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元山賊師団長の、出奔道中旅日記  作者: 新堂しいろ
第五章 黒き聖女と秘密の花園
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278.絶望へ飛び込む者

「馬鹿な!? これは、どういう事だ!?」


 ”赤蛇”に取り囲まれたトビアスは、予想外の危機に大声を上げた。

 その声は驚愕に震えている。彼の動揺が手に取るように分かったシルヴィアは、

自身が浮かべる怯えた表情に反して内心ほくそ笑んでいた。


(ふふ……焦ってるわね。いい気味よ、存分に噛み締めると良いわ)


 今朝早くにミゼナに戻ったシルヴィアは、その足で冒険者ギルドに飛び込み、聖女からと言って手紙をトビアスへ手渡した。

 その内容は今日の昼過ぎに、ある場所にいる”赤蛇”を急襲すると言うものだ。それを見たトビアスは部屋から飛び出し、急いで戦力を集め始める。その場所に時間を合わせて到着するには、もう時間が無かったためだった。


 飛び出していくそんな父の背中を、シルヴィアは黙って見送った。彼女はその時からずっと、この時が来るのを待っていた。


 トビアスが焦って冒険者を集める姿をギルドの片隅で眺めている時も。

 集まった五十弱の冒険者達を引き連れ嘘の目的地に急いでいる時も。


 この後待ち受ける運命を知りながら、それを心配そうな表情で覆い隠して、彼女は父親が無様に慌てふためく様を、ただただ待ち望んでいたのだ。


 まだ彼女が幼い頃、両親は罪を犯したと裁かれ、ルヴェル鉱山のあるバルツァレクへ送られたそうだ。

 両親を失い一人残される事になったシルヴィア。犯罪者の子を引き取りたいと願う者もおらず孤児院に送られるかと思いきや、そこで手を挙げたのが義父トビアスだった。


 どんな経緯で自分を引き取ってくれたのかは知らない。

 しかし純粋な厚意ではない事だけは、シルヴィアは確信していた。


 昔から今まで、彼から愛情を受けた覚えは一切無かった。

 幼い頃から自分の頼みを聞いてくれた事など無く、逆に叱られる事も多かった。

 引き取ってくれたことに感謝はしている。しかし、なぜこの人に引き取られたのだろうという気持ちの方が大きかった。


 もし他の誰かに引き取って貰えていたなら。孤児院へ行けていたのなら。

 小さな子供のそんな悔しさは彼女の心に影を落とす。そして長年の間積もりに積もったその暗い感情は、いつしか彼女の心の中に歪んだ願いを生み出した。


 この男にいつか痛い目を見せてやりたい。自分と同じ悔しさを、こいつに味合わせてやりたい、と。


「俺達も今朝入手した情報だぞ……!? 貴様ら、一体どこで嗅ぎつけた!?」


 ずらりと立つ”赤蛇”の集団を前にトビアスが叫ぶ。だがこれを”赤蛇”の頭ガモンは鼻で笑った。


「あの田舎町でこそこそと何かやっていたらしいが、甘かったな。お前達の動向なんぞこっちにゃ筒抜けなんだよ」


 当然だった。シルヴィアが渡した手紙は偽物の手紙。”赤蛇”がシルヴィアに持たせた罠だったのだから。


 この時のためにトビアスは、見込みのある冒険者を町に待機させていた。いずれもランクE以上の冒険者で、中には非常に珍しく、ランクCの証である銀のドッグタグを首にかけている者もいた。


