの事をよく聞かれるのですが大丈夫でしょうか?
私に聞かれても困りますよ?パン、焼きます?
・・・
妖精族がわらわらと集まって来て『聖霊樹の森』は妖精族の国になりました。
森の名前を決めてくれと言われて、また大喜利大会に・・・。
「パンの森」
「却下!」
「罪人リズの森」
「やめて下さい、後世に汚名を残す事になりますぅ・・・」
「ピュアの森でいいじゃないですか?」
「却下です!!」
精霊大樹をクプラと名付けて『クプラの森』となりました。
私の名前『Pure』とラックの『Rack』を混ぜたアナグラム。
私が恥ずかしそうにしていると、リズとエビちゃんがニヤニヤ、ニヤニヤと・・・。
妖精の国は私達、呪いの館の六人の名前の頭文字。
『ピュア』『ラック』『リズ』『エビル』『レモ』『アオイ』で
『エレ・リピアラ』となった。
うちのおかんらしい現妖精王とも会う事になった訳ですが、
それも色々と大変でした・・・。
・・・
なんだかんだと大変ですが、私達は今まで通り・・・
いえ、今まで以上に賑やかに楽しく過ごしています。
「おはようございます♪今日のパンはなんですか?」
朝は六人集まって食べるのがこの『呪いの館』のルールです。
ダイジェストの様にお送りしたここ最近の出来事。
本当に色々とありました。でも、私達は変わりません。
「パンを四角くふっくら焼く方法を編み出した。しかし、これはレモとアオイがいないと無理だった。俺は道具に触れられないからな」
型枠をアオイが作ってレモがそれを使って焼いたらしいです。
生地はラックが作ってます。つまり・・・超美味しかったです。
「何これうま!?」
「俺も衝撃だった・・・パンの可能性はまだまだ無限だ!」
ラックがはしゃいでいます。パンの事になると・・・。
思わず笑ってしまいますね。
「ピュアの野菜スープも相変わらず最高だな」
ラックのパンに比べれば、普通なんですけどねぇ。
「何でそんなに、その野菜スープが好きなんです?」
何の気なしに問いかける。
「ピュアの事が大好きだからだ。何度も言ってるだろ?」
また・・・この人は・・・。
しかし・・・ラックの表情は・・・とても真剣でした。
「そろそろ逃げるのはやめにしたらどうです?」
・・・
リズが少し冷たいトーンで言いました。
嫌な空気が流れます・・・。
・・・イラッ!
リズのくせに!という言葉が喉元まで出ました。
「今ここでみんなの前では、言えませんし言うべきではないでしょう♪リズも落ち着きなさい。でもピュア、そろそろしっかりと考えてあげてもいいんじゃない?」
エビちゃんが優しく微笑みながら・・・諭されてしまいました。
逃げている・・・?私が?何から?
・・・ラックから。
「すまない。こんな空気にするつもりはなかったんだが・・・。空気が読めないのはなかなか治らない様だな」
ラックが下手くそなジョークで苦笑いをしていた。
随分と表情が出て来た気がするのですよ。
笑ったり・・・する様になったんです。
ずっと見てきたから、彼の変化がわかります。
そう、私は彼を・・・よく見てきた。
ずっと、見ていたんです・・・。
だからこそ、向き合わないと・・・。
でもその為には、まず・・・知らないといけない事があります。
それはきっと・・・ラトが隠している事。
「ラト・・・後で話があります」
私はラトに呼びかけます。
すると・・・ラトが二匹に増えていました。
・・・
え・・・ええええええぇぇ・・・?
「なに増えてるんですか!?大事な場面で何をアホな事を!」
「え?なんのことニャ?ってお前だれニャ!?」
真横にいるのに気づかなかったんですか?
ラトにそっくりな茶トラ猫。
ただの猫・・・では、なさそうですねぇ・・・。
「はじめまして、ママ♪」
・・・
「ラトの子ですか?」
私は大混乱の中、ラトに問いかけます。
「いえ、ピュア様の子です」
猫の影からヌッと顔を出した妖精が言いました。
・・・
意味わからんですぅ・・・。




