私はいままであなたをお慕いしたことなどありませんが? 嫉妬とやらの動機とやらで悪役令嬢とよばれいやがらせをしたといわれなければいけないのでしょうかね? 婚約破棄上等ですわ。
愛しいあなた、優しいあなた。
あなたと目と目が合ったその時に私は恋に落ちました。
それが許されない恋だとしても……。
「メーリア・アーファディ、お前をイルーシャに対する嫌がらせの罪でここに王太子ウィルヘルム・ローシュタインは婚約を破棄する!」
「あら、嫌がらせってなんのことですか?」
私は婚約破棄を宣言した殿下の前で優雅に微笑みました。
だって私はそんなことをした覚えはないですから。
「お前は、ここにいる私の想い人イルーシャを階段から突き落とした!」
「いいえそんなことはしておりません」
私は殿下に笑いかけます。
「お前はイルーシャが私の想い人であることに嫉妬したんだ!」
「いいえ、私、殿下をお慕いしたことはありませんもの、これは契約上の婚約ですわ。陛下にも申し上げておりますもの、だから嫉妬なんてありえません」
クスクスと笑う私に困った顔をする殿下、こちらをにらみつけるイルーシャさん。
平民で魔力もすごい彼女の評判はとてもよく、私に対する評判はとても悪い。
うん、それもどうしてかは知っていますけどね。
「なにいいいいい!」
「……私、愛しい人はあなたではないことを陛下には申し上げておりましたわ。だってあなたは私の想いをささげるにふさわしい方ではありませんもの、でも契約は契約、心はささげておりませんが体はささげました。ああ、器だけ、あなたにふさわしい婚約者であるようにこれまでいろいろ頑張ってきましたということですが」
何回言ってもこれでしたが、まあいつものことですわね。
右から左に流していたようですから、今ははっきりと申し上げないと。
あんぐりと口をあけてうなだれる殿下。
私をにらみつけるイルーシャさん。
私のクラスメイトにいろいろと吹き込んでいたのは知っていますが……私が何も手を打ってないともお思いかしら? 私の……。
「嫌がらせをしたとイルーシャが!」
「私、アカシックレコードを見る力をもつこのスキルにおいて宣言します。請願において、私はアカシックレコードを開示して、嫌がらせをしていないことを証明をいたします!」
私は人の記憶、人生、アカシックレコードを視る力を持っていました。
その力により、これまでの人生を開示させ、嫌がらせをしていないことを証明のために投影しましたの。
他人に見せることも可能ですしね。
「…嫌がらせなどはしていないことは証明された…」
がっくりとうなだれる殿下、そして私は無罪が証明されたことによって冤罪をかけられたことがわかり、この罪により殿下は王太子の地位をはく奪、イルーシャさんとともに国外追放となりました。
「……ただいまレオ」
「…」
「さあ、ご飯にしましょうね」
愛しいあなた、あなたと視線が合ったその時から、私の心はあなたのもの。
あなただけが私の愛しい…。
「…」
「あなたを愛していますわ」
「…」
あなたが私をその黒い目に映してくれるだけで愛しい。
そしてあなたのその――。
あなただけが私の愛しい愛しい世界で一番。
屋敷の一室で愛しい人を抱き上げ、私は微笑んだのでありました。
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