すーちゃん先生の特別講座4
本作の舞台となる世界に関しての説明などです。
無駄に長いですが、興味のある方はどうぞ。
なお読まないと本編のほうで意味不明な内容が出てくるなど、
そういったことはありません。
また本編と説明が重複する部分がありますが、ご容赦ください。
すーちゃん先生
「すーちゃん先生の特別講座ー! その第四回目! 始まりましたわ! わーわーわー! パチパチパチー! なんとこのコーナーも四回目! と言う事で、助手はびっくりこの方ですわ!」
くくちん助手
「じゃーん! 可愛いククウルちゃんの登場や! ほらアンタら、拍手拍手ー!」
すーちゃん先生
「それでは今回はここまでです! また次回をお楽しみに!」
くくちん助手
「ほなさいならー! ……ってちょい待って!? なんで!? ウチ、今来たばかりなんやけど!?」
すーちゃん先生
「えー……。だって貴方、助手なんてできますの?」
くくちん助手
「そんな嫌そうな顔すなや! できるわ助手くらい! ちょちょいのポン太郎や!」
すーちゃん先生
「……ちなみに、助手って何をするか知ってますの?」
くくちん助手
「えーっと…………」
すーちゃん先生
「…………」
くくちん助手
「…………。ナッツの早食い競争?」
すーちゃん先生
「……とりあえず。邪魔にならないよう、そこで黙って立っていて下さいまし」
くくちん助手
「えーっ!? 折角来たのにそれはあれへん――」
すーちゃん先生
「物理的に。口を塞がれたいですか?」
くくちん助手
「黙って立っとります」
Q.姓名について
すーちゃん先生
「今日はまず、この国の姓名や、それに関する内容について話をしましょうか」
くくちん助手
「そないなもん、どうでもええんちゃうん?」
すーちゃん先生
「物理的に――」
くくちん助手
「わ、悪かったって! 黙る! 黙っとるから! その短剣しまって!?」
すーちゃん先生
「……ま、相槌くらいなら打っても構いませんわよ」
くくちん助手
「あ、ホンマ? ほなら任しとき! ウチに相槌を打たせたら右に出る者はおらんで!」
すーちゃん先生
「貴方が説明する内容を覚えていられるか分かりませんけれど、ね」
くくちん助手
「ん? 何か言った?」
すーちゃん先生
「何でもありませんわ。さて、余計な茶々が入りましたが、講義を続けましょう。と言っても難しくはありません。基本的に一般国民は名前のみで、家名はありません。しかし貴族の場合家名を持つ事を許されますわ」
くくちん助手
「あはは、そらおもろいなぁ!」
すーちゃん先生
「貴族の中で最も身分の低い騎士爵から持つ事を許されておりますので、家名があるイコール貴族と思っておいて間違いありません。ただこれは王国での話。聖王国などではちょっと事情が異なりますわ」
くくちん助手
「あはは、そらおもろいなぁ!」
すーちゃん先生
「……例えば、呪術の大家と呼ばれたバラージィ・リンゲールですが、彼は確か貴族ではないはずですわ。平民ではありますが、功績によって家名を名乗ることを許されているだけだったはずです。なので国が違えば事情も異なる、と言う事にはご注意下さいましね」
くくちん助手
「あはは、そらおもろいなぁ!」
すーちゃん先生
「…………さて王国の場合ですが。騎士爵や準男爵は、基本的に一代限りとなります。つまり平民から貴族へと変わった、と言うわけですが。その場合家名をどう決めるかと言うと、基本は本人の希望という形になります。ただ上位貴族と家名がかぶってしまうと問題がありますので、全て通るわけではありません。その辺りは王宮の担当文官と相談し、決めることになりますわね。とは言えいきなり家名をどうします? と言われても、普通は困りますわよね。ですから大抵の場合、文官が提示してきた家名を名乗ると言うのが一般的のようですね」
くくちん助手
「あはは、そらおもろいなぁ!」
すーちゃん先生
「ちょっと! ちょっと、くくちん助手!」
くくちん助手
「あはは、そらおもろい――ん? 何や?」
すーちゃん先生
「何や? じゃありませんわ! 貴方、もうちょっとマシな相槌を打てないんですの!? バリエーションが貧弱過ぎますわよ!」
くくちん助手
「な、なんやと!? 相槌せえ言うからしてやっとんのに、いちゃもんつけるんか!?」
すーちゃん先生
「分かりました、分りましたわよ。話が逸れない程度なら、喋っても構いませんわよ」
くくちん助手
「お、ホンマか?」
すーちゃん先生
「ただ逸れたらその瞬間口を塞ぎますから、肝に銘じて下さいまし」
くくちん助手
「そ、そんなんどないせぇ言うんや!? だから武器を抜くなや! 怖いわ!」
Q.洗礼名について
すーちゃん先生
