ラックのパーン!
エビちゃん無双の後、死屍累々の惨状を目の前にして、
私達はこの状況をどうするかについて話し合いを始めました。
「半数の五十人は良い人っぽいですし、ソボックで普通に働いて貰いましょう♪」
リズが隊長と思しき人物に事情を聞き、そのままソボックの軍として働いて貰うのが良いと判断しました。練度も高く、正義感の強い人達が集まっている様ですし色々と都合が良さそうです。
特に隊長さん、なんとガルブより強いらしい。
エビちゃんが言うのだから間違いないのでしょう。
名前はトール。ガルブと一緒に英雄の肩代わりをして頂き、私達の行動、功績の身代わりになって貰う算段となりました。
今回の行動も実際、英雄の働きでした。彼がいなければ真っ直ぐ邪神龍が飛んできていて、ソボックの街に被害が出ていた事でしょう。
グッジョブです!
ついでに、ガルブと一緒に邪神龍を退けた事にして英雄になってもらいましょう♪
「じゃぁ、あとはリズ宜しくね」
私はリズにぶん投げます。
「え・・・?私の楽しい楽しいピクニックは?たまごサンドは!?」
いや、だって適任ですし。このまま百人を連れて自首させる訳にも行きませんから、誰かがちゃんと案内してあげないといけません。
丘の上まで百人でピクニックなんて、もっとあり得ませんし。
「また今度、改めて行きましょうね」
エビちゃんも色々と察して、リズをなだめる。
「う・・・うぅ・・・。確かに私が色々と処理しないといけませんねぇ・・・」
リズは涙ながらに百人を引き連れて拘束しながらソボックの街へと戻っていった。
精鋭部隊五十人をものともせず拘束、無力化して引きずっていくその姿は、
リズも大概に人外である事を示していました。
・・・
「さて、後はこのトカゲをどうするかですねぇ・・・」
そう、邪神龍です。拘束して放置。という訳でにもいきません。
どうやら、ラトの・・・というかトラネコさんの知り合いの様ですし・・・。
その時でした。
「貴様さえ何とかすれば・・・油断したな!」
邪神龍ケイオスなんとかさんが強力な魔力を私に向けて放った。
私は完全に油断していました。
邪神龍は口から瘴気を固めた凄まじいエネルギーの集合体を私に向けて撃ったのです。
それは、人を容易に消滅させる、それどころかこの辺り一体を死の大地に変える程の威力でした。さすがの私も・・・
防御姿勢も間に合わず、死を覚悟したその瞬間・・・
『パーン!』
私の目の前にはラックの背中がありました。
「余計な事をしたか?」
ラックは振り返り、いつもの無表情で問いかけた。
「いえ・・・。ありがとうございます♪」
うちの弟は・・・なかなかに格好良いですね♪
そして、ラックは真っ直ぐに邪神龍のもとへ歩いて行きます。
「なんか知らんが、ピュアに歯向かっても無駄だ。諦めて謝ろうな」
ん〜。ん?なんだか相変わらずズレていますねぇ。
ラック的には、未だに邪神龍は巻き込まれた可哀想なトカゲの様です。
『パーン!』
あれ?瘴気の様なモヤにラックが触れた瞬間、黒いモヤが消滅しました。
更に、気にせずラックは近づきます。
「き、貴様なにものだ!?我の必殺のブレスを消滅させて瘴気すら・・・」
邪神龍様が怯えていらっしゃる。拘束で動けませんし、もうブレスも撃てない様ですね。ラックはそのまま近づき・・・告げました。
「パン、食べるか?」
食べないと思います。
・・・
そして、黒いトカゲさんの肩にそっと手を置きました。
すると・・・
『パパパーーン!』
邪神龍が身につけていたいくつかのアクセサリの様な貴金属類が弾け飛びました。
「あ、すまん・・・あれ?でもなんで直接触れてもいないのに・・・」
ラックは申し訳なさそうにしていると・・・邪神龍が身に纏っていた瘴気が消滅し、放っていたおぞましい気配が消えていきました。そして、一人の騎士と馬を吐き出し体躯が二メートル程に縮み拘束が解かれたのです。禍々しい気配は消え、そこには黒く美しい竜の姿がありました。
「お?戻ったみたいだニャ」
ラト・・・何か知ってますね?とりあえず締め上げましょう。
私はラトを抱えて、ギュッとします。
「さぁ〜♪尋問はお好きですか?」
にこやかにラトの耳元で囁きます。
「ニャ!?にゃあああああ!ちゃ、ちゃんと話すのニャ!だから何もするニャよ!?」
・・・怯えすぎじゃないですかね?