 田舎町で集めた事を考えれば、かなりの戦力であっただろう。これに聖女やその護衛達が加わるのであれば、”赤蛇”討伐も現実になったはずだった。


 それが罠でさえなかったならば。


 相手の策と気づかなかったトビアス達は、左右を森に囲まれた街道で、前後を挟まれ退路を封じられた。

 森にも手勢を伏せているのが伝わってくる。周囲を”赤蛇”に囲まれた彼らの運命は、もはや火を見るよりも明らかだった。


 トビアスは両手を握りしめる。彼はミゼナに”赤蛇”の手下が潜んでいる事を危惧していた。だから慎重に慎重を期し、行動をしていたはずだった。

 しかし目の前の男はニヤついた余裕の笑みを浮かべている。一つの事実に辿り着いたトビアスの顔は、怒りでたちまち赤く染まった。


「内通者がいたのか――っ! 一体どこの誰だ! その愚か者はっ!」

「知りたいか!? くくっ……どーすっかなぁ。教えてやっても良いが、仰天した拍子に脱糞でもされたら堪らねぇしなぁ」

『ギャハハハハッ!』


 対してガモンはそんなトビアスを揶揄うように、軽く肩をすくめて挑発する。これに周囲も同調し品のない笑い声をあげ、トビアスはぎりと奥歯を噛んだ。

 トビアスの後ろに立つ冒険者らも戸惑いを隠せない。ざわざわと困惑を滲ませた声が聞こえ始め、これにガモンは楽しそうに鼻を鳴らした。


「くっくっく……まあいい。見せてやろうじゃねぇか。――おい! アレを持ってこい!」


 あごをくいとしゃくるガモン。するとすぐに一団の後ろから、二人の部下が歩み出て来た。

 二人の両手には、小脇に抱えられる程度の麻の袋が一つずつぶら下がっている。

 袋はなんてことも無い、どこにでもあるような茶の袋だ。だがその袋の下の方は、どうしてか赤く滲んでいた。


 不思議に思うトビアスの足元へ、二人の部下はその袋を乱雑に放り投げる。袋は地の上でどんと弾み、ごろごろとトビアスの足元まで転がって来る。

 だが、投げられた衝撃で口が緩んだのだろう。中身もごろりと出てきたのだが、これに息を呑んだのはトビアスだけでは無かった。


「こ、これは――ッ!」

「ハ、ハッセ……? ヨナス……?」


 シルヴィアが信じられないような声を上げた。その袋から出てきたのは、彼女と行動を共にしていた冒険者達の首だったのだ。


 突然現れた彼らの顔からシルヴィアは目が離せない。なぜ彼らの首がこんな場所にあるのだろう。どうしてこんな姿になっているのだろう。


 目の前にある現実が信じられず、彼女の頭は真っ白に染まっている。だが、少しして彼女ははっと気づいた。父を含む周囲の皆が、自分に疑惑の目を向けていることに。


「な、何……? ど、どうして皆、私を見てるの?」


 自分の顔に集まる視線に、気圧されたようにシルヴィアは一歩後ずさった。

 だがその視線は弱まるばかりか、逆に疑いの感情を強く滲ませる。


「シルヴィア。ま、まさかお前……。お前、が?」


 トビアスの声は、無理に絞り出したような声色をしていた。それが意味する事を察したシルヴィアは、また一歩後ずさる。


 ――しかし、退路はもう残されていなかった。


「ガッハッハッハ! 自分の娘に裏切られるたぁ、お前も災難だったな! 同情するぜ! ああいや、義理の娘だったか? まあ災難だって事には変わりねえがな」

「なっ――」


 ガモンが当然のように関係を暴露したのだ。ばっと顔を向けたシルヴィアが見たものは、愉快そうにニヤついたガモンの顔だった。


 シルヴィアと”赤蛇”との関係は、どんなことがあろうとも口にしないと言う約束だった。


