すーちゃん先生の特別講座3
本作の舞台となる世界に関しての説明などです。
無駄に長いですが、興味のある方はどうぞ。
なお読まないと本編のほうで意味不明な内容が出てくるなど、
そういったことはありません。
また本編と説明が重複する部分がありますが、ご容赦ください。
すーちゃん先生
「すーちゃん先生の特別講座ー! その第三回目! 今回は無事に始まりましたわ! わーわーわーわー! パチパチパチー! さあ三回目となる今回、助手はなんとこの方ですわ!」
アゼルノ
「……スティア、私が助手で良いのか?」
すーちゃん先生
「ちょっとちょっと! ここではあーちゃん助手ですわ! 打合せ通りちゃんとして下さいまし!」
あーちゃん助手
「う、うむ。分かった……」
すーちゃん先生
「それとわたくしのことはすーちゃん先生と呼ぶこと! 良いですわね!?」
あーちゃん助手
「う、うむ。それも分かった……」
すーちゃん先生
「なら良しですわ! こほんっ! 助手はエイク様親衛隊ナンバー5! あーちゃん助手です! よろしくお願いしますわ!」
あーちゃん助手
「…………」
すーちゃん先生
「…………」
あーちゃん助手
「……よろしく、お願いする。す、すーちゃん先生」
すーちゃん先生
「よろしいっ! ではでは! 早速参りましょう! 第三回目となるこの講義。その最初の内容は、こちらですわっ!」
Q.精について
すーちゃん先生
「まず精とは? というところからですが。……あーちゃん助手、精とはなんでしょう?」
あーちゃん助手
「精とは、人間の生体エネルギーを行使可能な内的、もしくは外的エネルギーに変換したものだな」
すーちゃん先生
「説明が固いですわねぇ……。えーっとですね。つまり人間の生命力を、自分の体を強化するといった、肉体に作用する内向きのエネルギーに変えたり、敵を倒すために武器を強化したり衝撃波を放ったりする、外向きのエネルギーに変えたものですわね。この生命力を精に変える方法を、練精法と言います。ちなみに、わたくしは精のことをフォースと呼んでおりました。ただそれらは人族には一般的ではないようですので、ここでは精と呼ぶ事に致しますね」
あーちゃん助手
「練精法発祥の地は我々が今いる大陸ではないと聞く。恐らく伝わる間に呼称が変わったのだろうな。元々の呼称がどちらなのか。はたまたどちらも違うのか。今となっては確かめることができないが、精、フォースと呼称が違っても意味する内容が同じところを見れば、呼称以外は正しく伝わったと見て良いだろうな」
すーちゃん先生
「以前耳にしたことがありますが、話によれば海を越えた砂漠の地らしいですわよ? 恐らくここよりも厳しい環境だったはずですわ。人間の歴史は戦いの歴史。人間同士の、という場合もありますが、最も脅威だったのは当然魔物になるはずです。砂漠の地ということは、魔物との生存競争も激しかったでしょうから、それら脅威を打ち破る方法がその地で編み出されたというのは自然なことだったのでしょうね」
あーちゃん助手
「成程。大昔は魔物に対抗する手段が魔法しかなかった。この練精法を生み出した御仁はそんな状況を憂い、人間の未来を切り開くため決死の想いで編み出したのだろうな。頭が下がる思いだ」
すーちゃん先生
「その方の名前なんですが、こちらには伝わっていないんですのよねぇ。一体なぜなんでしょう。不思議ですわよね」
あーちゃん助手
「この大陸の人間達は外の大陸への航路を持っていないし、外界から人間が来たということもないらしいしな。一体どうやって伝わったのかも考えてみれば謎だな。ふぅむ……」
Q.内勁と外勁について
すーちゃん先生
「さてさてそんな不思議なエネルギー、精ですが。どう使うかによって及ぼす効果は様々です。その中でも、生命力を外向きのエネルギーに変換して繰り出す技のことを精技と呼びますの。精技は非常に強力な技が多く、広範囲に影響を及ぼす危険な技もあります。なので同士討ちを避けるため、放つ際には周囲への注意喚起として、技名を口にしなければならないという暗黙の了解もあるくらいですわ」
あーちゃん助手
「敵を倒そうと味方を巻き込んでは、甚大な被害を受ける危険性があるからな。当然の処置だろう」
すーちゃん先生
「そんな精技を繰り出すためにはまず、精を外向きのエネルギーに変換しなければなりません。ですがそれには順序と言うものがありますわ。生命力をまず内向きのエネルギーに変換してからでないと、外向きのエネルギーに変換できないのですわ。この、生命力を内向きのエネルギーに変換すること、およびそれで身体能力を向上させる能力のことを内勁と言い、内向きのエネルギーを外向きのエネルギーに変換すること、およびその外向きのエネルギーを精技に転用する能力のことを外勁と言います」
あーちゃん助手
「確かフォースでは内勁のことをインナーフォース、外勁のことをアウターフォースと呼んでいるのだったか」
すーちゃん先生
