創世の瞬間
レモの可能性については無視する事にしました。
現状、無害そうですし♪
それに、なんとも庇護欲が止まらんのです。
「ちょっとかまいすぎじゃないか?」
お?ラックが珍しい反応をしていました。
色々とレモの面倒を見てあげていた訳ですが・・・。
無表情に見えますが、一緒に住んでいると色々と分かる様になるものです。
もしや・・・嫉妬!?いや、まさかねぇ♪
少し歩くと、小高い丘の上に辿り着いた。
森を抜けて景色が広がる。崖になっていて、丁度、ヤバンの街とソボックの街の中央あたりに広がる平野が一望出来ます。
気持ちの良い強すぎない風が吹いていました。微かに草と土の匂いがします。
日差しが暖かく、視界を遮るもののない景色から開放感に満たされます。
明るく、いつもより色が鮮やかに見えました。
私が思っていた以上に、私は呪いに囚われていたのかも知れませんね・・・。
これほどに清々しい気持ちは未だかつて感じた事がありませんでした。
『生きていてよかった・・・。』
心からそう思った。そう思えた。
・・・それが嬉しかった。
・・・
「お昼にしましょう!」
私は高らかに宣言します!この景色を見ながらサンドイッチを食べる!
その為に来たのです。その為に龍を倒した訳です!
ピクニックってこんなに大変なものだったのですね。
初めてでしたが、驚きました♪ってそんな訳ないでしょうが!
なんで近くの丘にピクニックに来ただけで神龍を退治して捕獲して100人斬りを眺めて邪神降臨。神竜を仲間にして名前つけて魔王の子供候補を拾わないといけないのニャ!?
意味わからんのニャ!
しかし、ようやっと目的のサンドイッチにありつけました。
いや、もちろん覚えてますよ?究極生命魔法を使う為に来たのです。
私は、お昼ご飯を食べながら、みんなと楽しくおしゃべりをしながらも術式の準備を始めていましたし。
「ん〜たまごサンド最高です〜♪このパン、神パン使ってますね!もぐもぐ」
丁度、術式の為に生命力が減っていたので補充をします。
「美味しそうに食べてくれるから、俺はピュアが好きだ」
おぉっふ。この人はストレートにこういう事を言うので、不覚にもときめいてしまいますよ。弟君なんですけどねぇ。彼には伝えていませんが。
「実際に美味しいですから♪デブ猫さんになったらラックのせいですね。もぐもぐ」
しかし、この術式に必要な生命力は異常ですねぇ。私以外に使える訳がない気がするのですが・・・。
「その時は、俺が責任をとる」
ぐふぅっ!こやつは狙ってやっているのでは?リズもいませんからツッコミ不足です。エビちゃんはと言うと・・・ニヤニヤしながらこっちを見ていました。
レモは・・・パンを食べて泣いていますね。
ラトは・・・あ、術式に気付いた様です。
「おい・・・あれはなんニャ・・・?」
平原の上空に練り上げた術式の魔法陣。
使用する生命力はまさかの十万!私の人外の生命力を持ってしても3回、神パンを食べて全回復する必要があります。常人の生命力は三百程度ですよ?
つまり333人分の全生命力を注ぎ込む必要があります。
こんなの誰がやると言うのか・・・あ、私ですね。
「究極生命魔法『生命の樹』の魔法陣ですが?」
あれ?ラトは知ってたと思ったのですが?
ほぼ準備は整いました。おかげでパンを3個も食べてしまいました。
美味しゅうございました♪太ったらラックが責任とってくれるらしいですし。
「100倍にゃ・・・」
ラトが青い顔をして溢しました。
「なんですか・・・あれ?あんな魔力の塊、見た事も聞いた事もありませんよ?」
エビちゃんも魔法陣に気づいた様で、青ざめていた。
十万の生命力の塊ですからねぇ・・・。
三百人の軍隊を超える生命力の結晶です。しかも魔力変換していますから、その威力たるは一国を容易に消滅させるかも知れませんねぇ。
全く、何と効率の悪い魔法なのやら。
「で、100倍ってなんです?」
ラトがなにか言っていた気がします。
「あれは、1000の生命力を使い大地のマナを吸い100倍である十万もの生命力を持つ精霊大樹を生み出す魔法ニャ!!それを初めから10万も注ぎ込むなんて・・・お前はアホにゃ!!」
え・・・。ええええ!?妖精に生命力を分け与える究極生命魔法『生命の樹』。これを使って妖精の勢力を補助して妖精達に全部なんとかして貰おう、と言うのが私の作戦だったのですが・・・?
「だって、あの魔導書には、そんな事書いてなかったですよ!?私、一度読んだら絶対に忘れませんから間違いないです!」
そう。私には完全記憶の魔法があります。それをほぼ常時発動しているのです。
間違うはずがありません。
「いや、私も同じものを読んだのニャ。それこそ間違うはずが・・・あっ・・・」
何かを思い出した様にハッとした顔をするラト。
何か知っていますね?
「そう言えば一昨日の夜・・・お前の部屋に忍び込んだアホがいて、魔導書を落として栞を挟み直したのニャ・・・」
そいつが犯人じゃないですかぁ!!?
栞が間違っている何て想像もしませんよ!数ページ飛ばした所が運悪く、生命力を100倍にする記述だったのでしょう・・・。そして奇跡的に文章が違和感なく繋がり・・・今、私達の眼前には十万の生命力の塊。
「あれ・・・もう止められませんよ?今止めたら暴走して大爆発、下手したらソボックもヤバンも消滅するかも・・・」
「なんて物騒なモノ生み出してるのニャ!」
「悪いのは侵入者です!なんで黙ってたんですか?と言うか誰ですか!?」
ラトは遠い目をしていました。
いや、その目線の先には・・・ソボックの街、のちょっと手前。
・・・リズですね。
何が起こるか想像も出来ませんが・・・全部リズのせいですね。
「もう、撃ちます。そろそろ限界ですし、暴発させるよりは安全な可能性が高いです」
もう堪えきれませんし、上手くいけば効果が100倍なだけで予定通りに上手くいくかも知れません。千万の生命力を秘めた精霊大樹の森ですかぁ・・・。
三万人分以上の生命力。妖精族はもれなく、人族の筆頭魔術師以上の魔法知識を要します。文字通り一騎当千の存在なのです。それが山程・・・。
世界の勢力図がひっくり返る所か大回転しそうですね。
「いきますよ!」
【究極生命魔法『生命の樹』!!】
この日、世界の構造は・・・創り変えられたのです。