 シルヴィアにとって”赤蛇”は、自分の望みを叶える手段だった。一方”赤蛇”にとってもシルヴィアは、内通者として使える手足だった。

 これは互いに利のある事で、逆を言えば暴露する事にメリットは何もない行為であった。


 だからシルヴィアは絶対に自分が内通者だと割れる事は無いと思っていた。だと言うのに、この決定的な事態で、ガモンは関係を明かしてしまった。


 シルヴィアは恐る恐る、再び義父に目を向ける。そこにある目は自分を責めるような物だろうか。それとも蔑む様なものだろうか。

 そんな事を思っていた彼女だったが、しかし義父の顔を見た瞬間、彼女ははっと息を呑む。


「シ、シルヴィア……。嘘、だろう? お前が、まさか、そんな……」


 自分を見つめる二つの目には、責めるような感情は浮かんでいなかった。

 だが想像してもいなかった表情は、彼女の胸に鉛のような重さを感じさせた。


「シルヴィア……お、お前、どうして」

「ち、違うの。パパ、それは――そ、そう! こいつらが嘘を言ってるのよ! 全部私達を動揺させるための嘘なのよ! この大噓つき! 卑怯者!」


 彼女はその場を切り抜けるため、ガモンに指を突き付ける。


「おいおい、そりゃあねぇだろうシルヴィア。俺が大嘘つきの卑怯者だってんなら、お前だってそうじゃねぇか。こいつらを誘い出すための、聖女の手紙を喜んで持って行きやがった癖によぉ」

「ち、違う! 私は違うッ!」

「まあそりゃあ聖女からじゃなく、俺達”赤蛇”と大嘘つきのシルヴィアちゃんからだったわけだがなぁ! くはははははっ!」


 しかし上手く行くはずもなく、逆に境地に立たされてしまう。

 こうなればもうどうにもならず、シルヴィアは集まる視線を否定するように、無言で首を振るだけだった。


「おらシルヴィア、もう十分遊んだだろうが。そろそろこっちに戻って来い」


 ガモンが彼女へ手を伸ばしてくる。だがシルヴィアは首を横に振りながら、一歩二歩と後ずさるだけだ。

 ガモンは伸ばした手をぷらぷらとさせながら肩をすくめる。その表情はこの状況を楽しむように、大きく歪んでいた。


 この偽りの手紙でミゼナの戦力を釣り出すと言う計画は、元々ガモンが考えたものである。

 目的は、反旗を翻そうとしているミゼナの者に、自分達の立場を分からせると言うもの。金さえ手に入れば”赤蛇”としての目的は達成できるが、舐められる事は我慢がならない。

 そんな粗暴な意思によりこの計画は練られたのである。


 だがガモンにはもう一つ目的があった。それは彼女――シルヴィアの事だった。

 彼は気に入った女性を嬲って楽しむサディストであった。そして彼は、気が強い女性を好む傾向も持っていた。


 彼にとってミゼナの町を攻める事はあまり興味が無く、部下のガス抜き程度にしか考えていなかった。

 彼の本当の目的は別であり、シルヴィアを徹底的に痛めつける事だったのだ。


 彼はシルヴィアと会ってよりずっと、彼女をどういたぶろうかと、そればかりを考えていた。それがここに来てやっと結実する。


 ガモンは楽しそうにシルヴィアを見る。あの気の強そうな顔が怯えに染まっているのを見て、彼はべろりと舌なめずりをする。

 精神的に追い込まれる彼女を見て、彼は今興奮を覚え始めていた。


「おら、とっとと来いよ、シルヴィアちゃん」


 ねっとりした猫なで声まで上げ始めたガモン。

 だがしかしそこに割って入る者が一人おり、ガモンの顔は真顔に変わる。


「何だ? テメェ」


 それは彼女の義父、トビアスだった。彼はシルヴィアをかばうように前に立ち、ガモンを強く睨みつけたのだ。

 