「そうですわ。そんなこと、よく覚えていますわねぇ。さて、先ほど精は生命力を変換したエネルギーだと説明しましたが、変換する際の効率と言うものが当然ありますわ。生命力を百消費して一の精に変換するか、それとも一の生命力を消費して一の精に変換するか。この変換効率は内勁や外勁の練度によって変わります。内勁が良く鍛えられている方はその変換もスムーズですし、消費する生命力が少ないので疲労も少ないのです。一方外勁を鍛えると、精技の精度が増し、威力の向上、発生までにかかる時間の短縮などに繋がる上、精技に転用する精の消費が少なくなりますの。先ほどの生命力と精の変換効率と同じ話ですわね」
あーちゃん助手
「これらが鍛えられているか否かで二流と三流が決まるな。生命力の消費が激しいかどうかは相対していればすぐに分かる。戦場で己の力量を悟らせるなどもっての外だ。見切られてしまえば最後、死を免れる手段は無い」
すーちゃん先生
「外勁と内勁は外向き、内向きという区別はありますが、いずれも疎かにできない重要な技能なのです。どちらも戦士としては必須の技能と言っても宜しいでしょうね」
あーちゃん助手
「だが精技として放つことのできる見栄えの良い外勁に比べ、内勁は効果が分かりにくいからなのだろうが、疎かにしている人間の何と多い事か。嘆かわしい限りだ。内勁は外勁以上に重要だと、私は常々思っているのだがな」
すーちゃん先生
「いかに強力な精技を放つことができたとしても、その前にやられてしまえば何にもならないわけですしね。まあ内勁も外勁もどちらも疎かにして良い理由はありませんわ。どちらもバランスよく鍛えることが一流への近道なのですわね」
あーちゃん助手
「ああ、全く以てその通りだ。私も未だ一流の更に先にある高みをこの目にできん。しかし弛まぬ研鑽を続ければ、その高みには必ず近づくはずなのだ。ただそれを信じ、研鑽を積むのみだ」
すーちゃん先生
「相変わらずですわねぇ」
Q.精技について
すーちゃん先生
「精技ですが、武器に応じた様々なものがありますわ。大別して剣技、槍技、弓技、斧技、体技、小剣技の六種類となりますわね。防具に関しては盾技のみです」
あーちゃん助手
「刀技が抜けているぞ」
すーちゃん先生
「刀技は剣技から派生した龍人族独自のものでしょう? なので剣技に含まれますわ」
あーちゃん助手
「むぅ……。納得がいかん」
すーちゃん先生
「剣技には基本となる剣技のほか、大剣技と刀技がありますわ。他に、斧技は斧技と棍技に、槍技は槍技と斧槍技に、小剣技は小剣技と双剣技に分かれますわね。ただ、技に則った武器で精技を使わなければならないか、と言えばそんなことはありません。適しているかどうかが問題になるだけですわね。だからやろうと思えば、棍棒で剣技を使って鋼を両断するなんてこともできます。まあそれは無駄以外の何物でもありませんけれど」
あーちゃん助手
「いや、やはり刀は剣では無い。扱い方も全く違うし、何より刀には振るう者の魂が込められているのだ……! 言わば担い手の半身とも言えよう!」
すーちゃん先生
「まだ言っているんですの? あーちゃん助手の言いたいことは分かりますけれど、今はそういう時間ではないので後にして下さいません?」
あーちゃん助手
「くぅっ…………………………………………分かった」
すーちゃん先生
「どれだけ納得がいってないんですの……進めますわよ? えーっと、なので先ほど種別で分かれるとは説明しましたけれど、これは精技として明確に細分化されているものではありません。あくまでも精技を習得する上での判断基準であり、使いたいと思うなら別に斧で剣技を使ってもなんら問題ないわけですわ。ちなみに上記に含まれない武器、例えば暗器などと言ったものは、扱う武器に応じて任意の適切と思われる精技を習得することになりますわね」
あーちゃん助手
「………………精技で明確に区別されているのは、習得難度によるクラスだな」
すーちゃん先生
「そう、精技には下級精技、中級精技、上級精技の三種類のクラスがありますわ。名前の示す通り、中級精技の精技を習得し、実践で使用することができるようになれば、相当の腕前と言って宜しいでしょうね」
あーちゃん助手
「中級精技習得には内勁と外勁を相当に鍛え上げなければならない。習得できただけでもなかなかだろうな。まあ、鍛錬時に使えるのと実戦時に使えるのとでは大分違うがな。そういえば私にも苦い思い出がある。あれはいつだったか――」
すーちゃん先生
「あーちゃん助手の失敗談ですか。なんだか面白そうな話が始まりましたわね。ちょうど話の区切りも良いところですし、今日はここまでにしましょうか」
あーちゃん助手
「誰に聞いたかはもう忘れたが、とある洞穴に手ごろな魔物が住み着いたと聞いてな。中級精技を実戦に使用でき得るほど研鑽を積んだと考えていた私は、たったの一人でその話に聞いた洞穴へと向かったのだ。当時若かった私は兄達への対抗心もあって――」
すーちゃん先生
「それでは皆さん、ここまでお付き合いいただきまして感謝いたします。次の特別講座も是非よろしくお願いいたしますわ。それでは、また次回をお楽しみに。さようなら~」
あーちゃん助手
「しかしだ! その洞穴にはその上位種が住み着いていてな? そいつを屠った俺を獲物と見据えたのだろう、暗闇の中から牙を剥いて襲い掛かってきたのだ。すでに中級精技を使った後だった俺は疲労感も甚だしく――!」
おしまい




