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1.二人の関係

「まーひろっ!」


 いきなり背後から何者かの襲撃を受けて倒れそうになるのを何とかこらえた。

 襲撃者は僕の背中から降りようとせず、そのまま体重をかけてくる。


詩織(しおり)、いきなり飛びついてこないでって言ったよね?」


「そんなこと言いつつ真尋(まひろ)は本気で拒絶しないくせに」


「嫌ではないけど、普通に倒れたら危ないからさ。僕が倒れるだけならまだしも詩織も一緒に倒れちゃうでしょ」


「んー、心配してくれるのしゅきぃ……」


 背中に当たる幸せな感触を楽しみながらあまり飛びついてこないように詩織に言い聞かせる。

 こうして抱き着いてきてくれるのはうれしいけど、危ないのは本当だしけがをしないように倒れるのをこらえるのも大変だからね。


「ほら、そろそろ帰るよ」


 そう言いながら背中に詩織を張り付けたまま立ち上がる。

 そのまま机の横にかかっていた自分のカバンと後ろの席、詩織の机に乗っていたカバンを持って教室を出た。


 高校入学当初は非常に注目されたが、それも数ヶ月それなりの頻度で起これば人間慣れるもので、多少視線は感じるものの騒がれることも無くなっていた。


 教室から出ると、くっつき虫と化していた詩織を引き剥がして自分で歩かせる。

 剥がす時に胸に手が触れてしまったが、ここまで連れてきた報酬だと思って有難く堪能させてもらった。


「もー、えっち!」


「そんなこと言うなら胸押し付けてこないでくれない?」


「んへへ、真尋から触るのはダメだけど私から触るのはいいの!」


「そっか、僕から触るのはダメなのか……」


「あぁ! 待ってよぉ!」


 そういって少し詩織から離れて歩こうとすると詩織は慌てたように腕に抱き着いてきた。

 意識してやってるのかわからないけど、その大きな双峰に腕が飲み込まれてもはや僕の腕が見えないくらいに強く抱きしめられている。


「あ、ちょっと帰りに本屋寄っていい?」


「いいけどなんか新刊とか出てたっけ?」


「いや、最近アニメ化したやつ。アニメ見たら結構面白かったから原作小説らしいし読んでみたくなって」


「読み終わったら私にも貸してね」


「ん、いいよ」


 そんな他愛のない会話をしながら僕たちは帰路に着いたのだった。



 ***



 書店にて目的のものを買うことができた僕は詩織を連れて家に帰って来た。


「今日は夕飯どうする?」


「んー……おじさんが良いっていえば食べてきたいけど」


「言ってなかったっけ? 今日からまた父さん会社に泊まり込みだって」


「そうなの? あ、なんか新作出るって言ってたもんね」


「うん、それの調整やらなんやらで死ぬほど忙しいらしいよ」


 僕の父さんはゲーム会社に勤めている。

 プログラミングとかいろいろ見せてもらったこともあるけど正直どうしてあんな文字列でゲームができるのか理解できなかった。

 発売までもう一か月もないので随分忙しいらしい。

 母さんは僕が中学に上がるタイミングで死んでしまった。

 原因は肺の病気だった。

 そのため父さんがいない我が家は今僕一人しかいない状態というわけだ。


「ってことだから食べていくようなら作るけど」


「いただきます!」


「じゃあちょっと冷蔵庫見てくから先に部屋行ってて」


「あいあい」


 詩織はそんな気の抜けた返事をして二階に上って行った。

 僕は詩織の姿を横目にキッチンに向かうと冷蔵庫の中身を確認する。

 あまり手の込んだものを作るのも面倒だし、あるもので済ませてもいいかな……。

 出来合いのお惣菜はいろいろあるし汁物だけなんか作ればもうご飯にはなる。


 適当にメニューを決めつつ僕も部屋に向かう。

 途中適当につまめるようなお菓子を探してちょっとしたチョコ菓子があったのでそれを持っていくことにする。


 部屋に入ると制服を脱いでワイシャツを着崩した詩織がベッドの上でゴロゴロとしていた。

