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リズの思惑

 正直言うと三人を巻き込むつもりはありませんでした。

 これは、私のミスでしたから・・・。


 まさか、これ程に妖精族の力が弱まっていたなんて思いもしなかったのです。

 ヤバイ国はヤバンの街を中心に、妖精の森を切り拓き勢力を上げていました。

 この為、妖精族は激オコでした。


 そこで、我々は妖精族と手を組みヤバイ国への正当な報復とする算段だったのです。しかし、妖精王は動けなかった・・・。


 他でも妖精族の弱体化に気付いた者達が森を侵蝕していたのです。

 妖精族の力が弱まる事は世界のバランスにも関わる。

 それを何とかする為に、妖精王は走り回っているらしかった。


 こうなると、妖精族の恩恵は少ない。

 近くの妖精の森の住民達と同盟を組めたが・・・。

 しかし、戦力差はまだ埋まらない。だから、私が出る事にした。

 

 私の加護は、死神様の加護【超強】。超強ってなんですかね?

 三人ほどではありませんが、私の加護は生命神様の呪いも相まって最強レベルです。そして、これによって得た称号『死霊魔術師ネクロマンサー』。

 代償がない訳ではありません。

 使う程に私の存在は薄くなっていきます。


 皆が私を忘れてしまうかもしれなかった。


 しかし、今回の件は私が招いた事。

 それで丸く収まるならば、と思っていたのですよ?


 しかし・・・


「あなたは本当にアホですね」


 全てを話したらピュアに一蹴されました。

 酷い・・・けど堪りません♪


「さっさと話せば、私がすぐに全部なんとかしてあげたんです」


 ピュアえもん、流石にそれは言い過ぎでは?

 エビちゃんがいればヤバン街の冒険者集団による進行は一人で蹴散らすかもしれません。それ程にエビちゃんは強い。

 しかし、それはエビちゃんの大量虐殺を強いる事になります。

 それはさせられません。


「私が怒っているのは、相談しなかった事です」


 ピュアはまだ怒っています。きっと、昔の事も言っているのでしょうね。


「文字通り『私が』なんとかしてあげますよ♪」


 え・・・一人でやるって事?


「丁度いい魔法があるんですよねぇ。トラネコの図書館で見つけた魔導書なんですけど、今日明日中にマスターするので明後日には解決ですね♪」


 いやいや、ご冗談を。恋愛相談だってもう少し時間をかけて解決を目指しますよ?


「揚げパンを用意して待っているがいいですよ!」


 ピュアはちょっと得意げです。あぁ、ピュア可愛い。


 と言うか・・・


「揚げパンを用意するのは俺なんじゃないのか?」


 ラックが呆れて言う。確かにそうですね。私、食べれないのです?

 それはちょっと残念過ぎます・・・。絶対、美味しいやつじゃないですか!

 といいますか、一国の一大事が揚げパン一個の問題に早変わり。

 これだからピュアは・・・ピュアは・・・


『最高なんですよ。』


 この子にとっては、国の一大事も、私との勝負も同じなんですね・・・。

 

「どんな魔法なんです?」


 エビちゃんが言いました。この人はいつも全体を見ています。

 この問題を解決する魔法の様な魔法。そんなモノ、存在するのでしょうか?


「ん〜、失敗したら恥ずかしいから今は内緒です♪」


 ピュアが可愛く誤魔化していました。

 こら!相談うんぬんの話はどこにいったんです?