「……シルヴィアは嘘だと言っている。お前達が我々を混乱させるために弄した、狂言の可能性がある……!」


 未だにシルヴィアを疑いきれないらしく、トビアスは娘を背中に隠して立ちはだかる。

 この姿を口を閉ざして見ていたガモン。だが彼は突然目を閉じて俯くと、急に肩を揺らして笑い始めた。


「狂言ねぇ……。くっくっく……。はっはっは……!」


 その笑いは徐々に大きくなっていく。終いには天を仰ぎ、トビアス達の目の前で哄笑こうしょうをし始めた。


「ハーッハッハッハ! ハーッハッハッハ!!」


 大口を開けて笑う彼の姿は、まるで頭でもおかしくなったかのようだ。トビアスや冒険者達はその姿に唖然として、何も言葉を発せなかった。

 誰もが見つめる中で、ガモンは笑い続けている。だがすぐに彼は目を見開き、


「ふざけてんじゃねぇぞォーッ! このボンクラがぁーッ!!」 


 激しい怒声を上げたのだ。


「そのシルヴィアはお前らを裏切った! そのせいでお前らはここで死に、ミゼナは蹂躙されるんだよ! 現実から逃避するのも大概にしやがれ!」


 彼の咆哮はビリビリと空気を振動させ、トビアス達に突き刺さる。その突然の激情に彼らは身じろぎ一つできなかった。

 ガモンはそんな彼らに向かい、勢いよく指を突き付ける。


「ムカつく野郎共だ! 現実に向き合えねぇって言うんなら、この俺がお前らに思い知らせてやる! ――野郎共、剣を取れ! 目の前の馬鹿共を蹂躙しろォッ!」

『おぉおっ!』


 ガモンは腰の剣を抜き放つ。部下達もそれに応じ、気勢を上げてそれぞれの武器を手に握った。


「俺達はこれからこの街道を進み、テメェらの町をブッ潰す! 止めてぇなら死に物狂いでかかって来い! 俺達はそんなお前らを一人残らず踏み潰し、殺し尽くして先に進んでやる!」

『おぉぉぉぉぉーっ!!』


 ガモンの叫びを合図として、”赤蛇”は次々に冒険者達へ襲い掛かっていく。更に森に潜伏していた者達も街道へとなだれ込み、そこは瞬く間に戦場と化した。


「くっ――お前達、迎撃しろ! こいつらをここから先に進ませるな! うぉおっ!」

「ぐおぉっ!?」

「がはっ!?」


 トビアスも二本の短剣を腰から抜き、”赤蛇”達と対峙する。彼は元ランクCの冒険者だ、ブランクはあれど実力は確かで、襲い掛かる”赤蛇”達を一人、二人と地面に沈めていく。


