パンだね
さて、まだ食べ足りませんが話が進まないので真面目にお話を聞きましょう。
「まず、生産出来る数だな。食神様の加護のおかげで性能の上がった俺の『オーブン』魔法は生産可能な数を飛躍的上げたのだが、それでも1日300個程、寝ずに頑張っても500個程が限界だろう」
ん?今何と言いました?
人の顔の倍ほどはある、このパンは1個で十人前は軽くあります。
それをこの人は、本気を出せば500個?五千人分?
意味が分かりません。
そう言えば、エビちゃんとの戦闘・・・あれを戦闘と読んでいいかは不明ですが、その時に『俺のオーブンは千人分のパンを焼ける。キリッ!』みたいな事を言っていた気がします。
『ソボック』の街の人口は五千人。食料自給率100%アップですね・・・。
「何か特別な素材を使用しているんですか?」
よくぞ聞いてくれました、リズ!
そうです。よく考えたら作れると言うだけで素材がなければ意味がありません。
真面目に続きを聞きましょう。
「この味にたどり着くまで五年かかった・・・。流石に五歳から十歳までは倉庫のパンを食べ武神像を殴る毎日だった」
五歳で神像殴る子供は大分クレイジーですよ?
「しかし、俺は十歳になる頃、父の書記であるパンの作り方を見つけた」
お父さんもパン職人だったんですかねぇ。あれ?も?ラックさんってパン職人希望でしたっけ?
「俺はそれを真似てパン作りを始めた。しかし、初めは上手くいかなかった」
パンの話になると異様に熱が入りますね、この人は。
もうパン職人でいい気がしてきました。
「様々な試行錯誤を経て十四歳の時、俺はついに父のパンの味に追いついた!俺は感動した・・・成し遂げたのだと・・・」
目標だったんですねぇ。いい話ダナァ。と適当な相槌として頷きます。
「そして、食神様の加護を得た俺は・・・それを追い越したのだ・・・」
食神様の加護は、料理スキルに上方補正が入ります。
追い越すのは必然だったのでしょう。
「しかし、それは五年間の努力があってこそだったと自負している」
そうですね。努力なくしてはあの味は出せないでしょう。
加護はあくまでも補助的なものです。彼の努力は無駄ではなかった。
「焼き時間には特にこだわった。その日の気候にも左右される。釜のコンディションも重要だ。焼いている間は一時も気が抜けない。刻一刻とパンの状態は変化している。あらゆる環境下に置けるベストのコンディションを見つける方程式を俺は編み出した!」
しかし、聞いていると普通のパンの様に思えますね・・・。
「普通の、パンだね・・・?」
リズも同じく思った様です。
「そう。パンダネも重要なのだ!」
違う。そうだけど、そうじゃないです。
絶妙に食い違っている気がしますが・・・まぁ、問題ないのでスルーしましょう。
「俺のパンダネはパンストを謎筒でひたすらに打ち返し、十分に膨らました後、叩きつけるのが秘訣なんだ!」
・・・
どうしましょう・・・とてもスルー出来そうにありません・・・。
しかし、意味不明すぎて単語が一切、頭に入ってきません・・・。
未だかつて、ここまで意味不明な言葉は聞いた事があるでしょうか?ありません。
真面目に聞いていたはずだったのですが・・・?
パンスト・・・?打ち返す??叩きつける??パンはどこに行ったのでしょう?
そして、私は考える事をやめました・・・。