 私の感動を返してください。


「目立ちたくないですし、身代わりが欲しいですね・・・そうだ!昨日、面白い人の治療をしたんですよ」


 ピュアが隠れて街中の人を回復していたのは知っていました。

 そして、ピュアが話したその人とは・・・『ガルブ』。


「彼を英雄にして、妖精族を率いて全部、解決した事にしちゃいましょう♪」


 ピュアが滅茶苦茶な事を言っています。

 本当にこの子はめちゃくちゃです。


 メチャクチャに・・・格好いいです。

 一通り、事情を聞きました。確かにとても都合の良い人でした。


「へぇ〜、ん?その名前、聞き覚えが・・・。うん、面白そうですね♪私もちょっと改めて見定めたいですが・・・」


 エビちゃんは興味を持ったらしく微笑んでいた。

 エビちゃんが眩しい!この人の器は本当に大きい。

 だからこそ憧れました。鑑定を駆使して知った彼の本質は・・・調和。


 全てを繋ぐ、緩衝材になる事を望む。今は冒険者ギルドを支え、街を支え、ウツクシス国とブラン国、ひいてはソボックの街を繋ぐ。


 彼こそが英雄なのだと私は思う。


「巻き込むお詫びにパンでも持っていくかな・・・」


 ラックが明後日な事を言っていました。

 でもラックがピュアを救い、ピュアがエビちゃんを救った。

 私の事はピュアが救ってくれた。


 始まりは・・・きっと間違いなく彼だ。


 彼から始まった。


 彼のパンが全てを解決する。しかし、彼のパンはただの生命力を回復する超絶美味しいパンです。きっと、彼とピュアの出会いこそが奇跡だったのでしょう。


『それが、まさか・・・あんな事になるなんて思いもしませんでした。』


 その日、ガルブは領主邸に現れる事となります。

 彼が来る事は事前に察知できたので私は領主邸で彼を出迎えました。


・・・


 ガルブが来る前の話。

 領主様には今回の件、ピュアが明後日、解決すると伝えた。


「さすが豪気だな!俺は彼女に何を礼として渡せばいいんだろうなぁ?」


 領主様は笑っていました。

 娘の命を救ってくれて、街の危機を任せろと言う少女。


 そして、彼女が望むのは・・・『平穏』。


「この街の為に領主様が献身する事、じゃないですかね?ピュアなら言いそうです」


 私はぶっきらぼうに言いました。

 私はそう思ったのです。多分、間違っていないと思います。


「あぁ〜、言いそうだな。善処しよう」


 領主様は、納得の表情でした。この人の人を見る目は確かですね。


「あっ、あと犠牲が出る事は事前に相談しないと怒られますよ?ソースは私です・・・」


 随分と怒られました。私は反省の意味も込めて領主様に釘を刺しておきます。


「その様子だと随分と怒られた様だな。俺も同罪だ、君の犠牲を許容しようとした。すまない」


「私が望んだ事でしたから、謝られても困ります」


・・・


「そうだ、彼女への礼は断られてしまったから君に礼をしよう。孤児院周辺の土地は君の裁量に任せて全て君に与えよう。全て自由にして貰って構わない。更に関係者以外は立ち入りを禁止し、孤児院の運営に関して最大限の予算を割り当てるから上手くやってくれ。ソボックの街と孤児院、そして冒険者ギルド、そして『彼ら』とのパイプ役になってくれ。彼らには自由に行動できる権利を与える代わりに君に報告義務を課す事にするかな」


 え?無茶振り過ぎません!?

 それって、お礼ではなくて超絶難易度の依頼じゃないですか!


「君が欲しいのは、自由ではなく存在意義だろ?これ以上はないぞ?それ程に重要な任務だ。なんせ彼らが裏切れば世界が危ういからな」


 領主様は笑っていた。

 でも・・・その内容は冗談ではなさそうですね・・・。ピュアにラックに、エビちゃん。三人が人類を裏切れば・・・あ、世界滅びますね。

 その内容は事実な気がしました。


 責任重大ですね・・・。

 でも、なんででしょう?まったく嫌な気分ではありませんでした。


・・・


 そして、その後ガルブが領主邸を訪れ、話が終わり、次の日にはギルドで再会。

 ガルブはエビちゃんにボコボコにされましたとさ。


-----リズの思惑【完】-----

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