「こ、こんなところで死んでたまるか! うおおおおおっ!」

「ち、畜生! こんなのは話が違うぞ! 聖女がいたんじゃないのかよっ!」


 冒険者達も襲い掛かる”赤蛇”達を必死に迎撃する。所々で金属音が打ち鳴らされ、そのたびに激しい火花が飛び散った。

 冒険者達もミゼナでは実力確かな者達ばかりだ。必死の抵抗で”赤蛇”達と激しくぶつかり合う。

 だがそれでも多勢に無勢、しかも最悪な状況による士気の低下により、冒険者達は少しずつその数を減らしていった。


「お、俺は、聖女の取りこぼしを相手すれば良いって、そう聞いて来たんだ! こんなの付き合ってられるかよぉっ!」

「逃げろ! 逃げろぉっ!!」


 終いに隙を見て逃げ出す冒険者も現れる。もはや戦局は決定的だった。


「お、おい!? 待て!」

「残念だったなぁお父さん。これじゃあミゼナを守る事もできねぇなぁ」

「くっ――! まだだ! まだ終わってはいないぃっ!」


 戦うトビアスの背後に、いつの間にかガモンが立っていた。掛けられた声に勢いよく振り向いて、トビアスはニヤつくガモンへ短剣を手に飛びかかる。


「まだ現実が見えてねぇようだな。俺ぁ、頭の緩い奴に現実を叩きつけてやるのは嫌いじゃねぇんだがな――」


 ガモンは突き出された短剣を長剣で弾く。


「往生際が悪いだけのクソ馬鹿野郎は……大っ嫌いなんだよォオーッ!!」


 そしてその長剣を、トビアスの伸ばされた腕へ振りぬいた。


「があああああっ!?」


 ぼとりと落ちるトビアスの右腕。血が勢いよく吹き出して、地面を瞬く間に赤に染める。


「テメェはもうそこで黙って転がっていやがれ!」

「ぐぅあああああっ!!」


 更にガモンは剣を振るい、トビアスの左足も切り飛ばす。足を失ったトビアスは、立っていられず地面に倒れ込んだ。


「パ、パパぁっ!」

「シルヴィア、テメェはいい加減こっちに来い!」

「嫌! パパ! パパぁっ!」


 シルヴィアは倒れたトビアスへ近寄ろうと駆け寄る。ガモンに腕を握られるが、それを振り払おうと必死に抗う。


「チッ……往生際の悪さは親譲りか。 ――もう黙りやがれ!」

「うぐぅっ!?」


 だが次の瞬間、彼女はその横顔を殴打され、強かに地面へ体をぶつける。ガモンはそんな彼女の顔を見下ろして、冷たく言葉を吐き出した。


「いい加減認めろ。お前がこいつらを殺すんだ。よく見ておけ、お前が望んだ結果って奴をな」

「うぅっ……! ち、違う! 違う! 私は……私はこんな事望んでなかった! こんな事……っ! ぐぅ!?」

「望んだんだよお前は。お前が言ったんだろ? こいつらを痛めつけてやれってな。それがこの結果なんだ。いつまでも甘えた事を抜かすんじゃねぇクソアマ!」


 ガモンはシルヴィアの胸倉を掴み上げ、また顔を殴打する。地面に打ち付けられくぐもった声を上げるシルヴィア。だが髪をガモンに乱暴に掴まれ、ぐいと顔を上げさせられた。


 現実を、彼女は今はっきりと理解した。どうにもならない事を理解して、彼女の目からは涙が溢れてくる。

 トビアスが地に倒れ、血を流している。冒険者達もバタバタと倒れていく。

 泣く事しかできない彼女の目は、彼らの姿をただ映していた。


「おらぁっ! 無駄に足掻くんじゃねぇ、馬鹿共が! 無駄なんだよ!」

「ぐあぁっ!?」

「はっはぁーっ! 残念だったなここで死ね!」

「がはっ……」


 五十程もいた冒険者達はもう半分ほどに減っていた。あと十分もすれば全ての冒険者が倒され、息絶えるだろう。

 最初から勝ち目など無かったのだ。逃れ得ぬ現実を突きつけられて、シルヴィアはもう抵抗する気も失せていた。


 どうして自分はこんな奴らを頼ってしまったのだろう。なぜこんな事になってしまったんだろう。そんな事を思いつつ、彼女はただ泣いていた。


 ”赤蛇”の歓喜の声と、冒険者の苦悶の声とが交じり合い、街道に響いている。

 最早勝敗は決した。この運命を覆せるものは、もうここには一人もいなかった。


 ――そこに、彼らさえいなかったなら、だが。


「おりゃああああーっ!」


 突然周囲に響き渡ったのは、やけに甲高い声だった。


『ぐああああああぁっ!?』


 次に轟いたのは地面が弾けたような轟音。そして”赤蛇”達の、苦悶と驚愕が交じり合った声だった。


「な、何だ!? 何が起きた!?」


 ガモンもまた驚愕に声を荒げる。あまりにも突然過ぎて、その場の誰もが何が起きたのか理解ができていなかった。


 だが、彼女だけは見ていた。

 見ている事しかできないシルヴィアの目は、見慣れぬ人影が戦場に飛び込んでくるのを映していた。


 緋色の髪をなびかせた少女と、黒の全身鎧プレートアーマーをまとった人物。

 二人が森から飛び出てくる姿が、彼女にははっきりと見えていた。

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