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フレンズ

 とりあえず、正気に戻って私は真面目な話を始めました。


「貴方のパンを買いたいのですが正直、私は言い値で買う他ありません。私は有金を全部を払ってでもそのパンを買う必要があります。それを踏まえた上で、そのパンを売ってくれませんか?」


 私は余計な駆け引きはせず、全てお話した上でお願いする事にしました。

 ラックさんの人柄は少し見えてきましたし信用しても良いと思っています。

 それに、ほかに手段もありませんし・・・。

 

「パンっていくらくらいするもんなんだ?」


「普通のパンは一食100enくらいですが、パンと言ってもラックさんのパンは特殊ですしねぇ。あ、あと本音を言うとこの『食べれないパン』も欲しいです。あれ?これってパンなんでしょうか?パンってなんでしたっけ?」


 相変わらずゲシュパンルトが崩壊してパン不信に陥っています。

 でも、あのパン美味しいし、このパンは気持ちいい。私はパンを信じたい。

 もうナンでもいいや。パンでもいいや。


「じゃぁ150enで。1個十人前くらいだから1500enでとりあえず100個ほどでいいか?

 まだあるけど、それはストックにして普段食べる分は今後も買ってくれ。俺のパンは賞味期限切れもないしな」


 ん?ファット?


 150en?100個あれば千人前・・・一人前で三年弱生きれるんですよ?話聞いてました?三千年生きれてしまいますよ?それが15万en!?


「ふざけてるんですか!?」


 私は生命神様の加護のおかげで飛躍的に寿命自体は伸びていると予想されます。生命力の件が解消されたら何年生きれるかは正直、私も想像も出来ませんがこれは実質、呪いの問題が完全解決した事を意味します。それが・・・たったの15万en?


「ん?高すぎたか?普通のパンに劣る事はないと自負している。

 普通のパンよりは高くとおもったのだが・・・」


 ・・・この人は何を言っているのでしょうか?


「逆ですよ!逆っ!!安すぎですよ!!100倍、いや、1000倍だって喜んで払いますよ!?それほどの価値が貴方のパンにはあるんです!」


 これは、冗談でも何でもありません。文字通り1個1000倍でも15万enで三年弱の命を買うと思えば安すぎます。1万倍でも・・・それを・・・。この人の事は少し分かった気がしていましたが、思い違いでした。


 この人は規格外の、世間知らずのお人好しです。


「はっはっはー♪そこまで評価してくれるとは、お世辞でも嬉しいぞ!俺のパンも捨てたもんではなさそうだな。これから毎日、パンを焼くつもりだから是非毎日食べてくれ。冒険者の仕事は出来なさそうだが正直言うと俺はパン職人の方が向いていると思うんだ。俺のパンを食べて幸せそうにしてくれる三人の顔を見て思ったよ。天職だとな!」


 この人は全然分かっていない・・・私が、どれ程このパンを待ち望んでいたか・・・。

 私は生きたかったんです。でも生きれないはずだったんです・・・。

 それが・・・。私は様々な複雑な感情で涙が出てきました。


 止まりません。


「お・・・おい?ど、どうしたんだ?大丈夫か?」


 急に泣き出した私を見てラックさんは狼狽えていました。

 嬉しさと申し訳なさと、罪悪感とで私は押し潰されそうだったのです・・・。


「条件があります・・・」


 私は絞り出すように言葉を発しました。

 私が条件を出すなんて御門おかど違いもいい所です。それでも私は言います。


「お、おう?なんだ?」


 ラックさんは何事かと恐る恐る私にその内容を問う。


「貴方に何か困った事があれば、私は全力で何に変えても、命以外は全てを賭けてでも貴方を助けます。だから、何かあったら必ず相談して下さい。これが条件です」


 私は、私が納得する為に、罪悪感に潰されない為に、自分勝手に条件を出しました。こうでもしないと私自身が納得できなかったから・・・


「そ、そうか、分かった。ありがとう。今日、君に会えた事を幸運に思うよ。これから宜しく頼む」


 それは私のセリフです。


「私も、お二人に同様に誓わせて下さい。何かあったら相談して下さい。私もまた二人に救われたのですから」


 エビちゃんが、割って入ってくれました。この人は、きっと全て理解した上で、このタイミングで、同様にと言ってくれているのでしょう。本当に中身は超イケメンですね!

 正直、私は大した事はしていません。それでも・・・今、出来たこの関係性をとても尊く思いました。だから受け入れます。


 私達は・・・フレンズです。


「三人でズルいです!私も混ぜて下さい♪」


 私はまだ、貴方を許してはいませんが、怒るのは実は、それこそ御門違いなんですよねぇ。私はリズを今も、昔からずっと大切に思っています。


 だから許さないだけで実は大好きなのですよ。


「それは保留ですね」


 でも私は意地悪に言います。私とリズの関係は、またいつかゆっくりとお話しましょう。そして、いずれは・・・許せる時が来る事でしょう・・・。


「酷いですぅ・・・」


 こうしてまた一つの問題が、私にとって最大にして不可能と思われた問題が解決したのでした。


 私はこの日の幸運を決して忘れません。


・・・


「ついでにこのまま『食べれないパン』も売ってください」


 私はもちもちしながら言います。気持ち良すぎて手放せません。


「20000enだな」

「そこは現実的な値段なんですね・・・いや、それでも安いですけど」

「パンチラ強いんだよ。倒すのが大変で量産できん」


 結局、買いました。

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