 この子には羞恥心というものが無いのか、スカートがめくれて黒のパンツが見えているにも関わらず僕の方に意識を向けることなくスマホに視線を落としている。


「こら女の子。パンツ見えてるぞ」


「んー? 一時間千円でいいよ?」


「バカ言ってないで少しは恥じるとか無いの?」


「えー? うぅ……そんなに見つめられたら、はずかしいよぉ……!」


「そんな棒読みで言われても全然恥じらいが感じられないんだけど……」


「だって今更じゃない? 真尋相手にパンツぐらいで恥ずかしがらないでしょ。もっと恥ずかしいところも見られてるし」


「まぁ……確かに」


 僕が納得しかけると、詩織はこっちをチラッと見てそれから枕の下に隠していたであろう小さな箱を取り出した。


「今日も……する?」


 何を、とは聞かない。

 距離の近い男女がひとつ屋根の下、二人っきりの空間ですることなんてそんなに多くない。

 見れば箱は某オリジナルの0.01ミリだった。


 僕は返事の代わりにそっとベッドに乗り、詩織に覆い被さるのだった。



 ***



 僕が詩織とこういう関係になったのは結構前のこと。

 僕と詩織はいわゆる『幼馴染』と言うやつで物心ついた時からずっと一緒にいた。

 生まれた時期、病院が同じだったこともあって親同士が仲が良かったのもあってか、同じ時間を過ごすことが多かった。

 家が隣同士というのも大きな要因だろう。


 僕の母さんが亡くなった少しあとに詩織の父親も他界し、女手一つで子供を育てなければならなくなったのを、父さんが色々と手助けしたり、逆に詩織の母親に助けられたことも多かったらしい。

 そんなことがあって、僕達はお互いに親を失った寂しさを埋めるように更に一緒にいることが増えた。


 中学生にもなれば互いに男女としての成長を感じるようになり、初めはほんのイタズラのつもりで詩織の身体に触れた。

 普通の幼馴染であれば拒絶の一つや二つあるものだろうが、僕達は互いに相手に依存していたんだろう。

 触れ合うことの快感を享受して、次第に行為はエスカレートしていった。


 実際に本番を致すことになった時、僕達の関係について考えた。

 本来そういうことは恋人同士でやるのが普通ではないか、僕達は幼馴染で恋人同士では無いのにそういった行為を行っても不義理ではないだろうかと。

 不安に思った僕は詩織にそのことを相談した。

 しかし、そう思ってたのは僕だけで詩織はまた違う考えを持っていたのだった。


 幼馴染から恋人になって変わることは何なのか。

 周りからの目なんて自分たちでどうこう言わなきゃ変わりようのないものであるし、わざわざ関係に対する名前を変える必要はあるのか、と。

 詩織は詩織で幼馴染という関係を恋人以上のものに昇華させているようだった。


 それから僕は、僕達は躊躇うことなくそういう行為を行えるようになった。

 僕が詩織を好きで、愛していることには変わりないし、逆に詩織も僕のことを好いてくれていると思ってる。

 付き合ってるとか恋人同士なんて当人たちが勝手に言ってることで、僕達の幼馴染という関係はそれに勝るとも劣らないものだと自負している。


 他とは幼馴染としての在り方は違うかもしれないけど、これが僕と詩織の距離感だから。

幼馴染モノがどうしても書きたくなったけど、自分に幼馴染なんていなかったことに絶望している者です。どうも。

最近は物価高に悩まされる毎日を過ごしているわけなんですけれども皆様いかがお過ごしでしょうか。


さて、今作少しばかり過激な内容も含まれると思いますのでもしかしたらR15を貫通して注意を受ける可能性もございます。

もしお叱りを受けた場合過激だと思われる部分を修正しなければならなくなると思うので、ラインを見極めながら続きを投稿して行けたらいいなぁと考えております。

投稿頻度はそれほど多くないかと思いますが、気に入って頂けたら続きを楽しみにしていただければ幸いです。

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