「さて、名前と家名については宜しいですわね。次は洗礼名についてお話致しましょう」
くくちん助手
「色々あんなぁ。名前だけで事足りんのに」
すーちゃん先生
「まあそれが身分制度という奴ですわ。そしてこの洗礼名と言うものも例外なく、身分制度と関係が深いものですわね。貴族で伯爵以上の爵位を持つ場合、名前と家名の間にもう一つ名前がありますわよね。エーベルハルト・ウィル・アインシュバルツ、のような。エーベルハルトは名前で、アインシュバルツは家名。そしてこのウィルと言うのが洗礼名です」
くくちん助手
「ふーん? 何か意味があんの?」
すーちゃん先生
「洗礼名とは、聖皇教会から授けられる、主神フォーヴァンから賜ったとされる名前です。つまり、この人間はフォーヴァンに愛されていますよ、という意味があるのですわ。この国の民は皆フォーヴァンを神と称えています。その神から直々に名前を賜る……この国にとってみれば大変栄誉な事ですわ。伯爵以上の者にしか無いという事を考えても、まあ意味は大きいと考えられます」
くくちん助手
「大きいんか? ウチにはよう分からん」
すーちゃん先生
「でしょうね……。ま、それで良いと思いますわ。所詮この国の風習ですからね。ただこの洗礼名と言うのは、身分制度にだけ関係している話ではありません。これは教会の人間にとっても重要な意味があるのです」
くくちん助手
「あー、頭つこたら腹が減ってきよったわ。何か食ってもいい?」
すーちゃん先生
「……好きになさい。ただ口に物を入れた状態で喋ろうものなら、即座にブッ殺して差し上げますから気をつけなさいな」
くくちん助手
「物騒すぎんか!? ウチなんかした!?」
すーちゃん先生
「何の役にも立たないからですわよ、全く……。なぜここに来たのか不思議でなりませんわっ。えーと、それでですね。教会の人間は基本的に、洗礼名のみを名乗ることを許されています。神に仕える者として、世俗との縁を切っているわけですわね。なので名乗られた場合、洗礼名だと思って間違いありません。神官や神殿騎士など、多くの方がそうして過ごしているようです。一部例外もありますが、まあ見上げた信仰心だ、とでも言いましょうか」
くくちん助手
「ふーん」
すーちゃん先生
「貴方絶対分かってませんわよね?」
くくちん助手
「全然分からん」
すーちゃん先生
「今の貴方の存在意義が、わたくしには分かりませんわ……」
Q.家督の相続時について
すーちゃん先生
「先ほど騎士や準男爵が爵位を貰った場合について話をしましたが、では元々爵位を持つ人間が家督を継いだ場合どうなるのか、について話をしましょうか」
くくちん助手
「家督って何や?」
すーちゃん先生
「流石にこれはスルーしますわよ? 男爵以上の貴族の場合は家を継ぐと当主となりますが、家名が変わるという事はありませんから、名づけで揉める事はありませんわ。ただ男爵および子爵に関しては、代替わりの際に上役――つまり寄親である伯爵に相続の内容を提出し、認めて貰う必要があるようですわね」
くくちん助手
「なあ、家督って何? あっ! 人族が育ててる動物の事やな!?」
すーちゃん先生
「それは家畜ですわ。伯爵以上の場合は国王に。ただ公爵の場合は事後連絡で問題ないそうです。公爵は随分優遇されていますわね。自治権も持っていますし、まるで一国の王のようですわ」
くくちん助手
「あ、じゃあアレか!? 果物とかの中身!」
すーちゃん先生
「それは果肉。まあ公爵家は基本、三百年前の英雄の血族ですから、優遇も頷けるのですが。ただどうも、それ以外の思惑もあるように思えてなりませんわよね」
くくちん助手
「んー? も、もしかして死にかけの――」
すーちゃん先生
「それは危篤! 公爵家が三百年の間一つを除き変わらず、かつ増えも減りもしないと言う事が、それを暗に肯定していますわね。はてさて一体どういう意味があるのでしょうね?」
くくちん助手
「じゃあアレや! 朝市とかで安売りしとる――」
すーちゃん先生
「それはお得だーッ! 死ねーッ!」
くくちん助手
「ウワーッ!? な、何や急に短剣振り回しよって! 危ないやないかっ!」
すーちゃん先生
「さっきから近くでぎゃあぎゃあやかましいっ! お前の羽毛を全部むしり取ってやるからそこになおれ! この手羽先女!」
くくちん助手
「て、手羽先女!? 酷すぎるわそんなん! この自慢の羽をむしるとか言うな! この――!」
くくちん助手
「……えーっと。そんなん、何やっけ。酷すぎる奴の事、なんて言うたっけ。えーっと、確か、き、き――?」
すーちゃん先生
「誰が鬼畜だこの鳥頭がーッ!」
くくちん助手
「うわ!? 止めろてホントにもうウチ何も悪くなギャーッ!?」
おしまい